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地域再生のための本気の観光に、ダムは阻害要件になる。地域再生のための治水へ転換を


10月5,6日、ダムと観光振興!?川と温泉の振興策を考える全国集会をおこなった。
70人の地元全国からの参加者の下、スイス在住の観光カリスマで、観光学で北海道大学、和歌山大学で客員教授、准教授をされている山田桂一郎氏、河川工学者 大熊孝 新潟名誉教授、竹門康弘 京都大学防災研教授、釣り人社社長 鈴木康友氏、辰巳ダム訴訟の原告、中 登志紀氏を招聘して講演、パネルディスカッション、現地視察、そして小国川の特産の松原アユを食べながらの意見交換会と、濃密な集会となった。

冒頭の山田さんの話。最上町の人口は5,60年後にはゼロになるかもしれないという推計データの発表に会場全体が釘付けになった。実際にこのH12からH22の過去10年で1632人の人口減少がおき、20億3000円ほどの消費が失われている。ということ。今、同様の問題を抱えているところは多いが、観光の戦略を組むなら、どうしたらこのまさに存亡の危機に立たされた状況を打開できるような戦略と地域経営をおこなうかが鍵だということ。それも、本気で、ここを訪れる人、ここに住む人が慕う地域の宝とはなんなのか、何が本当の地域資源なのかを地域全体でとらえ、それをとことん活かす地域経営にしないと、そこに行く必然性も、住みたくなる必然性も何も生まれないということを共有した。持続可能で自立できる地域を如何につくるか。本気度が試されている。

河川工学の大熊孝先生は、小国川を改めて見て、堤防のない川で素晴らしい川、そしてこうした川は治水が易しい川。赤倉温泉を守る他の治水の方策を考えればダムはいらない。と冒頭に提示し、これまで深く河川行政にかかわられた経験から技術の自治、そして新河川法を踏まえた新たな川の定義として「人の体とこころを育む」を加えた川の定義を示して下さった。小国川で川の学校ができないのかという提案もいただいた。更に、2004年の、ダムが上流に2つもある五十嵐川で堤防決壊、死者を伴った新潟水害を教訓にゲリラ豪雨が多発する近年の治水方策としては、想定した水量に限定的にしか効かないダムよりもむしろ、家屋移転や堤防強化などを伴う流域治水が有効であること。小国川の治水対策には、まず、赤倉温泉街に手をいれることだ。ということが示された。

河川生態学の竹門康弘先生は、穴あきダム、流水型ダムの研究者であり、国内の益田川ダムの環境影響を実際に調査されている先生だ。今年3月に北海道札幌であった「淡水魚保護フォーラム」で講演を聴き、意見交換させていただき、いつか招聘したいと考えていたが、念願叶っての講演であった。先生は1日前にいらして東北大の院生とともに小国川全体を視察、一部は川に入って調査された。講演前日にお会いした際、「ヤマメの産卵場があって産卵シーンが撮れましたよ。とうかがっていた。講演当日には、その朝に再調査した際につかまえたスナヤツメをもって来られた。そして「ヤマメの産卵シーン」の映像を映して見せた。会場は感動につつまれていた。先生は、ダムと環境影響について、貯水ダムのケースとともに穴あきダムのケースを理路整然とお話され、結論として以下のかたちで結んで下さった。

流水型ダムの環境影響結論
1河床攪乱規模の低下により瀬ー淵構造の形態が変化する可能性がある。→淵が砂利や砂で埋まり浅くなるなどが考えられ、ヤマメの生息場の減少が考え得る
2湛水域上部に大粒径の石礫が滞留する結果、下流の大礫の供給が減る可能性がある。ー直下流で河床の粒径分布が変化すると考えられる。
3湛水域下部に細粒分や栄養塩が滞留する結果、平水時の濁度が若干増加する可能性や藻類が増える可能性がある→ 直下流では清透な流水景観が損なわれる恐れがある。
講演要旨には、
流水型ダムによる河川環境変化についての先例から、小国川においても河床攪乱規模の低下や若干の水質変化を通じて、あゆの好適な生息場の劣化や清透や流水景観の喪失に結びつく可能性は否定できない。このため、洪水攪乱の役割について治水計画と一体的に再検討する必要がある。その上で、長期的な観点から経済損失を検討し、事業計画のB/Cの計算に組み入れることが必要である。
と明記していただいた。要するに 流水型ダムであっても環境影響がないとはいえない。むしろある。ということであり、それが科学的に言及された。

パネルディスカッションの中では、「釣りと観光」そして小国川という川がどんな価値をもつ川なのか、釣り人社 鈴木社長が冒頭でまず力説した。最上小国川に漁業権をもつ小国川漁協は、かつて日本中に琵琶湖のアユが放流された時代に、東北で唯一、その放流を拒絶し、現在に至るまで、「松原アユ」と呼ばれるブランドを守っている。東北で行われるほどんどの釣りのトーナメントは小国川で行われる。小国川は東北を代表するアユ河川。ダムがつくられればその印象だけで釣り人は来なくなるということ。
赤倉温泉地域でいえば、今、中心部の阿部旅館が倒産し、夜歩くと真っ暗の状態。老舗旅館の三之条旅館をはじめ老朽化した旅館が建ち並び、中には建物の部屋の一部が川に迫り出した違法建築と誰もが指摘できるような建物さえある。

実際に次をどうするかだ。全体を通じて、この流域地域を考えたら、会場を驚嘆させた清流環境の素晴らしさを活かすしか生き残る方法はないのではないか。ダムをつくって、どこにでもあるような川になってしまえば、温泉街の衰退は止まらない。上流にダムをつくるだけで、直下流の赤倉温泉に手をかけない事業よりも、治水対策として河道改修を通じて温泉街の再生事業に切り替えれば両得ではないか。
更にアユ、ヤマメ、サクラマスや今3万人訪れる釣り人へのフォローやその交流を大事にする方策を諸々考え出すことが大事だ。
 
こうした発言を踏まえて私たちは、大会宣言を以下、まとめて10月8日に発表した。

2013年10月5日6日
ダムと観光振興!? 川と温泉の振興策を考える全国集会 大会宣言

 2013年10月5日から6日、「ダムと観光振興!? 川と温泉の振興を考える全国集会」が、70余名の参加の下に山形県最上町赤倉温泉で開催された。
講演とシンポジウム、現地視察、小国川全域ウォーク(9/21、10/5)を通じて、私達は改めて最上小国川の豊かな河川生態系を体感した。特に、ダム建設予定地直下流部でのヤマメの産卵光景や、スナヤツメの生息に参加者の多くが感動した。
 集会を通じ、穴あき(流水型)ダムでも河川環境への影響がありうるし、小国川ダムのように小さな穴の場合、少なからぬ悪影響が懸念されるこ