天下の愚作ー定額給付金ーをめぐる、選挙のための政治。
2009年1月14日(水)付 朝日新聞社説より。
定額給付金—民意が首相に届かない
この週末、いくつもの報道機関が行った世論調査の結果は衝撃的だった。
麻生内閣の支持率は、朝日新聞、産経新聞、共同通信の調査で軒並み2割を割り込んだ。逆に、不支持率は読売新聞、NHK、産経、共同の調査でそろって7割を超えた。67%の朝日を含め、国民の3分の2を上回る人々が首相にNOを突きつけたかたちだ。
深刻なのは、首相の大看板である経済政策に対する厳しい見方だ。
朝日の調査では、首相の景気対策に「期待しない」という人が70%に達した。読売の調査でも64%が政府の対策を「評価しない」と答えた。
焦点の定額給付金では、朝日調査で71%が「景気対策として有効ではない」、63%が「支給をやめた方がよい」と答えた。読売調査でも「支給をやめて雇用や社会保障などに使うべきだ」という意見に賛成する人は78%にも達した。
不景気が雇用や消費などに深刻な影響を広げるなかで、政府の評判が悪くなるのは仕方ない面はあろう。だが、そのために2兆円もの巨費を投入し、国民ひとりひとりに現金を配るというアイデアがこれほど不評なのは、政策の是非の問題を超えて、この政権そのものへの不信の表明と見るべきだ。
そんななか政府与党は衆院で、第2次補正予算案と関連法案を野党の反対を押し切って可決した。
民主党が反発するのは当然だ。小沢代表が「定額給付金を分離して採決すれば、その他のことには前向きに取り組む」と発言し、定額給付金をはずせば補正予算の成立に協力するとのボールを首相に投げていたからだ。
首相が歩み寄れば、雇用対策や中小企業の資金繰り対策などは迅速に実行できるようになったはずだ。それでは敗北に等しいというのが首相の思いなのだろうが、世の中の厳しい空気を読み違っているのではないか。
自民党内にも首相への批判がないわけではない。渡辺喜美元行革相がきのう離党に踏み切り、加藤紘一元幹事長は「定額給付金はあまり出来がよくない制度というのが7、8割の自民党議員の心だが、総選挙で公明党にお世話になるから賛成する」と述べている。
加藤氏の言葉が事実なら、自民党は公明党・創価学会の支援欲しさに「出来のよくない」政策に甘んじるということなのか。何とも情けない政党になってしまったものではないか。
このまま与野党がにらみ合っていては「60日ルール」での衆院再議決に頼る政治がまた繰り返されることになる。福田前政権のときの、インド洋での自衛隊の給油支援やガソリン税をめぐる混迷の再現である。
国民の暮らしがますます厳しくなるなかで、そんな愚かな政治を続ける余裕がいまの日本にあるはずがない。
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この加藤氏の発言は、1月11日に庄内版に掲載された「自民議員の大半が乗り気欠くと発言」という見出しの記事で、同様の発言を10日鶴岡市内であった後援会でおこなったことが記載されていた。その記事の中では「関連法案の衆院通過後、与党内で所得制限を設けるなどの見直しを含めて話し合うべきだとの考えを示した」とあった。
「おかしい」と思いながらも、違う行動をする。こうやって、政治が市民からどんどん離れていくのだと僕は思う。「そんなもんだ」という人がいるかもしれないが、そこが肝心要、そここそが、問題なのだ。
いいかげんにしてもらいたい。しまいには、科学的に証明された真実まで権力でねじ曲げるようになるのだろう。
希望をつくるはずの政治ではなく、「選挙のための政治」がまかりとおっている。それを象徴するような言動だと思う。
既得権益の内向き政治 こんな政治はやっぱり変えなくてはならない。