穴あきダムー最上小国川の検証の欺瞞
最上小国川のダムについての県公共事業評価監視委員会の意見がまとまったようだ。
「穴あきダムが最適で異論はない」とのこと。
毎日webよりピックアップ。
毎日新聞山形版 2011年1月21日
最上小国川ダム:「穴あき案が最適」県監視委意見 県、報告書提出へ /山形
国の検証対象となっている最上小国川ダム(最上町)について、県公共事業評価監視委員会(大川健嗣委員長)は「穴あきダムが最適で異論はない」との意見をまとめた。これを受けて県は近く国土交通省に「穴あきダム案」を盛り込んだ報告書を提出する見通し。
現地調査や聞き取り調査などを実施し、コスト、安全性、環境影響などから総合的に判断した。委員からは「環境面からも一番影響が少ない」「一度に大量の雨が降る場所で安心・安全の面からも良い」「赤倉温泉のお湯にも一番影響が少ない」など、ダム案賛成の意見が相次いだ。
県河川課は、国が示した方策の中から(1)穴あきダムと河道改修の組み合わせ(現行案)(2)遊水地と河道改修(3)放水路と河道改修(4)河道改修のみ−−の4案を検討。コスト、安全性、実現性、持続性など7項目の評価軸から、昨年11月に「穴あきダム案が最も有利な治水対策」とする素案を作成した。さらに最上町と舟形町の住民説明会などで意見聴取し、素案へのパブリックコメントも県民に募った。【浅妻博之】
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改めて県公共事業評価監視委員会のメンバー構成を見てみる。
この中に河川工学者がいるか、、、いない。それもダムに依らない治水を唱える能力のある方がいるかーーいない。
これは、これまでこの最上小国川の流域委員会、小委員会、そして最近の検証委員会、又、国の検討委員会を含め、構成メンバーに「ダムに依らない治水」を理論的に組み立て、国土交通省の官僚に反論し、主張できる能力のある人がいないのだ。
結局、何の評価にも検証にも、監視にもなっていないのが実情ではないのか。
先日提出したパブリックコメントにも書いているが、河川の治水プランについての検証であれば、とにかく河川工学者が議論のイニシアティブをとる。その河川工学者が、ダム推進の人しかメンバーの構成にはいっていなければ、自ずと結論はダムになってしまう。これはあたり前の事だ。
こうした事は県や行政がおこなう審議会、委員会などでこれまで慣例としてずっと長年続いてきた事だ。
ダムに依らない治水論を堂々と主張できる河川工学者といえば、私が知る限り、京都大学名誉教授の今本博健先生、新潟大学 大熊孝先生 元国土交通省 宮本博 さん、嶋津輝之先生 この4人しかいない。
だから全国 こうした検証がおこなわれていてもこの4人がはいっていない会議はほぼ全滅といっていいだろう。
僕らは、昨年国の検証委員会がはじまるときに、この4人がはいっていない検証委員会であれば、意味がない。必ずいれるべきと主張し要求をしていた。そして会議はすべからく公開して傍聴者もいれてほしいと要求した。しかし、政権交代後の前原大臣らはこれを拒んだ。そして1年の検証、県レベルでの再検証がおこなわれているが、案の定、僕らが予測したとおり、検証したけれどもダム論が有力のようなかたちに終わろうとしている。 結局、現場にある真実がテーブルの上にのらず、真実が議論されていないままなのだ。
行政・官僚お手盛りの審議会、流域委員会、根拠もない「日本一環境にやさしい穴あきダム」論で住民をごまかし民意をでっちあげる姿勢、おまけに「民意」を封じ込めて強制終了する「説明会」「公聴会」など、2003年から関わり続けてきた最上小国川のダム関連だけでも、県の土木関係官僚たちのおかしな姿勢 を相当目にしてきた。
このまんま真実がテーブルの上にのらないまま、また、かけがえのない山形の清流が破壊されると思うと僕は我慢できない。熊本の川辺川だって途中から穴あきダムになったのに知事は白紙撤回をした。「穴あきダムだったら鮎に影響しない。環境にやさしい」などといっているのは、まさに山形県だけなのだ。
「温泉に影響するから川底をいじれない」も、実際に調査に関わった先生からは「温泉のメカニズムを解明した上で、温泉に影響なく土砂を取り除くことは十分可能」とのこと。「山形県はよほど技術がとぼしいのか。」と思うのだ。
この一本の川を守れるかどうかは、山形県政が、20世紀型の、大型公共事業で地域経済を活性化すると続いてきた利権官僚政治の発想のままか、それとも、地域資源を十分に守り活かして地域密着型の公共投資、公共事業でたしかな仕事をつくり、次世代に環境破壊や大借金などのツケをまわさない政治にするかの大きな山場といえる。
脱ダムして、環境・福祉・経済がバランスする、持続可能な地域づくりへ投資しようよ! そろそろ。