10.20 鶴岡水源切り替えから5年。
10月20日。この日は、忘れもしない5年前、鶴岡の水道水源が地下水100%の
水道水から、月山ダムの水に切り替えられたその日。
5年前というと9月11日に同時多発テロが起きて世界が変わったといわれて
いるけれど、鶴岡の市民の暮らしは、実は5年前の10月20日に大きく変わっ
ているのではないでしょうか。おいしくて、冬ぬくもりがあって夏冷たい地下水
100%の水道水。食文化を支える大きな要素が、明らかに変化しました。
今はそれを、わざわざ水道料金の100倍もの値段の地下水販売所や、
1000倍もの値段のついたペットボトルを買い求めないと当時の水質の水を求
めることはできません。
そして、切り替えにともなってこの8年間で3度段階的に水道料金は引き上げら
れ、1.85倍と、切り替え以前の役2倍もの高額な水道料金になっているので
す。県から買う契約水量は72000トンで、現状5万トン足らずで減り続けて
いる現現状でみれば、あまりに過大であり、私たちは使わない水の分のお金まで
水道料金に上乗せさせられているという計算になります。
改めて提示しますが、山形県というのは、宮城県と並んで全国で最も水道料金
が高い県だっていうことをご存じでしょうか。全国の水道料金の格差は約9倍。
少ない人口のところで、ダムなどの巨大開発をして水源を確保し、広域水道など
に頼った水道にしたところで、軒並み、水道料金が高額になり、おおきな矛盾を
抱えることになるということであります。
もう、わざわざダムをつくって水道水源を確保しなくても、水は足りている。こ
れは、先日八つ場ダムの大集会もあったようですが、どこも同様です。
利水目的のダムというのは存在理由をほぼ失っています。
今、取り組んでいる、最上川の支流、最上小国川につくられようとしているダ
ムは、一番はじめの計画では水源を確保するための多目的ダムから構想がはじ
まっています。しかし、利水目的がほぼ失われたために途中から治水専用の目的
になっています。
全国のこうした事情を踏まえ、国土交通省が考え出したのが「穴あきダム」で
す。ダム提体の底に穴を設け、通常は川がそのまま流れ洪水時は一定量貯まると
いったものです。国や県の説明というのは、穴あきダムであれば、河川生態系に
もほとんど影響を与えないという説明です。
しかし、本当にそうでしょうか?
詳しいデータも未だ全く示されていません。
多くの川やダムを知る人たちは、ダム工事で川に手を入れた瞬間に川の環境が大
きく変わってくることを知っています。鮎の数がダム事業の前後で変化すること
をごまかそうと、ダム事業の直前の河川の調査を甘くして、そしてダム事業の後
に鮎の放流を激増させる。こうしたこともまかり通ってきました。
まさに、川を殺し続けてきたのがダム事業です。穴あきダムはどうかというと
今本先生は「穴あきダムでも自然環境に重大な負の影響が及ぶおそれがある」と
指摘しています。
いずれにしても県、国から、これまでの実例を元にした環境影響についての
データは全く示されていません。どんな影響があるのか、さっぱりわからない。
結局は、この「小国川が実験台になる」ということではないでしょうか。
清流最上小国川については、私は、まさに日本全国に誇れる、いってみれば世
界中に誇れる川だと思っています。天野礼子氏は、「日本の名河川を歩くという
著書」の中でこの川を日本で第二の名河川と称しました。先日、四国の清流、四
万十川をベースにしている鮎釣り氏が小国川を訪れましたが、「四万十の数倍、
この川はすごい」と絶賛していきました。その方のつてで、四国からまた、つり
師が訪れているとうかがっています。
つり具業界の鮎釣りトーナメントが年間8回もおこなわれている川もこの川だ
けの特徴となっているようです。いかにこの川の持つポテンシャルが高いかをこ
れは示していると思います。
山形随一といっていい、この川の魅力。これを本当に台無しにしてしまっていい
のでしょうか。
5年前の10月20日、私たち鶴岡市民は、月山ダムの事業によって、私たち
の誇りある水道水源を地下水100%の水道水からダムの水に切り替えられてし
まいました。
それと同様に私たち山形県民は、またも誇りある自然資源としての美しい川をダ
ムによって失おうとしているのです。
次の世代に何を手渡すべきか、コンクリートの山と借金の山か、それとも、美
しい山河か。いくら金をだしても買うことができない、貴重なバランスの上での
み成立する自然の美しさか。
今、私たちは問いかけられていると感じています。仕事になるといってもこう
したダム、ましてや穴開きダムの事業というのはできる建設会社は中央の大手の
ゼネコンだけです。もしかすると穴あきダム利権というのが芽生えているかもし
れません。地元業者は孫請け、ひ孫受けぐらいで、利益になる事業では決してな
いのではないでしょうか。先日ある方から、朝日村のあるホテルの話をうかがい
ました。そのホテルというのは、月山ダムの建設がおこなわれていた10年ほど
は一時的には潤っていたようですが、その間、一般の客の足が鈍り、ダム建設完
了後、ほぼ同時期に倒産してしまったということでした。
最上小国川の場合、赤倉温泉や瀬見温泉に宿泊する方の多くが鮎釣りに来る方
やこの清流の鮎を楽しみに来る方々だとうかがっています。これがダムによって
失われるとしたらどうでしょう。
また、歴史ある赤倉温泉、瀬見温泉の持続可能な振興策を考えれば、治水策を
めぐって、慎重にしっかりと議論し、考えなければならないと思っています。
10月28日のシンポジウムでは、徹底的にこの問題を検証し、真の治水につ
いて、全国的な見地で議論しあいます。ちらしなどは http: //www.ogunigawa.org
なお、本日の話ですが、はじめて参加される方もいらっしゃると思いましたの
で、今週月曜日に、県のほうから冒頭に説明してくれるように要請をしたのです
が、本日、「説明は尽くしている」などと断られました。全く不当な話です。
20日、八文字屋の前、以上の事などなど、1時間演説。終わる直前に大雨。ずぶ
ぬれになりましたが、新たな一歩に向けての禊ぎのよ うに感じられ、なんだかパ
ワーが増しています。
鶴岡の水道水については、この5年で市民の生活はいかに変わったのか。みなさ
んの声を伺って参ります。ぜひ、メールなどもお寄せいただければ幸いです。ま
た、28日のシンポもよろしくお願いします。
10月20日、月山ダム事業を教訓に公共事業を問う日。これからもまためいっぱい
動きだします。