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共謀罪法案強行採決を許さない。真実を確かめ、廃案へ。 刑事法研究者の声明より。


 

共謀罪法案が先週19日に衆議院法務委員会で強行採決されました。共謀罪法案について与党は完全に真実を歪め、更に説明責任を全く果たさないまま、強行採決しました。「30時間超えました。もういいでしょう。これ以上の質疑は必要ない」などと議論を封じた丸山穂高 大阪維新の会議員をはじめ与党議員はとても内容を理解しているとはいいがたい。その道のプロである刑事法研究者の以下を踏まえてきちんと勉強してからにしてもらいたい。というのが真相です。

「テロ等準備罪」という名称自体が全くのウソ。30時間の答弁はぐらかしばかりの議論にもならない議論で説明できる議論ではありません。私たちは共謀罪法案の内容の真実を伝えることが重要だと思います。刑法学者の高山教授らが呼びかける刑事法研究者の声明が2月に提出され、現時点で162名の刑事法研究者の賛同者がおられます。以下、引用します。HP上にはPDFファイルもあります。

どうぞ共謀罪の真実を確かめ私たちの常識にし、そして、強行採決を阻止しましょう。

共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明 5つの真実。

1. テロ対策立法はすでに完結しています。

2. 国連国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結に、このような立法は不要です。

3. 極めて広い範囲にわたって捜査権限が濫用されるおそれがあります。

4. 日本は組織犯罪も含めた犯罪情勢を改善してきており、治安の悪い国のまねをする必要はありません

5. 武力行使をせずに、交渉によって平和的に物事を解決していく姿勢を示すことが、有効なテロ対策です。

 

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 共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明

2017年2月1日



  政府は、これまでに何度も廃案となっている共謀罪を、「テロ等準備罪」の呼び名のもとに新設する法案を国会に提出する予定であると報道されています。しかし、この立法は以下に述べるように、犯罪対策にとって不要であるばかりでなく、市民生活の重大な制約をもたらします。

1. テロ対策立法はすでに完結しています。

  テロ対策の国際的枠組みとして、「爆弾テロ防止条約」や「テロ資金供与防止条約」を始めとする5つの国連条約、および、その他8つの国際条約が採択されています。日本は2001年9月11日の同時多発テロ後に採択された条約への対応も含め、早期に国内立法を行って、これらをすべて締結しています。


2. 国連国際組織犯罪防止条約の締結に、このような立法は不要です。

  2000年に採択された国連国際組織犯罪防止条約は、国際的な組織犯罪への対策を目的とし、組織的な犯罪集団に参加する「参加罪」か、4年以上の自由刑を法定刑に含む犯罪の「共謀罪」のいずれかの処罰を締約国に義務づけているとされます。しかし、条約は、形式的にこの法定刑に該当するすべての罪の共謀罪の処罰を求めるものではありません。本条約についての国連の「立法ガイド」第51項は、もともと共謀罪や参加罪の概念を持っていなかった国が、それらを導入せずに、組織犯罪集団に対して有効な措置を講ずることも条約上認められるとしています。
  政府は、同条約の締約国の中で、形式的な基準をそのまま適用する共謀罪立法を行った国として、ノルウェーとブルガリアを挙げています。しかし、これらの国は従来、予備行為の処罰を大幅に制限していたり、捜査・訴追権限の濫用を防止する各種の制度を充実させたりするなど、その立法の背景は日本とは相当に異なっています。ほとんどすべての締約国はこのような立法を行わず、条約の目的に沿った形で、自国の法制度に適合する法改正をしています。国内法で共謀罪を処罰してきた米国でさえ、共謀罪の処罰範囲を制限する留保を付した上で条約に参加しているのです。このような留保は、国会で留保なしに条約を承認した後でも可能です。
  日本の法制度は、もともと「予備罪」や「準備罪」を極めて広く処罰してきた点に、他国とは異なる特徴があります。上記のテロ対策で一連の立法が実現したほか、従来から、刑法上の殺人予備罪・放火予備罪・内乱予備陰謀罪・凶器準備集合罪などのほか、爆発物取締罰則や破壊活動防止法などの特別法による予備罪・陰謀罪・教唆罪・せん動罪の処罰が広く法定されており、それらの数は70以上にも及びます。
  一方、今般検討されている法案で「共謀罪」が新設される予定の犯罪の中には、大麻栽培罪など、テロとは関係のない内容のものが多数あります。そもそも、本条約はテロ対策のために採択されたものではなく、「共謀罪」の基準もテロとは全く関連づけられていません。本条約は、国境を越える経済犯罪への対処を主眼とし、「組織的な犯罪集団」の定義においても「直接又は間接に金銭的利益その他の物質的利益を得る」目的を要件としています。

3. 極めて広い範囲にわたって捜査権限が濫用されるおそれがあります。

  政府は、現在検討している法案で、(1)適用対象の「組織的犯罪集団」を4年以上の自由刑にあたる罪の実行を目的とする団体とするとともに、共謀罪の処罰に(2)具体的・現実的な「合意」と(3)「準備行為」の実行を要件とすることで、範囲を限定すると主張しています。しかし、(1)「目的」を客観的に認定しようとすれば、結局、集団で対象犯罪を行おうとしているか、また、これまで行ってきたかというところから導かざるをえなくなり、さしたる限定の意味がなく、(2)概括的・黙示的・順次的な「合意」が排除されておらず、(3)「準備行為」の範囲も無限定です。
  また、「共謀罪」の新設は、共謀の疑いを理由とする早期からの捜査を可能にします。およそ犯罪とは考えられない行為までが捜査の対象とされ、人が集まって話しているだけで容疑者とされてしまうかもしれません。大分県警別府署違法盗撮事件のような、警察による捜査権限の行使の現状を見ると、共謀罪の新設による捜査権限の前倒しは、捜査の公正性に対するさらに強い懸念を生みます。これまで基本的に許されないと解されてきた、犯罪の実行に着手する前の逮捕・勾留、捜索・差押えなどの強制捜査が可能になるためです。とりわけ、通信傍受(盗聴)の対象犯罪が大幅に拡大された現在、共謀罪が新設されれば、両者が相まって、電子メールも含めた市民の日常的な通信がたやすく傍受されかねません。将来的に、共謀罪の摘発の必要性を名目とする会話盗聴や身分秘匿捜査官の投入といった、歯止めのない捜査権限の拡大につながるおそれもあります。実行前の準備行為を犯罪化することには、捜査法の観点からも極めて慎重でなければなりません。

4. 日本は組織犯罪も含めた犯罪情勢を改善してきており、治安の悪い国のまねをする必要はありません。

  公式統計によれば、組織犯罪を含む日本の過去15年間の犯罪情勢は大きく改善されています。日本は依然として世界で最も治安の良い国の1つであり、膨大な数の共謀罪を創設しなければならないような状況にはありません。今後犯罪情勢が変化するかもしれませんが、具体的な事実をふまえなければ、どのような対応が有効かつ適切なのかも吟味できないはずです。具体的な必要性もないのに、条約締結を口実として非常に多くの犯罪類型を一気に増やすべきではありません。
  そればかりでなく、広範囲にわたる「共謀罪」の新設は、内心や思想ではなく行為を処罰するとする行為主義、現実的結果を発生させた既遂の処罰が原則であって既遂に至らない未遂・予備の処罰は例外であること、処罰が真に必要な場合に市民の自由を過度に脅かさない範囲でのみ処罰が許されることなどの、日本の刑事司法と刑法理論の伝統を破壊してしまうものです。

5. 武力行使をせずに、交渉によって平和的に物事を解決していく姿勢を示すことが、有効なテロ対策です。

  イスラム国などの過激派組織は、米国と共に武力を行使する国を敵とみなします。すでに、バングラデシュでは日本人農業家暗殺事件と、日本人をも被害者とする飲食店のテロ事件がありました。シリアではジャーナリストの拘束がありました。安保法制を廃止し、武力行使をしない国であると内外に示すことこそが、安全につながる方策です。

  こうした多くの問題にかんがみ、私たちは、「テロ等準備罪」処罰を名目とする今般の法案の提出に反対します。

 

http://www.kt.rim.or.jp/~k-taka/kyobozai.html

 


呼びかけ人(五十音順)

葛野尋之(一橋大学教授)
高山佳奈子(京都大学教授)
田淵浩二(九州大学教授)
本庄武(一橋大学教授)
松宮孝明(立命館大学教授)
三島聡(大阪市立大学教授)
水谷規男(大阪大学教授)


賛同者

赤池一将(龍谷大学教授)
浅田和茂(立命館大学教授)
足立昌勝(関東学院大学名誉教授)
安達光治(立命館大学教授)
雨宮敬博(宮崎産業経営大学准教授)
甘利航司(國學院大學准教授)
荒川雅行(関西学院大学教授)
荒木伸怡(立教大学名誉教授)
生田勝義(立命館大学名誉教授)
石川友佳子(福岡大学准教授)
石田倫識(愛知学院大学准教授)
石塚伸一(龍谷大学教授)
石松竹雄(大阪弁護士会)
一原亜貴子(岡山大学准教授)
伊藤睦(三重大学教授)
稲田朗子(高知大学准教授)
稲田隆司(新潟大学教授)
指宿信(成城大学教授)
上田寛(立命館大学名誉教授) 
上田信太郎(北海道大学教授)
上野達彦(三重大学名誉教授)
内田博文(九州大学名誉教授、神戸学院大学教授)
内山真由美(佐賀大学准教授)
内山安夫(東海大学教授)
梅崎進哉(西南学院大学教授)
梅田豊(愛知学院大学教授)
大貝葵(金沢大学准教授)
大久保哲(宮崎産業経営大学教授)
大出良知(東京経済大学教授)
大場史朗(大阪経済法科大学准教授)
大薮志保子(久留米大学准教授)
岡田行雄(熊本大学教授)
岡本洋一(熊本大学准教授)
小田中聰樹(東北大学名誉教授)
海渡雄一(第二東京弁護士会)
香川達夫(学習院大学名誉教授)
春日勉(神戸学院大学教授)
門田(秋野)成人(広島大学教授)
金澤文雄(広島大学名誉教授・岡山商科大学名誉教授)
金澤真理(大阪市立大学教授)
神山敏雄(岡山大学名誉教授)
嘉門優(立命館大学教授)
川崎英明(関西学院大学教授)
川口浩一(関西大学教授)
神例康博(岡山大学教授)
木谷明(元裁判官、元法政大学法科大学院教授、第二東京弁護士会)
北野通世(福岡大学教授・山形大学名誉教授)
金尚均(龍谷大学教授)
楠本孝(三重短期大学教授)
公文孝佳(神奈川大学准教授)
黒川亨子(宇都宮大学専任講師)
小浦美保(岡山大学准教授)
古川原明子(龍谷大学准教授)
後藤昭(青山学院大学教授)
小山雅亀(西南学院大学教授)
斎藤司(龍谷大学教授)
斉藤豊治(甲南大学名誉教授、大阪弁護士会)
三枝有(信州大学教授)
坂本学史(神戸学院大学准教授)
佐川友佳子(香川大学准教授)
櫻庭総(山口大学准教授)
佐々木光明(神戸学院大学教授)
笹倉香奈(甲南大学教授)
佐藤博史(元東京大学客員教授・元早稲田大学教授、第二東京弁護士会)
佐藤元治(岡山理科大学准教授)
塩谷毅(岡山大学教授)
四宮啓(國學院大學教授)
島岡まな(大阪大学教授)
白井諭(岡山商科大学准教授)
白取祐司(神奈川大学教授・北海道大学名誉教授)
新屋達之(福岡大学教授)
鈴木博康(九州国際大学教授)
末道康之(南山大学教授)
陶山二郎(茨城大学准教授)
関哲夫(國學院大学教授)
関口和徳(愛媛大学准教授)
曽根威彦(早稲田大学名誉教授)
園田寿(甲南大学教授、大阪弁護士会)
高倉新喜(山形大学教授)
高田昭正(立命館大学教授)
高橋有紀(福島大学准教授)
高平奇恵(九州大学助教)
田口敬也(早稲田大学研究員)
武内謙治(九州大学教授)
多田庶弘(神奈川工科大学非常勤講師)
辰井聡子(立教大学教授)
田中輝和(東北学院大学名誉教授)
恒光徹(大阪市立大学教授)
寺中誠(東京経済大学非常勤講師)
土井政和(九州大学教授)
戸浦雄史(大阪学院大学准教授)
徳永光(獨協大学教授)
冨田真(東北学院大学)
友田博之(立正大学准教授)
豊崎七絵(九州大学教授)
豊田兼彦(関西学院大学教授)
内藤大海(熊本大学准教授)
長井長信(明治学院大学教授)
長井圓(中央大学教授)
永井善之(金沢大学教授)
中川孝博(國學院大學教授)
中島洋樹(関西大学教授)
中島宏(鹿児島大学教授)
中村悠人(東京経済大学准教授)
名和鐵郎(静岡大学名誉教授)
新倉修(青山学院大学教授)
新村繁文(福島大学特任教授)
庭山英雄(元専修大学教授、東京弁護士会)
萩原滋(東洋大学教授)
朴元奎(北九州市立大学教授)
東澤靖(明治学院大学教授、第二東京弁護士会)
玄守道(龍谷大学教授)
平井佐和子(西南学院大学准教授)
平川宗信(名古屋大学名誉教授・中京大学名誉教授)
平田元(熊本大学教授)
福井厚(京都女子大学教授)
福島至(龍谷大学教授)
福永俊輔(西南学院大学准教授)
渕野貴生(立命館大学教授)
保条成宏(中京大学教授)
本田稔(立命館大学教授)
前田朗(東京造形大学教授)
前田忠弘(甲南大学教授)
前野育三(関西学院大学名誉教授、兵庫県弁護士会)
前原宏一(札幌大学教授)
正木祐史(静岡大学教授)
松岡正章(甲南大学名誉教授、大阪弁護士会)
松倉治代(大阪市立大学准教授)
松本英俊(駒澤大学教授)
丸山泰弘(立正大学准教授)
水野陽一(北九州市立大学専任講師)
緑大輔(一橋大学准教授)
光藤景皎(大阪市立大学名誉教授)
三宅孝之(島根大学名誉教授)
宮澤節生(神戸大学名誉教授・カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロースクール教授)
宮本弘典(関東学院大学教授)
村井敏邦(一橋大学名誉教授)
村岡啓一(白鴎大学教授)
村田和宏(立正大学准教授)
森尾亮(久留米大学教授)
森川展男(京都看護大学教授)
森川恭剛(琉球大学教授)
森下忠(広島大学名誉教授)
森久智江(立命館大学准教授)
守屋克彦(元東北学院大学教授)
安田恵美(國學院大學専任講師)
山口直也(立命館大学教授)
山﨑俊恵(広島修道大学准教授)
山名京子(関西大学教授)
山中友理(関西大学准教授)
吉弘光男(久留米大学教授)
吉村真性(九州国際大学教授)
その他氏名非公開賛同者 3名


呼びかけ人・賛同者合計162名(2017年5月12日現在)