クロマツシンポジウムー酒田の風車開発への提言
クロマツシンポジウム。ISEP飯田哲也さんの他、森林生態学、鳥類、低周波問題などの専門の先生方のパネルディスカッション。飯田さんは世界の再生可能エネルギーのトレンドを紹介。脱原発、脱化石で自然エネルギー100%にどんどん向かう世界。大規模集中型から小規模分散型へ、日本国内で進む「ご当地エネルギー」まで。そして、注目は海岸線の内外300mのゾーンは風力発電をはじめコンクリート構造物など一切を認めないデンマークの実例。ゾーニング(土地利用規制)が明確化され、もちろん環境アセスもしっかりとおこなわれ、さらに地域の方々が15%以上の出資をしないと建てる事ができないなど、再生可能エネルギー開発の際の地域の自立、自治が配慮されていること等を含め、持続可能な開発の先進例を示した。
鳥類の研究者高橋さんは、風車開発計画予定地周辺は250種類の鳥類が居る国指定の鳥獣保護区でありオオタカの営巣地、コアジサシ 集団コロニー 国内の北限エリアが計画地にあり開発の影響が大きいことを示した。
森林生態学が専門の山大の菊池先生は砂草地の丘陵の重要性を指摘。汀線近くの地表攪乱は海風環境を変化させ、海岸林帯を分断する恐れがあると指摘した。ただでさえ、クロマツ林は今、松枯れ病による衰退がみられる中で開発によるダメージは避けるべきとの見解。
フロアから民俗学の森繁哉先生は、出羽三山の参道に風車を建てる姿を想像してみてください。海岸線こそ 海と里の文化の見えない境界。これを守っていくことがいかに重要な事なのか。と問いかけ又、ガタリの生態 精神、社会の3つのエコロジーを紹介しながら、庄内地域の人々の生活に根付いたエネルギーのあり方として地域をデザインしてほしいと計画の再考を促した。
会にはこの地域への風車建設の環境アセスをおこなっている県企業局と酒田市が参加していた。全体で100人近い参加者。再生可能エネルギーの世界の最新トレンドとともに、今風力発電の開発で失われかねない貴重なクロマツ林や砂草地など自然資本の課題。更に持続可能な開発のために必要な議論のプロセス、民主主義を学んだ一日。最後のクロマツの歌も良かった。「庄内の誇り 大地の宝物 大いなる遺産を 語り継ごう」
県議会在籍中、ほぼ同一ゾーンに計六基の風車建設で国が定める環境アセス(法アセス)が必要な開発のところに、県3本、市3本と事業者が違うから簡易アセスで良しとしていた事に、当時の環境省の自然保護担当者が問題視していた事を踏まえ「行政が変な悪先例をつくったといわれないように」と討論したこの開発。小国川ダム問題と同様、人口減少するこの時代により大切にしなければならない地域ならではの価値としての自然資本を失うことのないようにしなければならないと考える。再考し「持続可能な開発」のモデルとしての庄内地域のエネルギー開発をデザインすることが求められていると思う。