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火力発電所の石炭灰 フライアッシュ、クリンカアッシュを使った土地造成、ちょっと待った!


市民の方から、ある地域の土地開発、造成の情報提供があって、この1ヶ月ほど、火力発電所からでる石炭灰からつくられるクリンカアッシュ、フライアッシュでの土地造成の事を調べていました。そして、ある事業者に対して、質問し回答を頂く中で、これまで私がスウェーデンなどで学んできた「サステナビリティの原則」「予防原則」に立ち、以下の提言を差し上げました。

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●●●様

メールで大変失礼をいたします。

先般は、ご回答を頂き感謝申しあげます。空間放射線量について県環境課が調査した結果のご報告でありました。先般の私の指摘がこの放射線量問題の記事であったことから、放射線についての調査をされ、その結果を論拠に「クリンカアッシュを使用した造成工事を行うことに問題はない」とご判断されたようでありますが、私も諸々調査をしていく内に、更なる石炭灰の問題を諸々把握するに至りました。

 詳細案件については諸々ありますが、大筋の結論として、石炭灰には様々な重金属が含まれていること。そして処理した石炭灰リサイクル再生採石は、将来的に完全に無害といえるのか。つまり今後将来にわたり地下水や土壌汚染の懸念材料としての重金属の溶出が将来的に全くないと断言できるのか。甚だ疑問と言わざるを得ません。環境基準は問題が発生、発覚する度に人間の都合で変わるものでもあるからです。
 私は、市議、県議としてスウェーデンのサスティナブル社会を環境NGOナチュラルステップやスウェーデンエコ自治体議員等のネットワークで学んできました。そのサステナビリティの原則は、1.地殻から掘り出した物質の濃度が増え続けない(拡散させない)、2.人間が作り出す物質の濃度が増え続けない、3.自然が物理的に劣化しない という3つの環境におけるシステム条件と1つの人間の基本的なニーズを妨げないという社会条件。そして予防原則であります。

 こうしたサスティナビリティの観点から申せば、この地域の開発には将来的に様々な懸念要素が思料される石炭灰リサイクル再生採石による造成はおこなうべきではないと考えます。代替できるものが全くなければ別ですが、わざわざ懸念材料になる可能性のあるものは、お避けになったほうがよろしいのではないかと思います。開発される皆様のご判断として、ぜひ未来志向の予防原則を踏まえた「持続可能な開発」の判断基準をお持ち下さることを切に願うものであります。

 以上 ご提言申しあげます。私が懸念しているフライアッシュ、クリンカアッシュの土壌汚染の問題について、反論等ございましたらぜひともお伺いできれば幸いです。今後ともどうぞよろしくお願い申しあげます。

 

2016/02/18  草島進一

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この間、土壌汚染や地下水汚染の問題にお詳しい、元大阪市立大学教授 元日本環境学会会長 畑明郎先生から情報提供と貴重なアドバイスを頂きました。石炭灰やスラグというそもそも産廃処分しなければならない物質のリサイクル材を生成し、それを開発の際の土地造成への活用が進められているようですが、実態は問題が相当あるようです。読者の皆様と共有したいと存じます。

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以下、畑明郎先生より。

クリンカアッシュ(石炭灰)フライアッシュについて

石炭灰の主灰だと思い、「鉛やフッ素が含まれ、アルカリ水が出る可能性がある」と回答しています。フライアッシュ(飛灰)なら添付の拙著にあるように、ヒ素、アンチモン、鉛、亜鉛、銅などの重金属が含まれており、主灰よりも危険であり、セメントと混ぜれば、より強いアルカリ水が出ます。

 したがって、宅地造成には使わない方が良いと思います。

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添付の2016.1.22毎日新聞にコメントしているように、アルカリ水溶出は、植物や人の皮膚に悪影響があります。鉄鋼スラグの場合も、フッ素や六価クロムが検出され、石炭灰(主灰)もフッ素や鉛が検出されています。また、2016.2.23京都新聞にあるように、スラグと同様に地盤が軟弱になる場合もあります。

20160122毎日新聞:我々の土地実験台か、地盤不安定化の恐れ

 

20160122毎日新聞:スラグ24万トン無断埋設

20150930毎日新聞:行政は環境守る気概を、鉄鋼スラグ有害物質問題
20150912毎日新聞:有害スラグ問題で強制捜査 
20150930毎日新聞:行政は環境守る気概を、鉄鋼スラグ有害物質問題

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また、以下の事も大変興味深いです畑明郎著『土壌・地下水汚染』 IMG_20160216_0014 IMG_20160216_0013

この中で畑先生は、石炭灰の中の重金属の問題について述べておられます。水銀などの放出については特に問題です。画像をクリックすると拡大しますのでどうぞじっくりとご覧下さい。

 

もう一つ、大変貴重な資料として、以下があります。

こうした石炭灰などをリサイクルしてつくる材について、そこに含まれている重金属の量や、特に溶出量といって、そのリサイクル品をさまざまな溶液につけたりして、含まれている重金属が溶け出すかどうかをみる溶出試験というのがあるそうですが、畑先生いわく

「日本の溶出試験は、外国と比べて次の問題があります。

 中性の水で土壌を6時間振とう(シェイク)するだけであり、酸性雨などによる酸性水よりも低くなります。

 実際の野外環境に長期間置かれた場合は、重金属が多く溶出してくるので、溶出試験をクリアしても安全と言えません。」

とのこと。とすれば、予防原則にたって、回避することが賢明ということになります。

アルカリ水の溶出が懸念されるということであれば、子ども達が土に触れるようなグラウンド造成とか、農地の近くの利活用はまずは避けるべきと考えます。いくら水はけがいいとしても。

また、以下、アースポリシー研究所のレスターブラウン博士が指摘しているように火力発電所由来の石炭灰の問題は、世界で深刻さを増しているようです。石炭火力発電は地球温暖化の問題と枯渇性資源への依存、重金属などの汚染物質の拡散という問題をはらんでおり、それ故、脱原発とともに脱化石して、再生可能エネルギーへシフトすることが求められる社会になっているということだと思います。

http://www.es-inc.jp/library/mailnews/2010/libnews_id002465.html

 

溶出試験海外比較

 

出典 土壌、地下水汚染 畑明郎

   拡大する土壌・地下水汚染 畑明朗

 

皆様のご意見お待ちしております。草島進一