県に意見書提出。
最上小国川のダム問題。
7月24日のフォーラムでの今本博建 京都大学名誉教授の発言を受け、蒼々たる研究者の皆さんが意見書を作成してくださり、アウトドアライター天野礼子氏がわざわざ来山し、意見書を提出。
以下のもの。
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平成18年8月11日
意見書
山形県知事 斉藤 弘 殿
山形県土木部長 池田 隆 殿
京都大学名誉教授 今本 博健
新潟大学教授 大熊 孝
法政大学教授 五十嵐敬喜
アウトドアライター 天野 礼子
私たちは、この度、ダムのない天然アユ溯上河川・小国川を愛する 人々の要請で小国川を訪問し、貴職らが進められていますダム案よりも、ダムに頼らない“真の治水”を地元住民らと考えるべきであるという想いに達しています。
しかしながら、最上川水系流域委員会最上地区小委員会(大久保博座長)は、平成18年5月23日付にて「最上小国川の治水対策として現制度の下では穴あきダム案に依るほかないと考えられる」との報告を最上川水系流域委員会委員長に提出されています。
最上小国川は、「松原アユ」で知られます全国屈指の清流であり、ダムの計画地点下流には赤倉温泉と瀬見温泉が存在しています。もし仮に穴あきダムが建設されたとしますと、松原アユをはじめとする自然環境に重大な負の影響が及ぶ恐れがあるうえ、計画規模を超える洪水に襲われますと壊滅的な被害が発生する可能性があります。したがいまして、穴あきダム以外の“真の治水対策”を採用すべきであると確信いたしまして、本意見書を提出いたします。
以下に、穴あきダムの問題点と真の治水対策を説明いたします。
穴あきダム(流水型ダムともいう)は、堤体底部に放流口をもち、平常時は水を貯めないので、魚や土砂の移動が妨げられず、環境への影響は軽微であると説明されています。しかし、穴あきダムにはつぎのような問題があります。
平常時の上流からの流れは、暗くて長いトンネル状の放流口を抜け、流れの勢いを弱める減勢工(エンド・シル)に空けられた狭い隙間を通って、下流へと出ていきます。隙間での流れは非常に速く、魚の溯上が妨げられます。
洪水時の流れは、一時的とはいえ、ダムの上流に貯められますので、土砂の堆積が発生します。この土砂は洪水の引き際に水の流れとともに排出されますが、かなりの部分がそのまま残ります。このため穴あきダムにも堆砂容量が設定されるのです。土砂流出の多い最上小国川の場合、総容量630万m3のうち実に24%の150万m3が堆砂容量です。
また、洪水時の流れは泥水ですので、樹木などに泥が付着し、枯れる恐れがあるうえ、その後の降雨で付着した泥が洗い流され、下流は濁流 となります。沈殿していた有機物が徐々に溶出し、水質が悪化する恐れもあります。
計画規模を超える洪水が発生した場合、洪水はダムを越えて流れますので、下流での洪水流量が急激に増え、逃げ遅れなどにより被害を激甚化する恐れがあります。
さらに、穴あきダムは中小洪水をほとんど調節しませんので、自然環境にとって重要なダイナミズムは確保されますが、別の支川の流域に降雨が集中して下流が危険状態となっても、それを緩和することができません。
穴あきダム完工後の湛水試験では、数か月という長期間にわたって水を貯めますので、水没した動植物が死に絶える恐れがあります。
周辺の景観が劇的に改変されることはいうまでもありません。
このように、穴あきダムは、洪水調節機能に欠陥があるうえ、自然環境 に及ぼす影響を無視できません。
現在の治水計画は基本高水を河道とダムに配分するようにしており、超過洪水に対する配慮がなされていません。洪水は自然現象ですので、 超過洪水が発生する可能性はつねにあります。したがいまして、いかなる大洪水に襲われようと、少なくとも壊滅的な被害を避けるようにすべきです。
また、「これからの治水は、まちを安全にするだけでなく、まちを活性化するようにすべき」です。それが“真の治水”です。
最上小国川ダムは赤倉温泉の治水には一定の効果がありますが、まちの活性化にはつながりません。したがいまして、まず河床掘削と拡幅によって河道の流下能力を増大することを優先的に実施すべきです。河道内の建物は再配置し、清流に向き合った温泉街をつくることで、まちが活性化します。矢板やソイルセメントを用いた止水壁の設置により、河床掘削の湯脈への影響を防止することができます。河道の流下能力を超える洪水が発生した場合は、早期避難によって人命の損傷を防ぎ、高床式などの建物耐水化によって物的被害の軽減を図るべきです。
山形県におかれましては、一時しのぎの「穴あきダム」を採用することなく、“真の治水”を実施して、地域に永続的な繁栄がもたらされるように、可及的速やかに勇気ある英断を下されますよう要望いたします。
以上
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ダムよりも真の治水。そして持続可能な赤倉温泉のまちづくりが提案されている。実に秀逸な意見書だ。
最上川流域委員会で無視されないようにワッチしていかねばならない。