12月25日、山形県知事に対して政策提言書を提出
12月25日、山形県 吉村美栄子知事へ、26年度政策提言書を提出しました。 7項目。
政策提言書
平成26年12月25日
山形県知事 吉村美栄子様
みどり山形 草島進一
1)農林水産業の政策について
●強い農業=絆の強い農業 地域内、都市と農村を結ぶ新たな絆をつくるCSA(コミュニティサポーテッドアグリカルチャー)の展開を求めます。
今冬、農家の方々は米の概算金の引下げや米の直接支払制度の変更により、所得減で大変厳しい状況であると認識しております。高齢化等が進む中でコメ農家の危機が叫ばれ、又、映画「よみがえりのレシピ」で紹介されている山形の伝統野菜、在来作物についても10年後にその姿がどれだけ残っているかという不安を研究者の方々が抱えております。シードバンクなどの提言も以前させていただきましたが、まずは生産者と消費者との関係性の中で守られ続けることが大切と考えます。
CSAは直訳すると「地域に支えられた農業」であり、消費者が特定の農家から生産物を直接定期購入する仕組であり農家は収入を安定することができ、都市生活者は農家や食を通じて、普段の暮らしに欠乏している自然を実感できるという関係性の再構築といえると思います。 従来から有機農業の場では生産者と消費者を結ぶ「提携」というカタチがありました。今後、TPP等の影響など、コメ農家、更に特に小中規模、家族農業の農家の方々へのリスクが高まると考えます。そのリスクへの対処として、又、山形ならではの食文化を守るためにも提携、CSA等「絆の強い農業」を政策として構築していただきたく存じます。
その具体として「次世代に残したい山形の食文化遺産」なるものを創設し、一つ一つの作物、あるいはサクラマス、米沢の鯉、松原アユ等を具体的にピックアップして消費者と生産者、漁業者とをつなぐ。そうした仕組みを展開することを提案します。(12月商工労働観光常任委員会で提案)
来年開催されるグリーンツーリズム全国大会は、生産者と消費者を結ぶ絶好の機会であります。この機会に都市と地方を結ぶCSAの新たな展開へのしくみづくりに邁進していただきたいと存じます。
● 有機農業政策の振興について、オーガニック国際市場も視野にいれ、更なる推進を。
「有機農業日本一を目指して」とする平成25年8月策定の山形県有機農業推進計画は、農家戸数、栽培面積、水田面積、推進体制整備の市町村などを目標を掲げ、意欲的に取り組んでいる姿勢については、大いに評価するものです。ぜひより高い目標を掲げてとりくんでいいただきたいと存じます。
持続可能な農業を考えた際、また、自然とのつながりを求めるIターン、Uターンの新規農業者にとって、慣行農業よりもむしろ有機農業や自然農法による農業が注目されていると聞きます。より安全安心で本来のおいしさを味わえる魅力は農を志す方々にとっても消費者にとっても、そのニーズは以前よりも高まっていると考えます。
また、2013年9月末に農水省は米国とオーガニック食品に関する同等条約を結んでおりますが、米国のオーガニック市場は世界最大の市場規模。欧州のオーガニック食品市場も急成長しているとのレポートがあり、アジア圏でも市場が拡大とのレポートがあります。(資料)より安全で美味しい山形の農産品、また農産加工品の今後のターゲットとして国際的なオーガニック市場を見据え、それらの参入を支援する事なども有意義ではないかと考えます。
より一層の有機農業、有機食品政策の推進を、生産と販売、加工、それぞれに求めます。
●内水面漁業について
準絶滅危惧種になっているサクラマスについて。
サクラマスの減少の原因は、これまでのダム、砂防ダムでの川の分断の影響が大きいと、他県また、過去の本県の水産試験場からの指摘があります。今後の河川整備において準絶滅危惧種のサクラマスをこれ以上減らすことのないように、生物多様性戦略を踏まえ、県土整備部の河川担当とともに取り組んでいただきますよう、提言いたします。
2)環境政策について
●鶴岡市の水資源(地下水)の保全と利活用について
12月1日、鶴岡市はユネスコ創造都市ネットワークの食文化部門に認定された。鶴岡の食文化を根底で支えて続けてきた「食材」たる本来の鶴岡の「水資源」である地下水資源を改めて価値付け、実質的な保全策を検討していただきたい。
▽鶴岡市の赤川扇状地の地下水資源については、全国有数の地下水盆であり昭和53年から55年、柴崎達雄 東海大学教授(当時)、桑原英夫 山形大学教授(当時)らの調査で、25万トン/日の持続性補給量があるとして全国有数の地下水資源であることが確認されております。実際にこの水源は昭和8年から平成13年10月まで鶴岡水道の水源として利用されてきました。水道水が広域水道事業に切り替わって以降、現在、水道水としては非常用の1万トンのみ確保している状況であります。現在、大変良質な水源であるため、ブルボン社(本社新潟県柏崎市)がペットボトル飲用水用にくみ上げ、食品会社が加工用に、又、中央工業団地では、工業用で利用。そして、冬期は道路、駐車場などの消雪用に大量にくみ上げ活用されている状況であり酒蔵業の一部で仕込み水に利用されているケースもあります。
現在、これらの地下水の揚水量については、届け出義務も無く、市も県も全く関知していない無秩序の状態であります。このことは2011年9月の一般質問でも指摘しましたが、未だ未解決のままであります。又、元の水道水源地近くでは、地下水障害の原因とも指摘されている砂利採取が、水源切り替え以降頻繁におこなわれています。
12月1日、鶴岡市はユネスコ創造都市ネットワークの食文化部門に認定されましたが、この食文化を根底で支えて続けてきた「食材」たる本来の鶴岡の「水資源」としてこの地下水を改めて価値付け、実質的な保全策を検討していただきたいと考えます。実際、市内の食堂、又個人宅では慣れ親しんできた地下水水源の水を求め、現在汲むことができる酒造メーカーの井戸、温泉施設の井戸などの水を求めにいくケースや、以前の水質(食味)を求めて、浄水器を付けているケースが見られます。
昨年、村山広域水道の濁りによって広域水道水源が使えず断水する事故が発生しました。その際、独自水源の活用ができた地域では断水を回避することができ、又、民間の井戸が近くにある地域では、その協力により生活用水、飲用水などに活用できたと伺っております。庄内地域でも庄内広域水道水源が使用不可になった緊急時を想定してその対処策についての検討を促してその際、水道緊急時に対処する1万トンの活用とともに、民間の井戸水についても飲用や生活用水として利用が可能なように調整すべきであると考えます。
そのためにも、「地域共有の貴重な資源」として一定量以上の地下水利用者の揚水量の届け出を義務化する新規の「地下水保全条例」の整備について再提案します。
*参考:熊本市 熊本県の地下水保全条例
鶴岡市の地下水盆については、赤川扇状地の水田が涵養源であることが前述の調査によってわかっております。県の平成25年4月1日施行の水資源保全条例は大変有意義と評価するものですが、現在のそれぞれの保全区域は山間地の森林が主であります。これを鶴岡市の水資源である、月山を頂とする赤川扇状地の指定をご検討いただきたいと思います。月山のブナ原生林はもとより、「農を守って水を守る」として実際に機能している涵養源である水田について、水田の多面的利用としての価値付けをするとともに実質的な地下水資源の保全のために、涵養源としての指定を求めるものであります。
3)人口減少対策・消滅集落対策・地域創世政策について
人口減少対策としてのこども、若者の婚活、子育ての支援については県では現在も様々な取り組みがみられますが視点を変えて提言をしたいと考えます。
私は、今後山形の「地域創世」を考える上で、最も大事なことは、人口が減らない。若者がもどってきて、子供が生まれ続ける。ということであると考えます。もちろん子育てしやすい環境づくりや教育環境は重要ですが、この事の実現のために私が最も重要視すべきは、地域住民が地域に誇りをもち、その価値やその地域にしかない魅力を残すことにあると考えるものです。
「若者が本当にその地域を好きになったら、仕事は自分でも探したり、つくり出したりする。その地域にとって、まずは、地域を磨き、いかに魅力的にするかが重要だ」とは、30年前から移住者を受け入れている和歌山県那智勝浦町色川地区の原和男氏の発言であります。
現在、特に3.11以降、都市部の20代30代の若者の中に、田園回帰の 志向がひろがり、農的暮らし、半農半Xを求めて、農山村に移住する方々が増えている。それはむしろ団塊の世代よりも多いとも内閣府のデータにあります(小田切徳美氏)。山形のIターン、Uターン対策として、こうしたニーズへの発信やはたらきかけはもっと積極的であっていいと考えます。子ども育成・若者支援対策特別委員会でも申し上げましたが、山川海とつながる山形の暮らしの魅力をもっと発信すべきであると考えます。
山形の在来作物の種を守る人々を描いた映画「よみがえりのレシピ」は上映当初から委員会などでご紹介させていただいておりますが、これまで自主上映などで全国で上映され、山形の貴重な食文化を伝えています。こうした映画もぜひ有効に活用し、山形ならではのライフスタイルを発信していただきたいと思います。
また、鶴岡、庄内山形の地域づくりとして、出羽三山とのつながり等の文化、里山里海里川の生活文化を生かしたブランドの確立をすることが重要と考えます。しな織り、養蚕から製糸・製織・捺染(なっせん)まで、絹製品生産の一貫した工程を有する国内唯一の地域としての特徴をより活かして、デザイン化、ブランド化についての支援、また、山形の手工業を一同に介したモデルルーム展示など。新しい見せ方を工夫していただきたいと存じます。
以上、人口減少対策として、山形ならではの自然資本、伝統文化、人的資本を総動員して魅力を最大限発信すること。そして、魅力を感じた方々に、空き屋等を利活用した住まいの提供。ワークショップなどを通じて住民としての役割をもてるようなコミュニティづくり。地域課題を解決するコミュニティビジネスなど「ナリワイ」としての仕事など、新しい働き方も含めた仕事づくりなど、課題を解決する中で、移住、定住とつなげられる仕組みを構築いただきたいと存じます。(参考 島根県邑南町)
又、地域の経済を考えた際、農業県であり、豊かな自然環境あっての山形であることを踏まえれば、自然資本をベースとした「定常型経済」として「成長」よりも「成熟」型の経済政策として、基本的に徹底して経済(ヒト・モノ・カネ)が地域内で循環する「地域内経済循環」を向上する事が必要と考えます。県としてこうした地域内経済循環を示す指標を定めて、食、商工業、エネルギー政策などにおいてその向上に努めていただきたいと存じます。
4)教育施策に関して
●県立図書館の充実を
県内の公立図書館のお手本をみせるべき県立図書館の機能を強化が必要と考えます。まず人員として、正規の職員としての図書館司書が3名以上常駐する体制を組んでいただきたいと考えます。更に、歴史的な郷土資料などのデジタルアーカイブ化によって、山形の歴史、伝統、文化関係の文献資料については、どこでも誰でもアクセスできるようなしくみづくりを提案します。また、ビジネス支援図書ブース、リファレンス機能の充実化、更に、県主催の講演などを収録したもののVTRのアーカイブライブラリー、更に、県内の学校図書館を支援できるような仕組みの構築やスタッフの充実など、県立図書館の充実を提案します。
● 学校図書館の充実を
鶴岡市の朝暘第一小学校の学校図書館は、全国的に最も高い評価を受けている学校図書館の一つであります。学校司書が学校図書館におり、司書教諭が図書館に専属でいることにより学校図書館を中心に充実した「読育の場」をつくることを可能にしております。
先ずは、学校司書が特別支援校を含む全ての学校に配置される事を目標に学校図書館の充実をはかっていただきたいし、司書教諭についても専属でいれる仕組みをより充実し、朝暘第一小学校の学校図書館をスタンダードとして県内の学校図書館の充実をはかっていただきたいと存じます。
また、司書資格をもつ学校司書についての待遇の改善を要望いたします。
● いじめ、不登校など問題行動の防止にソーシャルスキルトレーニングを。
いじめ、自死などの問題行動の根本解決をはかるには、児童生徒のコミュニケーション能力などを高める事が必要であります。セカンドステップなど東京都品川区などで実績のあるソーシャルスキルトレーニングを導入することにより、児童生徒の共感力などのコミュニケーション能力が高まることが知られております。こうした社会性と情動の学習(SEL)の研究では第一人者である山形大学 宮崎昭先生が身近にいらっしゃることもあり、今後の山形県の教育のカリキュラムの内外で、如何に導入し、展開すべきか、検討していただきたいと存じます。
● 県立博物館の充実について
博物館の学芸員の人員体制について それぞれの部門に正規の職員がいることは最低限確保すべきであり、山形県の博物館としてそれぞれの部門でテーマ性をもって独自の研究を充実していただきたいと存じます。
施設老朽化や時代のニーズに照らして、次の構想を考慮するべき時期にきていると考えます。今後の県立博物館の構想会議を県民参加型でオープンな場で行っていただきたいと考えます。
2014年4月に開催になった、三重県総合博物館が参考になるかと存じます。http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/MieMu/about_MieMu.htm
5)エネルギー、省エネ政策について
●再生可能エネルギー政策について
地域の資源を使って流出したり植民地化という開発にならないように、以下の定義に基づき、地域の人々がオーナーシップをもって進める自然エネルギーの取り組みとしてのコミュニティパワーを優遇する政策を行う事を再度提言します。
1)地域の利害関係者がプロジェクトの大半もしくはすべてを所有している
2)プロジェクトの意思決定はコミュニティに基礎をおく組織によっておこなわれる。
3)社会的・経済的便益の多数もしくはすべては地域に分配される
(この3つの基準の内、少なくとも2つを満たすプロジェクトは 「コミュニティ・パワー」として定義されます)
現在、メガソーラーについては電力会社によって保留の状況でありますが、50kw未満の低圧については規制外であり、個人や民間でも取り組みやすいため、固定買い取り価格制度変更までの間、大いに情報提供、奨励していただくよう、提言するものです。
● 省エネ政策について
県のリフォーム補助金の活用は好調であると認識しております。山形県内の省エネ政策として最も課題なのは建築物、住宅の断熱性能であると認識しております。リフォーム補助金による省エネ改修が進んでいるとしても、これまでは明確な指標がないため、その効果は正確に把握できておりません。
2013年6月の予算特別委員会で提言したドイツ、EUの家の燃費制度(エネルギーパス)など、明確な指標をもって、インセンティブを高め、省エネ改修をより実質的に進める事が必要だと考えます。
2014年4月から長野県では、住宅を建てる前に「家の環境エネルギー性能や自然エネルギー設備の導入を検討すること」が義務付けられています。こうした制度を参考に山形の家づくりにも明確な省エネを促すエネルギー性能、再エネ導入を促すしくみづくりを検討していただきたく要望いたします。
6)福祉政策について
●共生型デイサービスについて、
赤ちゃんからお年寄りまで障がいの有無に関係なく地域密着のケアができる共生型デイサービスについては、富山県で20年以上の実績があり、国もその効果などを認め、被災地などでの普及を支援している実状があります。当初富山型福祉サービス推進特区」において適用された特例措置は、障害児(者)の通所サービス(生活介護)が平成22年6月に、宿泊サービスが平成23年6月に全国で実施できるようになり、平成25年10月には児童発達支援、放課後等デイサービス(旧児童デイサービス)が全国において実施できるようになりました。
富山県では中学校の範囲でこの共生型ケア施設が設置されることを目標に200件を目標に整備が進められています。静岡県、高知県、熊本県、長野県
などにも拡がっている取り組みであり、11月2日の国会でもとりあげられています。山形県でも一部基準該当での類似の取り組みが見られ、現場の声を聞いたところ、利用者にはとても好評とうかがっております。昨年度より取り組みの提案をしていますが、子供、障がい者、高齢者に渡る横断型の担当がいてはじめて取り組める施策ではないかと感じてもおります。今、全国に拡がりつつある地域密着型で互いに機能改善などの効果も認められている共生型デイサービスの普及について充実を求めます。
7) 最上小国川ダム事業について
流水型ダムでも環境に影響すること、ダムによらない治水は可能であり、より未来にわたり有利である事が複数の科学者によって立証されております。
これらはこれまでの検証や協議の中では明らかにされていなかった新たな知見であります。こうした知見に対してなんら説明責任も果たさずにダム事業を進めることはできないと考えます。これらの知見に対して説明責任を果たす場を設け、疑問をもつ科学者や県民に対して説明責任を果たされるよう要請いたします。
漁業補償締結について、小国川漁協の特別決議では、漁業行使権をもつ関係組合員に対する補償締結はおこなわれておりません。「漁業行使権」を財産権として認めないとする県の姿勢は漁業法143条と全く整合性がとれません。実際に現在、漁協行使権の侵害を訴えている者がいる中で、これを無視してのダム着工は法的に許されないことであります。漁業行使権者に対する協議の場を設定をし、漁業補償についての協議を行うことを要請いたします。
最後に「ダムをつくってもダムのない清流を目指す」とした漁業振興プランは今や科学的にあり得ないことであり、大きな矛盾を抱えております。又、森里海川連環をうたいサクラマスをシンボルに「豊かな海作り大会」を開催する当県において、サクラマスの重要な産卵場所である小国川の自然を改変する小国川ダム事業を行うことは、完全な矛盾ともとらえられる事であり、避けるべきであると考えます。
全国の屈指の清流として鮎釣りだけで年間3万人もの釣り人が来る清流。縄文の女神の時代からこれまで全国屈指の清流環境を活かして地域を営んできた先人の営みと、又、もしダム事業をおこなえば、この恵みが享受できずに大きな矛盾を抱え続ける流域の未来世代の事を考慮し、更に最新の科学的知見を熟考していただきたいと考えます。そして「時のアセス」として、今この時代での見直しを行っていただくよう要請いたします。
26年度一般会計補正予算の内、最上小国川ダム関連事業について反対討論
議199号平成26年一般会計補正予算の内、最上小国川ダム建設事業関連について 反対の立場で討論いたします。
人口減少、地域消滅と言われる時代になりました。
この時代に私が最も大切にすべきことは、
山形にしかない価値や魅力を絶対に失ってはならないという事であると考えます。
なぜならそれが、今後の観光立県を目指す上での観光客をひきつける。また、都市生活者の移住を促す必然性だからであります。
最上小国川。
縄文の女神の時代から現在まで、小国川上流部のブナ原生林から日本海まで、100キロの森里海をつなぐダムのないこの天然河川は、まさに生物多様性のいのちのゆりかごであります。これこそ山形県の自然遺産であり次世代に手渡さなければならない宝であると考えます。
今年になって、流水型ダムでも環境が悪化し、流域のアユやサクラマスの生態に影響を与えうる事が最新の実例などによって明らかになりました。
そして、流域の安全安心の確保は、赤倉温泉街の河道改修によって十分に可能であり、ダムよりも有効な治水ができるということが立証されています。そしてそれにともない温泉街の再生をおこなうことこそ、持続可能な流域に貢献しうることが提言されています。
県は、こうした重要な科学的知見を排除し続けてきたことが確認できました。
更に県の、「漁協組合員には財産権などの権利がない」という姿勢は、「漁業を営む組合員の権利は物権的性格を有する。として143条をもつ漁業法に照らせば 漁業法の精神から完全に逸脱した違法行為であります。
「ダムをつくってもダムのない川以上の清流をつくる」とした県の漁業振興策は、これまで営々とつちかわれてきた、川の力を活かした漁業振興の歴史にピリオドをうつものであります。
そしてその振興策は、本当に小国川を愛する川漁師や釣り人、そして川で遊ぶ子供達には、詭弁でしかありません。
ダム撤去や流域治水を実践し、天然河川をとりもどそうとする世界の潮流とも矛盾するものです。
今、山形の価値を更に高め、世界に発信していかねばならないこの時代に、そして2年後、「森は海の恋人」をうたって「豊かな海づくり大会」を開催するのであれば、時代に逆行し、山形ならではの自然資本を破壊するダム開発は見直しすべきであります。
以上、反対討論とします。
山形県議会12月11日の予算特別委員会での質疑内容。
12月11日の草島進一 県議会議員 予算特別委員会での質疑内容です。メモから書き起こしました。正式な議事録は2ヶ月後にでてきます。
1)流域治水条例と地先の安全度マップについて
2)放射性廃棄物と原発再稼働について
3)最上小国川ダム問題について ●漁業補償の締結の問題 ●環境影響など科学の排除 ●森里海連環をテーマとした豊かな海作り大会と小国川ダムとの矛盾について
草島進一
震災から本日で3年と9ヶ月であります。
3.11の津波災害と、福島第一原子力発電所の事故は、如何に私たちの社会が持続不可能な社会なのであるかを提示しました。
私は、あの2万人余の犠牲や、今もふるさとに戻れない12万人もの方々の立場にたって、「持続不可能な社会」を「持続可能な社会のあり方に変える。」これを念頭に議員活動を続けて参りました。
持続可能な社会には定義があることは3年前にお示ししました。
環境と社会と経済がバランスする持続可能な社会。
果たして今、その定義を満たす方向に、邁進できているでしょうか。
教訓を紐解きながら、質問をしていきたいと思います。
あのとき、「想定外」という言葉をよく聞きました。津波災害からの教訓で言えば、岩手県田老町の世界一といわれた10メートルの防潮堤を津波が越え、一部を破壊し、防潮堤があるから安全だと思っていた住民198名の命を奪いました。私も現場を訪れましたが「想定したハード整備は、時に想定を超え、人命を奪うということであります。巨額の公費をかけても「想定外」として責任を問われない。無責任といわれても仕方ないと考えます。原発も然りであります。
2004年の新潟豪雨災害では。100年の洪水に耐えうる堤防が整備され、ダムが上流に2つもある五十嵐川という川で堤防が決壊し、「ダムがあるから安心」としていた住民を飲み込み9名の方々が命を落としました。この事はダム治水の限界を示し、災害に上限はない。治水に完全はない。という教訓になっています。
今年は想定を超える豪雨が相次ぎ、県内でも200ミリを超える豪雨があり、南陽市で水害が発生、広島では土砂災害で74名の命が奪われました。
私は、南陽市の現場とともに、広島の現場を訪れました。40人亡くなった最大の被災地には、県営住宅も土砂に呑まれており愕然としました。広島市安佐南区(あさみなみく)で起きた土砂災害ですが、山の全方位的に起きておりましたが、宅地開発の行われていない方角では、土砂崩れが起きても、人的被害がなかったということです。また砂防ダムが上流にあってもそこから得られる教訓は何か。土砂災害が予想される山裾には住宅開発を行ってはならないということに尽きると思います。間違っても「もっと砂防ダムを作れば安心だ」という誤った神話に導いてはならない。ということを確信いたしました。
今後求められてるのは、想定外を超える豪雨に対処した治水のあり方であります。が、戦後最大規模の雨を想定しても現在目標の4割しか達成できていない我が県にとって大きな課題だと認識しております。
更に、現在進められている県の県有財産総合管理基本方針(案)」によれば、現在でているだけでも今後30年間で、ハコモノ3300億円、インフラ3900億円併せて7200億円ほどの更新費用が必要と試算されていることです。今後の人口減少の時代に今あるインフラでさえ更新できるのかが危惧されている。それを踏まえた公共事業のあり方が問われているということです。
ここで提起したいのは、流域治水という概念・方策であります。どのような洪水にあっても人命が失われることなく床上浸水などの生活再建が困難となる被害を避ける。
その方針の下で、これまで川の中にとどまっていた治水政策を川の外にも広げ、氾濫原の対策として実効性のある土地利用規制を書き込んだ、国内初の法令が、滋賀県の「流域治水推進条例」であります。今現在、山形県内の市町村が発行している洪水ハザードマップは、大河川からの流入だけを捕らえたものですが、しかし県内でも最近の浸水被害の中には、下水道や農業用水など身近な水路からの内水氾濫によるものもあります。滋賀県では、これらを組み合わせ「地先の安全度マップ」として危険度を表した新たなマップに落とし込みそれを昨年公表しました。それを治水対策の基礎情報として今年3月には流域治水条例が制定されました
実際に滋賀県の担当者に伺ってきました。この地先の安全度マップにより、安全に通れる道路などが明快になり避難経路などが充実したそうです。条例では、どのような洪水にも命を守る事を考えた時に、河川整備の遅れ、水防活動、避難行動の遅れ、とともに、危険箇所での無防備な市街化が問題であると考慮する中で「まちづくり治水」として都市計画法や建築基準法の開発規制や建築規制が導入されています。先人の考え方として旧来危険なところに家を建てなかった事を制度にしたと伺いました。更にみちづくり治水、人づくり治水なども考慮されていました。
国の「気候変動に適応した治水対策検討委員会」7月28日でも「気候変動に伴い、現況の安全度や計画規模を上回る外力の発生頻度の増大が予測されている。とした上で、地先の安全度マップを作成・公表し、河川整備のみならず、まちづくり、耐水化建築、避難体制の充実を図ることにより人命や経済的な被害を最小化するための「多重防御策」を推進すべきとこの政策を評価しているようであります
滋賀県では、部局横断の流域治水政策室をつくり、市町村とも連携して地先の安全度マップをつくりあげたようです。山形県でも河川担当の他、都市計画、下水道、農業水利など部署横断的に連携して「地先の安全度マップの作成を創ること」や流域治水の方策を提案します。県土整備部長に伺います。
県土整備部長
委員からご提案ありました「滋賀県流域治水の推進に関する条例」は、想定降雨による浸水の深さを「地先の安全度マップ」として明らかにした上で、①河川の整備、②集水地域における雨水の貯留浸透対策、③氾濫原における建築物の建築の制限等、④避難に必要な情報の伝達体制の整備等という4つの観点から、総合的な治水対策を進めるため、今年度に施行された条例です。なお、氾濫原における建築物の建築制限を設けたのは、治水関係条例では全国初になります。
この条例が制定された背景としましては、①琵琶湖周辺に約140もの一級河川があると同時に天井川が非常に多く、河川の洪水のみならず内水氾濫が生じた場合の被害規模が大きいこと、②大都市圏に近く住宅建設等の開発圧力が高いこと、③雨の降り方が変化している中で、ハード整備の進捗が図れないこと等と聞いております。
「地先の安全度マップ」は、一般的な洪水ハザードマップとは異なり、200年に1度の最大規模洪水による一級河川からの外水氾濫だけでなく、小河川や身近な水路が溢れた場合の内水氾濫についても考慮されています。また、浸水の深さや家屋流出等の発生確率が示されるなど、避難行動をより適切に行えるよう配慮されています。
一方、この条例については、幾つかの課題もあると聞いています。①「地先の安全度マップ」は、概ね5年毎に更新することになっていますが、開発事業による地盤高の変更や土地利用状況等の調査に多大なコストを要すること、②建築物の建築制限を行う区域の指定については、これから検討を始めるとのことですが、指定に際して、行政、住民、学識者からなる協議会を設立し、「水害に強い地域づくり計画」について合意形成を図る必要があり、1箇所の区域指定であっても一定の期間と労力を要する見込みであること、などです。
ところで、本県の流域治水につきましては、平成22年3月に策定した「やまがた水害・土砂災害対策中期計画」に、ハード・ソフトが一体となった治水対策にその考え方が示されております。
本県では、「地先の安全度マップ」に対応するものとして、市町村が作成・公表している洪水ハザードマップがあります。この洪水ハザードマップは、水防法に基づく洪水予報河川と水位周知河川の70河川について、県が作成した浸水想定区域図に基づき作成されております。なお、浸水想定区域図については、今年3月に国土交通省により作成マニュアルが改訂され、今後、計画の規模を上回る降雨等による新たな洪水外力が示される予定です。県としては、これを待って速やかに、浸水想定区域図の見直しの検討を始めたいと考えています。また、雨水の貯留については、土地の区画形質の変更を伴う5へクタール以上の開発行為において、河川へ雨水排水を無秩序に流入させないよう、県が「河川流域開発に伴う雨水排水対策指導要綱」を定め、必要に応じ、事業者に対し雨水対策のための調節池の設置を求めるなど、治水対策上の指導の上、開発許可を行っているところです。
流域治水の考え方は、治水対策上、非常に重要であると考えております。今後、本県における流域治水につきましては、滋賀県の条例制定後の効果や影響をしっかりと検証しながら、今後の全国のハザードマップ見直しの動向も注視し、かつ、本県の河川流域の特性も十分に考慮しつつ、研究してまいります
草島
前回、治水上危険だからということでダム計画が議論されている赤倉温泉のそれも川沿いに、新しい建物がたったという「現制度の矛盾」を指摘しましたが、県内でもこの条例の必要性はあると思えます。
「12/2火の報道ステーションの特集では、滋賀は制度をつくっただけではなく、すでに県民自らが安全安心な県づくりに参加していることが取り上げられていました。
山形でも、県民自らが動き出せるように、まずは行政や県民が、水害リスクを共有することから始ませんか。よろしくお願いいたします。
草島
3.11のもう一つ大事な教訓は、日本国内に第三の被爆をもたらした「福島第一原発事故、原発政策であります。福島からの避難者の立場に立ち「卒原発」を滋賀県のかだ元知事とともに当初から掲げ、再生可能エネルギー政策に邁進されてきた吉村知事の姿勢は大変評価するものです。そこで、この関連を質問します。
●ここで、この関連を伺います。
2 原発事故で発生した放射性廃棄物の処分と原発再稼働に関する考え方について
(知事)
山形県境から1.4キロメートルの宮城県加美町に、東日本大震災に伴う原発事故で宮城県内に発生した8,000ベクレルを超える指定廃棄物及び稲わら等の農林業系副産物を焼却したことにより8,000ベクレルを超える指定廃棄物 8,700トンを最終処分する候補地が環境省によって検討され、現地で大きな反対運動が起きております。
現地に参り、加美町長にも実状を伺いに参りましたが、県境には分水嶺があり、また、強風が吹くところであり、もしも福島県鮫川村などで起きた事故などが発生したりすれば、風向きによっては、汚染は最上町や尾花沢市など県内隣接地に、さらに、水系を伝って広範囲にも及ぶことが想定されます。
また、県内にも少量でありますが2.7トンの指定廃棄物が保管されており、これは山形県内で処分する計画と伺っております。
こうした廃棄物の処分については、国際的な基本としても排出者責任が大原則であり、国の循環型社会形成推進基本法第11条1項にも、排出者(国、東電)が自らの責任でその排出した廃棄物等について適正に循環的な利用又は処分等をすべきであるとの責務を規定しています。
県内への影響を未然に防ぐためにも、福島県の東電敷地内へ戻すことを求め、国の特別措置法に基づく基本方針の見直しを県として働きかけるべきと思いますが、知事の見解を伺います。
知事
福島第一原発の事故では、ひとたび原発事故が起こればその影響は風評被害を含め、極めて広範囲に、そしてこれからの将来の幾世代にも及ぶということがわかりました。福島第一原発の事故で発生した、放射性物質濃度が1KGあたり8000ベクレルを超える指定廃棄物の処理につきましては、放射性物質汚染対象特別措置法に基づく政府の基本方針において、指定廃棄物が排出された都道府県内で行う事とされております。大量に発生している宮城県など5県につきましては、環境省による最終処分場設置に向けた検討、調整がおこなわれております。そのことに対して、地元の強い反対があり、調整が進んでいない状況にあると言うことを認識をいたしております。宮城県におきましては、栗原市、加美町、大和町の3箇所が候補地となっておりまして、加美町に設置された場合の場所は本県の県境の最も近いところでわずか約2キロメートルほどであります。処分計画では仮焼却炉での稲わらなどの焼却も含まれておりますので、隣接する尾花沢市において、風評による影響を懸念し、議会で反対する旨の意見書が採択されておりまして、私としましても懸念をしているところであります。政府においては候補地をはじめ、こうした不安の声を受け止め、設置場所の検討だけでなく、処分方法の安全性の確保と説明をしっかりとおこない、本県の周辺自治体の理解も得ることが不可欠であります。県としましては、県内の指定廃棄物の処理も含め、政府における検討調整の動向を把握し、関係市町と情報を共有しながら、その考えを十分に踏まえて対応して参りたいと考えております。
草島
ありがとうございました。ぜひ排出者責任が大原則。こういった事を踏まえていただき、毅然とした態度で向かっていただきたいと思います。
委員長
現在、政府は、鹿児島県川内(せんだい)原発をはじめ原発再稼働を着々と進める意向ですが、北欧などで常識であるコアキャッチャーや二重隔壁の整備はなされておらず、核のゴミの問題は未解決のままであります。このまま再稼働することは絶対に許されないことと思います。
山形県は、福島原発、柏崎原発、女川原発のいずれも半径250キロメートル圏の被害想定区域であることを踏まえ、原発再稼働に関する知事の考え方を伺います。
知事
原発の再稼働についてでありますが、私は、我が国は地震国であります。福島第一原発事故の検証をしっかりと行った上で、国民の不安を払拭していくことは重要であり、安全を第一に慎重にも慎重を期す必要があると申し上げて参りました。せんだい原発の再稼働につきましては、原子力規制委員会の審査や地元薩摩川内市と鹿児島県の同意の下、再稼働にむけた準備が進められているわけでありますが、再稼働に慎重な県民や周辺自治体の意見もあると承知をしております。政府においては責任をもって最終判断をおこなうとともに国民に対して十分な説明をつくしていただきたいと考えております。
また、原発の安全性に対する国民の不安が払拭されていない現状と高レベル放射性廃棄物の処分の困難性を踏まえますと、政府においては次世代のためにも再生可能エネルギーの導入を着実に増やしていって、卒原発ということで卒原発に向けたエネルギー政策を進めていただきたいと考えております。
草島
ありがとうございました。卒原発の吉村知事の姿勢、これからもしっかりと貫いていただきたいと思います。これは再稼働についてもですね、やはり私が先ほど懸念した材料ありますので、しっかりとお踏まえいただき、今後もしっかりとした姿勢を保ち続けていただきたいと強く要望いたします。
( 最上小国川における治水対策について
① ダム建設に係る漁業補償に関する考え方について(農林水産部長)
草島
今般、9月28日の総代会の特別決議がなされました。しかしながら、漁業補償の締結について、県の姿勢に重大な問題があると考え、質問します。
漁業法第8条第1項に定められている、漁業協同組合の組合員がもつ権利である漁業行使権について、「水協法・漁業法の解説」によれば、漁業行使権の性格は、物権たる漁業権に基盤を置く権利として物権的性格を有し、物権的請求権を派生できる権利である。すなわち、漁業行使権の権利の目的である漁業利益の実現が妨害され、又は妨害されるおそれがある場合には、妨害者に対し、妨害の排除又はその予防を請求しうる権利である、とあります。「妨害排除請求権」又は「妨害予防請求権」を行使できることが認められているものであります。
また、漁業法143条には、「漁業権または漁業協同組合の組合員の漁業を営む権利を侵害した者は、20万円以下の罰金に処する」とあります。
これを踏まえた上で、質問します。
県は、9月28日の小国川漁協の総代会決議の結果より、漁業権をもつ漁協が同意したとしてダムに着工しようとしています。しかし、漁協総代会の決議以降も、小国川漁協組合員有志の反対する声はとどまらず、違法性をとなえております。
去る10月31日、組合員有志はダム本体着工に全く同意しておらず、このままのダム着工は財産権の侵害行為であることを断言した上で、漁業補償等の算定根拠などの説明を求め、知事に対して協議を要請しています。
10月10日には、水産庁から県に対して、「話合いに応ずべき」と指導助言を行ったと伺っています。しかしながら、11月4日の記者会見で、知事は、「協議の必要なし」と言う旨の発言を行いました。さらに、要請をもって意見を伺ったなどとする担当課長の発言が報道にありました。
その後も、その姿勢が不当だとして、漁協組合員有志は、11月21日に再度同様の要請をおこなっています。
そこで質問します。
① まず、漁業補償の考え方でありますが、県は、臨時総代会の際に組合員から出された「漁業補償の締結については、関係組合員全員の同意が必要ではないか」との質問に対して、その必要はないと指導したようですが、これは、昭和47年9月22日漁政部長通知にある、「埋立事業等に伴う漁業補償契約の締結にあたっては、組合は関係する組合員全員の同意をとって臨むよう指導されたい。」に反しています。関係組合員全員の同意は必要ないと言える法的論拠を伺います。
② 県と漁協の間で締結した「小国川漁協は、漁業補償を自主的に放棄する」という趣旨の覚書は、漁業行使権をもつ組合員の権利を侵害する無効な協定であると考えますが、これに対する見解を伺います。
③ 財産権を侵害するには補償が必ず必要であり、補償なくして侵害することは違法であると考えますが、これに対する見解を伺います。
④ 113万円の補償に関する漁協の意思決定(理事会や総代会での決定・決議)は無権代理行為に過ぎず、財産権を侵害される者の追認がないと無効であると考えますが、これに対する見解を伺います。
以上4点について、農林水産部長に伺います
農林水産部長
漁業補償につきましては、漁業法では公益上の必要があって、行政庁が漁業 経営を制限するような場合をのぞきまして、特に規定することはございません。漁業補償を求める求めないにかかわらず、漁業補償契約は、県と漁業権を有する小国川漁協と私法上の契約でありまして、その結果、今回漁業補償を求めないことを含んだ、覚え書き案が、9月28日の臨時総代会において、特別決議として議決され、これを踏まえ、県と漁業との間で正式に覚え書きの締結にいたったものであります。また、ただいま議員のほうからお話がありましたけれども昭和47年の漁政部長の通達でございますけれども関係する組合員全員の同意をとってのぞむよう指導されたいという風にされておりますけれども、これは海面における第一種共同漁業権についての行政姿勢でありまして、紹介に対する実例というのが、ひとつなっております。
また、漁業補償契約の締結に関連しましては、すべての種類の漁業権につきまして、平成14年の政府答弁がありまして、その中で統一見解としまして、組合運営の円滑な実践のため、組合員の同意を事前にとっておくことがのぞましい。と考えるとされております。これは、水産庁としての行政庁としての技術的助言という位置づけとなってまいります。そういう意味で必ずしも事前の同意が法的に必要であるという風なものには考えていないところであります。
草島
今、おっしゃった、全員の同意をとらなくてもいい、。まず、第五種共同漁業権ですね。河川の漁業権にはならないというのは、水産庁に聞いてきた物と完全に異なっています。水産庁は種別に関係なく適応になるとうかがっておりますが、ちがいますか。
若松農林水産部長
この件に関しましては農林水産部でも7月に確認しまして、昭和47年の法についておっしゃっているのでしょうけれどもこれについては改めて確認なり、勉強させていただきます。ただ後段のほうの先ほど申しました望ましいという風な指導については水産庁に確認しております。
あと次の、先ほどの2点目でございますが、覚え書き締結の法的効力についてでございます。
まず、小国川漁業に付与しております、第五種共同漁業権の設定につきましては、漁業法127条の規定によりまして、ひとつは当該内水面が養殖に適していること、二つ目は、かつ免許をうけたものが増殖をおこなうこと。のこの2つの条件を満たすことが必要となっております。この条件を満たすことができるというものは、組合員ではなく漁協という風なことになってまいります。また、平成14年に閣議決定された政府見解におきまして、漁業法においては第10条、第14条、第8項の規定によりまして、漁業共同漁業権を有する者は組合、または漁業共同組合連合会に限られるというふうにされております。‘これを踏まえますと、最上小国川を漁場区域とする漁業権は、小国川漁協が有しておりまして、漁業法第8条第1項の規定によりまして、組合員は漁業法を有する漁協が定める漁業権行使規則の範囲内において漁業を営む権利を有しているというふうなことになっております。今般の漁業補償にかかります、覚え書きは、県とただいま申し上げましたように漁業権を有する小国川漁協との間で協議を重ねた上で締結に至った物でありまして適切になされたものと考えております。
次に三番目のご質問でありますけれども漁業補償請求権の放棄と財産権の侵害についてでございます。漁業権の性質は、漁業法第23条によりまして、物権とみなし、土地に関する規定を準用するとされております。一般論といたしましては、物権である漁業権を侵害したものは、その侵害について損害賠償責任を負うことになります。具体的な取り扱いはとうしゅかんの話合いで決まるということになってまいります。県と漁協が締結いたしました、覚え書きの第七条、漁業法などの締結にいたしましては、漁業補償を要求しないとされておりますが、覚え書き第6条、漁場環境の担保の規定におきましては、将来に向かっては漁場環境への影響が発生したと考えられる場合、必要な調査、対策及び補償を求めることができるとしておりますので、内部的には適切であると考えております。
4番目もお応えさせていただきますが、
漁業補償にかかる漁協の意志決定につきましては、漁業権を有している小国川漁協が、定款に基づいて臨時総代会の特別決議で意志決定されておりまして、無権代理にはあたらないものと考えております。なお、補償に関する漁協の意志決定の過程で漁協においては、役員、支部長合同会議や各支部の総会などを通しまして総代や組合員に説明周知をはかりながら、適正な手続きのもとで手続きがされたものとしております。
草島
● 今の答えで行くと、漁業行使権というのは、物権つまり財産権には値しないということをのべていらっしゃるのか。と思います。とんでもない間違いだとおもいますよ。先ほど解説を引用しましたけれども、漁業行使権の性格は、物権的性格を有し、物権的請求権を派生できる権利である。そして、漁業行使権の侵害は、親告罪として刑罰の対象ともなりますともあります。これは今の説明でどう解釈するんですか。わたくしは、事前に委任をとるとか、魚種に関係なくおこなわなければいけないことであると水産庁からうかがっております。組合の指導として水産庁が望ましいを全くやらなくてもいいとこれは、改めて皆さんの努力不足というか曲解という感じもします。
● この143条というのは、立法趣旨について、明治43年にですね、証明している文章があるんですけれど、漁業行使権が物権的権利であり財産権であることを証明しているものです。ということがあります。‘
私は補償もなくダム着工するならば、漁業行使権になって、143条の刑罰に処せられる可能性があると考えますがいかがですか。‘
若松農林水産部長
ただいま漁業行使権のお話がありまして、冒頭委員の質問の中で、逐条解説ですか、水協法、漁業法の解説ですか。その中で説明がありました。ただ、その中でご紹介ありましたようにその中におきましては法律上、漁業権のようにまず物権であると規定されていませんが、今おっしゃったように物権的性格を有すると。いうことで派生できる権利であるというふうなことであると、それにこの解説の中におきましては、どういう風なものを想定されるか。と言う風なことで、妨害か妨害される恐れがある場合には排除●●というふうなことで主分を守るというような意味会いの中身のものが罰則とともに規定されると言うことだろうと思います。一つでございます。あともう一つのほうは、同意をすべて求める必要がある。おっしゃられましたけれども、基本的には技術的指導ということでのぞましいということでありますので、それを完全に無視しているということではなくてですね。最終的には先ほどもうしあげましたけれども、漁業権という漁協そのものに帰属するということが明確でありまして、そこがやはり最終的に漁協としての総合的な判断として対処していると理解しているところであります。‘
●草島
今ですね。漁業者で生計を営んでいる方が、権利の侵害を訴えているんですよ。これを無視したまま進めていいのかっていう問題なんです。漁業行使権を侵害するかたちでこの事業を進めていいのか。‘ということです。こうなったら、漁業権の侵害になって143条の刑罰に処せられる可能性は十分にあると思いますよ’今の解釈ですが、財産権は漁協にもあるんですが、漁業行使権者にも認められているんです。だから143条があるのではありませんか。この解釈は水産庁に紹介をしていただきたい。絶対におかしいと思います。
草島
最上小国川ダムの問題について、知事の姿勢について伺います。
原発事故の問題からもうひとつ、是が非でも学ばなくてはならないことがあります。
それは、原子力ムラという存在であります。政治と官僚と業界と学問と報道機関までもが癒着し、原子力安全神話というものを作り出し国民を欺き続けていたことです。原発を推し進めることに都合のいい科学者の見解は優遇され、それに警鐘を鳴らす科学者の見解は排除され続けてきた。電源喪失でメルトダウンする可能性を想定していた科学者も存在したけれども、茅の外におかれており結果として対策に盛り込まれていなかった。こうした、政治や行政がいかに科学を扱うか。という教訓であります。
私は、最上小国川のダム問題について、県知事の姿勢に私は原発安全神話をつくりあげてきたこの構造と同様の病理を感じずにはいられません。
議論は尽くした、50名50回の議論をしてきたからシンポジウムに参加する必要はないと知事は答えてきました。
しかし、今、結局、流水型ダムの環境影響については、県が「影響が少ない」とする根拠としてきた「最上川流域環境保全協議会」の報告に対して「その協議会ではアユそのものに関する調査や検討が全く存在しない。小国川ダムをつくれば下流河川の生息環境は確実に変化すると考えられるし、アユの品質を低下させる可能性は否定できない」といった、アユ研究の国際的な権威である川那部浩哉先生ら4名のアユを専門とする研究者からの意見書。極めて重要な知見が、無視されたままになっております。
更に治水方策についても「ダムによらない治水方策は十分に可能であり、そのほうが、治水安全面でも環境面でも地域振興面でも得策であるとした、元京都大防災研所長である今本博健氏、新潟大大熊孝先生らの河川工学者らが指摘し続けている知見についても完全に排除されたままになっております。
こうした一方の科学を排除して議論させまいとする事は、3.11の教訓に全く学んでいない姿勢であり、最も我々が政治として戒めるべき事であると考えますがいかがですか。知事の見解をうかがいます。
吉村知事
最上小国川流域におきましては、過去にたびたび洪水による被害が発生したことから、昭和62年に最上町から治水対策の要望がなされ平成3年度から治水対策のための調査に着手しました。その後、事業着手に向けて河川整備計画を立案するため、地元説明会や学識経験者、および専門家からなる最上川水系流域委員会などの公開の場で様々な議論がなされてまいりました。私自身は、知事に就任当初、白紙の状態でしたから、いろいろな方からご意見をお聞きするため、小国川漁協や、自然保護団体の方とも直接お会いをいたしました。また、赤倉地区を訪れまして、現地の状況を自分の目で見ました。川底からわき出したお湯に直に手を入れたり、さらに機会をとらえては、地元の声を直接お聞きして県民の安全安心を確保するには、何が一番いいのかを熟慮してまいりました。そして平成22年には、できるだけダムにたよらない治水の政策見解に基づきまして政府が策定した、新たな基準に従い、河川改修のみならず雨水貯留施設や土地利用規制を含む26すべての方策について、最上町、赤倉地区での最適な方策を検討いたしました。その結果、適応可能な方策として絞られた、流水型ダム案、放水路案、河道改修案の4つの案についてコストや実現性、地域社会の影響、環境への影響など7つの評価軸で総合的に評価して流水型ダムに確定したところであります。そののち、流水型ダムについて治水とするときに、関係者のご理解を得るため、昨年は小国川漁協と県とで何回も意見交換をおこないました。また今年にはいりましてからは、漁協の方に加え、最上町長や舟形町長を交えて協議や実務者レベルの話合いを進めてきました。その中で、漁協の方々が一番心配されていた、穴づまりや濁りについて、具体的な対策の提案をおこない、理解を得ることができました。更に漁協の理事会や総代会などにおきましても、丁寧な説明につとめてきたところであります。こうした真摯で丁寧な対話の積み重ねによりまして、今年の10月に流水型ダムによる治水対策と内水面漁業振興の両立にむけた、協定を小国川漁協、最上町、舟形町と締結できたものと考えているところであります。
草島
さきほどちらりとお伝えした環境についてなんですけれども、これが全く無視されていますね。県が穴あきダムなら環境にやさしい、アユに影響がないなどとした根拠について、さきほどの川那部浩哉先生をはじめ魚類生態学者から、最上流域環境保全協議会について、1)調査の目的や方法が吟味されていない 2)限定的な調査データから逸脱した結論が導かれている。3)アユそのものに関する調査や検討が全く存在しない。などの指摘がありました。
「最上川流域環境保全協議会」の会長も、今年5月27日の報告会で「アユそのものへの影響の調査はこれからである」と名言され、私はのけぞりました。
せっかくですので、川那部 浩哉先生をはじめ、実際に益田川ダムなどの調査にあたっている4名の最新の知見の要点を紹介します。
「ピークカット率が高い小国川ダムでは、洪水攪乱規模の減少を通じて、下流河川の生態環境は確実に変化すると考えられる。その結果、ヤマメ・サクラマスの産卵床やアユの生息環境への影響や、鮎の品質を低下させる可能性は否定できない。長期的な観点から経済損失を検討し、事業計画の経済効果の計算に組み入れることが必要である。」
これらは、岩手県のレン滝ダム、外枡沢ダム(そとますざわ)、島根県の益田川ダムなどの調査で得られた知見から明白と考えられる。
また、濁水の問題では島根県の益田川ダムでも10PPM程の濁りが継続することが知られ、他のダムでの調査で3〜6PPMの濁度でアユの漁獲高が1/5になるなどの実例が岩手県でありました。
アユの漁獲量について山形県が調べた日向川(にっこうがわ)でも5PPM程度で影響すると報告がありました。
ダム建設時、濁水処理プラントが設置されますが、その排水の濁水の基準値は25PPMであります。工事期間中長期的に濁水が流れる為アユやサクラマスの生態に大きな影響を与える事は十分に考え得るのであります。
知事、まず、この環境における科学的な知見はこれまで流水型ダムなら「環境に影響は少ない」としてきたこの事業の根底を動かす知見であると思いますが違いますか。
これまで、小国川ほどの清流環境につくられたためしのない、流水型ダムに対する、最新の知見であります。
もし、この川の特性である清流環境が失われる事になったら、知事あなたは責任とれるんですか。‘
吉村知事
これまでもですね。最上小国川漁協と県とで何回も話合いをおこなってきたと思います。そしてその中でやはりアユの施設に関しても緊急的に措置をしなければならないというようなこともお聞きしたわけで、それにしっかりととりくんでいくこととしています。様々なご議論はあるかと思いますけれども、私としましては真摯にそれに対応しながら、流域に住んでいる住民の皆さんの、安心安全を第一に考えたいということ、そしてこれまで何年もかけて様々な議論をしながら、ここまでたどり着いているという経緯があること、そしてこれから先、しっかりとその委員の思いに答え、それはやはり清流を守ってもらいたいということである、そのことであると思いますので、そのことについて全力を尽くしていきたいと思っているところであります。
草島
私が言っているのは、この最新の環境の知見について無視し続けるのですかということです。知事、いかがですか。
知事
今のその最新の知見について無視するということではございません。やはりさまざまな意見を頂戴しながら、そしてそれを参考に、できる限り、参考にしながら、しっかりと将来に向けて反映して取り組んで参りたいと考えております。
委員長 草島委員に申し上げます。質問の意図を変えるようにしてください。同じです。
草島
最新の知見に対して向き合っていないんですよ。それに対して説明責任やはり果たさないといけない。そうしなかったら、このダム事業は進めちゃいけないと思います。
それから、治水の問題いいました。これは以前県の河川改修工事で湯温の低下があり賠償がおこなわれた金山荘事件について、県提出の資料によって温泉湯脈の温度低下と河道改修の時期が完全にずれていて、関連性がないものであることが立証されました。さらに県は「できない」と主張してきた河床掘削などについて、湯脈に影響なく掘削は可能という事が、複数の温泉研究者により立証されています。
以前は住民が木組みでつくり、洪水時には土砂と共に流出していた堰を、県が今つくれば河川構造例違反に成るコンクリート堰にして、土砂をせき止め河床が上がっている。この河床が高い状態では内水氾濫が根本解決できず、ダムがもし上流にできても危険であるということが指摘されております。今、温泉街については、
流域の旅館主からは、「今でさえも護岸が危険なところがあると以前から訴えてきた。でも全く県は対処しない。本当に安全安心を考えているのか。という声があります。
また他の経営者は、「息子」の代に継がすにも、現在のような規模では維持しきれない。河川改修に絡め規模縮小の改修工事ができるならば、それほどうれしいことはない。と言う声があります。
ダムに拠らない河道改修について科学的にはどうにでもできると。そして、河道改修による治水は赤倉温泉再生の絶好の機会である。とそして、こうしたダムによらない治水についてこれまでほどんど議論がおこなわれていなかった。私はこれからの時代を踏まえて、未来を見据えた価値を創造するような公共事業にするべきと考えます。
先ほどの最新の知見によって流水型ダムでも環境に影響を与えるということをご紹介しました。これまでのこの 年間3万人の釣り人が全国から集う。ダムのない小国川の清流というのは、これまで紹介してきたとおり、年間22億円の経済効果をもたらしております。そして釣り人にとっては、ダムのない清流はブランドであり、ダムができた川は価値を完全に失うんです。釣り人や、食通はすぐにウソを見破ります。本来の清流環境や、松原アユの味を失えば、瀬見、赤倉の旅館は更に衰退し、人口減少や地域消滅に更に拍車をかけることになるんではないか。と思います。
国際的な絶滅危惧種のウナギも、国内準絶滅危惧種になった県魚 サクラマスも、その減少の最大の原因は、ダムで川を分断した事にあります。
今、熊本では荒瀬ダムを撤去している現状であり、米国では700以上のダムを撤去し、本来の川の力を取り戻し、漁業を再生させている。これが世界の潮流であります。
私は、平成28年開催予定の「全国豊かな海づくり大会」は森と川から海へとつなぐ 生命(いのち)のリレー」のテーマでありますけれども、森里海連環というのは、川と海を分断するダム、防潮堤というコンクリート文明から、森里海の連環を取り戻し自然と共生する文明への転換こそ必要なのだということだと思います。 私はこの運動で筆頭研究者である田中克先生という方とシンポジュウムでご一緒ました。やはり、この森里海連環をすすめるなら、このダムによってサクラマスの生息域がダムサイトで失われるようなこのダムの事業を進めるべきではない。と思いますが知事のお考えをお伺いします。
委員長 (答弁同じですが求めますが。同じです。ずっと。質問の意図をかえたほうがいいですわ。)
草島
こうした公共事業を進めるに当たって、2つの格言があります。
公共事業の遂行にあたっては、法にかない、理にかない、情にかなうものでなければならない。
そして、真の文明は、山を荒らさず、川を荒らさず、ムラを破らず、人を殺さざるべし。
この2つをもう一度踏まえて検証してみていただきたい。先ほど、漁業法を曲解する姿勢、それから科学に対しては一部の科学を聞いていない。この姿勢、行政のなりふりかまわぬ圧力が垣間見れるそういった姿勢。この姿勢は文言に叶っていないと思います。
私は「ダムで川の力を失ったら、どんなことをやっても漁業振興にならない」この故沼沢勝義 小国川漁協の組合長の言葉、これやっぱりしっかり受け止めて、これからの事業をこの時代を踏まえて再検証する必要があると思います。いかがでしょうか。伺います。
知事
ダムといいますけれども、やはり貯水型と流水型では全然違うと思います。当初は貯水型だったと聞いておりますけれども、やはり自然環境に与える影響の小さいものをとお声をお聞きして、それを受け止めての流水型ダムになったという経緯をお聞きしているものであります。通常時は水の流れをせき止めるわけではなくて、流水型ダムというのは川の底に穴のあいたダムです。通常は自然河川と同じように水は流れますので、一般的なダムに比べて環境に与える影響は著しく小さいと言う風に考えているところです。皆無とは言っておりません。そして、流域に住む方々の安全安心を考え、また、内水面漁業振興とできる限り両立させていく。そしてできる限り清流を守っていくという対策をしっかりと持続しながらとりくんでいきたいと考えているものでございます。
草島
やはり私がいいたいのは環境に対して川那部浩哉先生、これはアユ研究野第一人者であります。その方々から確実に環境に影響がある。とされております。私は、やはり地域の資源として私はしっかりと守らなくてはならないことであると思います。この環境に影響があるという事について無視したままでは、このダムは進めてはならないと思いますので、ぜひ受け止めていただきたいと思います。
山形県議会本会議 12月議会 25年度決算に対して 認定しかねると討論
12月2日から山形県議会 12月議会がはじまりました。
冒頭、11月に審議した平成25年度の決算に対する審議の報告、討論、認定の採否 がおこなわれました。
以下、3分の討論時間が認められた中での討論です。
平成25年度 山形県一般会計決算の一部、決算認定しかねる案件2点のみに対し、反対の立場で討論いたします。
まず、慶応大学先端生命科学研究所 支援事業であります。25年度まで県と鶴岡市あわせて拠出された金額は136億7500万円であります。
今般 第三期3年間の評価のための評価委員会が招集され今後の支援のあり方が協議されました。懸案である年間7億円の補助金額の内訳について、まるで固定費のような扱いのままの評価プロセスに大きな疑問を覚えます。
千葉県においては「かずさDNA研究所」への行政の補助金は序序に減額され自立的運営が促されております。人口減少や合併特例の算定替え時の財源不足を踏まえ、当研究所の今後の持続可能な発展のためにも、民間資金活用等、新しいスキームによる自立的な運営手法を構築する事を提言いたします。
次に、最上小国川ダム建設事業についてであります。25年度は漁協が反対している中でダム周辺工事が強行されております。
今年2月10日に、県と交渉にあたっていた沼沢前組合長が自死されました。昨年末の漁業権更新時に、漁業権を楯にとり、ダム計画の協議に着かせるという強引な県の手法は、違法性も指摘されており、行政の姿勢として断じて許されるものではありません。
▼平成24年9月に提訴されたダム建設差し止め住民訴訟の裁判審議の場やシンポジウムの場などでは
● 県が赤倉地内につくった堰により土砂堆積し河床が上昇し、それが昨今の水害の原因になっていること。
● 「流水型ダムは、建設時から、流域の環境に影響を与え、アユやサクラマスの生態を脅かす事
● 「県提出の資料で以前損害賠償問題になっていた河道改修と温泉への影響は直接関係がないことが解り、温泉に影響なく河道改修は十分に可能であること」などが科学者によって次々と立証され、ダムよりも河道改修のほうが真の治水を叶えるに有効であることが示されています。
こうした新たな知見に対し十分な説明責任を果たさないまま、ダムを前提とした漁業振興策を推し進める県の姿勢は、愚行そのものというしかありません。
以上、ダムに依らない治水事業への政策転換を強く求め、反対討論といたします。
小国川を守る闘いはこれからだ!ー会報への随筆
ダムで本来の力を失った最上小国川に、つり人は来ない
小国川を守る闘いはこれからだ!
最上小国川の清流を守る会 共同代表 山形県議会議員 草 島 進 一
故沼沢組合長の自死事件から未だ半年。
6月28日の臨時総代会では過半数の漁民はダムやむなしとしたが、特別決議で2/3をしめる得票には及ばなかった。しかし、山形県農林水産部の水産課はダム賛成の組合理事らとともに「ダムのない川以上の清流」といった漁業振興策を掲げ、ダム容認ならば懸案の中間育成施設の井戸の整備をやってあげる。ダムを拒否するならばそれはやらない」といった事を流布しながら漁協総代を懐柔し続けていったようだった。私は会のメンバーとともに、9月のはじめに発表された9月28日の臨時総代会に向けて、なんとしても1/3を死守したいという思いで県に対して申し入れをおこない、流域にちらしを配布し、車にスピーカーをつけて街宣活動もおこなった。
総代の中には案の定「漁協幹部にダムを容認しなかったら死活問題の井戸の整備をやってもらえず、漁協はつぶれる」と諭され、「私は反対だったけれど漁協をつぶすわけにはいかない」と賛成にまわった方がいると報告をうけた。
そこで9月県議会に計上されたアユ中間育成施設(井戸を含む)が漁協のダム容認と関係性があるのか、知事与党の県議会議員にはたらきかけ、9月22日、県から今般県議会に上程されているアユ育成施設の井戸整備に「条件はついていない」との見解を引き出した。
また、ダム建設に必要な「漁業補償契約の締結」について、関係組合員全員の同意は、「第五種の内水面漁業には必要ない」という県の見解が新聞に掲載された事を受け、9月17日、水産庁に確認に赴いた。水産庁の見解は「漁業種別に関係なく、影響を受けうる関係組合員全員の同意をとることがのぞましい」と指導助言をしているとのことだった。私は9月18日に記者会見を開き、それを記者に伝え、一部報道された。この趣旨は9月19日にダムに反対する漁協組合員有志から漁協に向けて提出された「穴あきダム問題に関する公開質問状」に反映された。すると公開質問状に対して漁協から9月24日「当組合は定款に基づき、また、漁業法及び水産業協同組合法に基づいて適正かつ適格に業務を行っております。ご指摘されるような事実は一切ございません」との回答がきた。それに対して9月25日、渡辺、三井、下山三名が共同代表を務める「ダムに拠らない治水と漁業振興を求める小国川漁協組合員の会」は抗議声明を提出した。
それは以下のようなものである。
9月28日の総代会前日、熊本一規明治学院大学を迎え、清流を守る会のメンバーと漁協、総代の渡辺さんらとともに戦略会議をおこなった。
9月28日の決議後「ダムに拠らない治水と漁業振興を求める小国川漁協組合員の会」は、「決議1,2ともに漁民の持つ漁業権などを補償なしに侵害することを決める違法な決議であり無効である」「ダムにより権利を侵害されるので補償を受ける権利があるが、県から説明も同意も求められていない」、ということで、漁協に補償を委任しない、と宣言した。
10月8日、漁協、県、舟形町、最上町はダムを建設し、漁業振興策を図る協定を締結、ダム建設に伴う環境保全についての覚え書きも件と漁協で交わした。その際、高橋組合長は「本体着工容認は、漁協が一体となって考えた結果」と語ると同時に「前組合長に約束を果たしたぞと言いたい」などと会見の席で話した。これにはダム反対の漁協組合員が皆で激怒し、10月10日付けで抗議声明を組合に提出した。
10月10日に下山久伍共同代表、熊本一規明治学院大学教授とともに3名で水産庁を訪れ、以下の三点の見解について部長を含む5名の担当官と協議した。
1.9月28日小国川漁協総代会における1号議案決議は、権限のない者が勝手に声をあげたに過ぎず、小国川ダムにより損害を被る漁民の追認を得ない限り、「無権代理行為」にすぎない。当決議に基づいてダム建設に着工すれば、漁業行使権を侵害する違法な工事になる。
2.9月28日小国川漁協総代会における2号議案決議は、入会集団の決定を踏まえての決議でなく、入会集団の同意、及び漁協からの入会集団ヘの補償がなければ法的効力を生じない。
3.「禁漁区域」の設定に伴う漁業補償を県が支払うのは違法であり、漁協が支払わなければならない。小国川漁協の「補償は不要」は、補償を支払わなければならない者が「補償は不要」と言っていることになる。
その場で下山氏は、アユ釣りでのおとり鮎の販売や、釣りガイド等で生計を立てていること、ダム建設で河川環境への影響が懸念される事、それによって釣り客の動向に影響する事等を説明した。二時間にわたる協議でそこに同席した方々の間では上記三項目は概ね同意をいただいた。協議中で感じたのは、水産庁の中には「総有説」が担保されているということである。
<*総有説=総有説は「共同漁業権は入会権と同性質の入会権的権利であり、入会集団が総有(一箇の団体が所有の主体であると同時にその構成員が構成員たる資格において共同に 所有の主体であるような共同所有)する権利である> 社員権説は 「共同漁業権は漁協の持つ権利で、組合員が共同漁業を営めるのは、漁協の構成員(社員)としての 社員権に基づく」とする。
これらを受け、議事録を書き起こし、県への申し入れと会見内容を作成しつつ同意のポイントを探った結果、以下の公式見解となった。水産庁は当日、10月10日に山形県に対し指導・助言をおこなった。
○ 組合自らが補償交渉の当事者になるときにおいても、組合の運営が円滑に実施されるためには、漁業補償契約の締結及び補償金の配分に当たっては、組合は当該協同漁業権の変更等により影響をうけることになる組合員の同意をとっておくことが望ましい。2号議案も同様。
○ 財産権の侵害だといっておられる方がいらっしゃるなら、本日のやりとりを県に伝えるので、具体的に県と話合うべき。
というものである。このことは、読売新聞、朝日新聞に掲載された。
しかし県は、「プロセスが重要な補償交渉の協議の必要性」をぼやかし、通常業務の聞き取りでいいなどと矮小化している。
一年前、沼沢組合長が漁業権の剥奪を示唆され、無理矢理つかされた県との治水協議の場は「ダムありきの協議の場」であり「ダムに拠らない治水の協議がようやくできる」と考えていた沼沢さんの想いは無視され、無念のまま自死に至った。その後の協議はダム推進の組合長や漁協幹部がイニシアチブをとり、ダム容認とセットの漁業振興という県の思惑をそのままに受け入れた。更に以前から反対者に行政から圧力がかかるような町政の中、今般総代会の「記名投票」という手法が2/3の総代がダム容認に動くことになった。
しかし、漁業を営まない組合委員がいくら多数欠で決議したとしても、漁業で生計をたてている方々(関係組合員・関係漁民)の漁業行使権や補償、その交渉のプロセスもなく奪うことはできない。水産庁は山形県や漁協のプロセスの問題を認識したようである。
私は、これからの関係組合員・漁民と県との補償交渉の場を、故沼沢組合長が求め続けた真実の協議の場にしなければならないと考えている。本来は漁協がイニシアチブをとるはずだった協議の場を懐柔し、変容させ、清流の守り人である漁協組合員、漁民の権利を奪い、清流を破壊しようとしている県の暴挙を、なんとしても止めたい。
実際に釣りやアユで生計を営む、または生計の足しにしている方々に対して、改めて結集を呼びかけたい。
10月20日、岐阜県では長良川の清流とアユを世界農業遺産として申請し国内候補になったとのニュースがあった。ダム先進国米国がダム撤去に方向転換した事を伝えるドキュメンタリー映画「ダムネーション」も公開がはじまる。
年間9千人も人口減少する山形県で最も大事にしなければならないことは、地域が本来持っている価値を失わないことだ。人がつくることのできない自然、豊かで多様な生物によって支えられた人々の営みが有ることこそ、山形の豊かさにつながっている。生物多様性の観点では淡水環境の消滅が国際的にも危惧され、森・川・海の連環を取り戻すダム撤去や河川を自然にもどす公共事業がもう十数年も前から世界の潮流になっている。
赤倉温泉街の治水対策は、ダムの無い治水とともに、温泉街に手をいれたほうが未来への発展と持続可能な地域づくりにつながることは明白だ。
県が進めようとしている穴あきダムが小国川のような清流環境につくられるためしはこれまでにない。
私は山形の持続可能な発展のためにもダムによらない治水をなんとしても叶えたいと思うし、12月開催の山形県議会で改めて、以上の趣旨に添った質問を行なう予定だ。
今や希少な存在となった内水面漁業の漁業者を守り、この川のいのちを守りたい。
がんばりましょう。
小国川問題 最上小国川流域環境保全協議会 会長へアユ研究者が意見書提出
本日8月1日、最上小国川の清流を守る会 共同代表 高桑順一氏、NACS-J自然保護協会 評議員 出羽三山を守る会 佐久間憲章氏 山形県議 草島 の3名で、最上小国川保全協議会の調査内容について、アユ研究者による意見書を最上小国川流域環境保全協議会 会長である原慶明氏に午前10時にメール提出。また午後3時に山形県県土整備部 河川課へ提出しました。その後、県庁記者室で記者会見をおこないました。
提出したのは以下のものです。
アユ研究55年の日本の第一人者、川那部浩哉先生を筆頭に、実際に流水型ダムの先例である益田川ダムの影響調査をしている竹門康弘先生、5月のシンポジウムで益田川程度の低濁度の濁りで実際の河川で漁獲高が大幅に減少した事例を発表してくださった朝日田 卓先生、「ここまでわかった鮎の本」http://hito-ayu.net/index.html などで知られる高橋勇夫先生が、1ヶ月半を費やして調査データを検証して協議していただいた結論です。
これは絶対に無視できない 「科学的な論証」であります。
最上小国川流域環境保全協議会
会長 原 慶明 殿
「第12回最上小国川流域環境保全協議会資料(2013年11月21日 山形県)」のうち、
アユを中心とする調査内容に関する意見書 (要約版)
川那部 浩哉(京都大学名誉教授)
竹門 康弘(京都大学防災研究所准教授)
朝日田 卓(北里大学海洋生命科学部教授)
高橋 勇夫(たかはし河川生物調査事務所代表)
1. 意見書提出のいきさつ
2014年5月27日、最上小国川流域環境保全協議会会長原慶明さんは、山形県議草島進一さんの質問に対し、「最上小国川環境影響調査委員会の検討内容に欠けているファクターは何なのかを教えて欲しい」と述べた。草島さんは、「第12回 最上小国川流域環境保全協議会 資料」(以下、資料と呼ぶ)を6月12日に上記4名に送り、とくにそのうちの47~92ページについて、「意見が欲しい」と要請した。
この意見書は、この依頼を受けた4名が当該資料を検討し、それに対する意見を整理したものの要約版である。
2. 第12回 最上小国川流域環境保全協議会資料の問題点
1) 調査の目的や方法が吟味されていない
個々の調査項目について具体的な目的がどこにあるのか明白ではなく、また想定される目的に対して調査方法が相応しいかどうかがほとんど吟味されていないと判断せざるを得ない。
具体例 「水産的重要種」であるアユの餌であるとする付着藻類や細菌については、種組成・細胞数・乾燥重量・クロロフィルa量・強熱減量などをばらばらに調べたのみで、同時に調査したアユの「はみあと率」との関連性がまったく検討されていない。しかも細胞数以外の項目はダムの影響を検討する材料としては一切使われていない。また、「堆積砂の挙動調査」や「洪水時の剥離」に関する検討過程においても、河床型や礫径によって相違する可能性が考慮されていない。
2) 限定的な調査データから逸脱した結論が導かれている
調査そのものは限定的な条件下で行われているにもかかわらず、そのことを無視して、結論が導き出されている。
具体例 付着藻類は一貫して拳大の石礫から採取されているが、このような小さな石は小規模な洪水でも藻類の剥離が起きやすい。したがって、付着藻類調査は「藻類が剥離しやすい状況にあった小さめの石礫を選択的に採取して、その剥離状況を調べた」ことになる。このような方法に基づいて行われた付着藻類調査から言えることは限定的であり、この分析結果から、「50m3/s 程度の流量が発生すると、ほとんどの付着藻類が剥離する」という考察を導き出すことは非科学的である。さらに、それを根拠とした「付着藻類の剥離は、ダムあり・なしとも同様に生じると考えられる」という結論も導き出すことはできない。
3) 各調査に結びつきがない
調査がそれぞれ「ばらばら」に行われているうえに、それらを複合的・総体的に結びつけようとせず、言わば「単純な足し算」によって「考察」され、「結論」なるものが導かれている。
具体例 「各調査地点の河床状態はアユ漁場として良好な状態にあると推察される」とまとめられているが、アユの多さを表現する「はみあと率」は地点によってかなりの差がある。アユの漁場として評価するのであれば、河床状態調査、はみあと率ならびに付着藻類調査の時期や地点を合わせておくことが不可欠であるが、それすら行われていない。
4) アユそのものに関する調査や検討が全く存在しない
アユに対する影響を検討するものであるにもかかわらず、アユそのものに関する調査・検討は何一つ行われていない。仮に「餌環境への影響は軽微である」ということが事実であるとしても、アユの棲息が充分に成立するためには、他のさまざまな環境条件が必須であるが、それらの検討が全くされていない。アユの実際の分布からは「アユ漁場として良好な状態にある」というような単純な結論を導くことはできない。
3. 最上小国川流域環境保全協議会への提言(今後の調査に向けて)
小国川で計画されている流水型ダムはピークカット率が高いため、洪水時の堪水域の上流部に堆積する礫経の大きな土砂が下流へ供給されにくくなり、洪水の減水時や小出水時には堤体近くに堆積する砂泥のみが流出すると予測される。このため、①ダム下流域の河床更新度の低下と糸状藻類等の繁茂、②ダム下流へのシルトの流出による濁水発生と河床環境の悪化、③ダム下流へ供給される有機物組成の変化などを通じて、アユの餌環境やサクラマスの産卵環境の悪化が懸念される(サクラマスの産卵場が、ダム建設予定地〜下流1.5kmの範囲で発見されている)。これらは、岩手県のレン滝ダム、外枡沢ダム、島根県の益田川ダムなどの調査で得られている知見から明白と考えられる。
上記のようなピークカット率の高い流水型ダムによって高い確率で起こると予想される影響に関しては、これまで全く調査されておらず、全く検討もされていない。したがって、今後これらの項目について詳細な調査を行い、影響をつぶさに検討することが必須である。
一般に、「ある事業等が環境にいかなる影響を及ぼすか、またその程度はどれほどか」を考えることは、それに疑問を持ちあるいは反対する人びとに対して、科学的な資料とそれに基づく具体的な判断とを提示し、その論議に供するための第一歩である。今回の「調査」と「結論」は、残念ながらそれに全く値しない。今後、最上小国川流域環境保全協議会の「資料」とそれに基づく「結論」がそれに堪えうるものとなることを希望し、そのことを強く要請する。
以上
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詳細版
最上小国川流域環境保全協議会
会長 原 慶明 殿
「第12回最上小国川流域環境保全協議会資料(2013年11月21日 山形県)」のうち、
アユを中心とする調査内容に関する意見書 (詳細版)
川那部 浩哉(京都大学名誉教授)
竹門 康弘(京都大学防災研究所准教授)
朝日田 卓(北里大学海洋生命科学部教授)
高橋 勇夫(たかはし河川生物調査事務所代表)
1. 意見書提出のいきさつ
2014年5月27日、最上小国川流域環境保全協議会会長である原慶明さん(山形大学名誉教授)は「アユの餌環境 流水ダム」という演題で公開講演を行った。講演後における草島進一さん(山形県議会議員)との質疑の中で、原会長は「最上小国川環境影響調査委員会が出した調査において、欠けているファクターは何なのかを教えて欲しい」と述べた*1。そのために草島さんは、「第12回 最上小国川流域環境保全協議会 資料」*2(以下、資料と呼ぶ)を6月12日に上記4名に送り、とくにそのうちの47~92ページについて、「意見が欲しい」と要請された。
この意見書は、草島さんから依頼を受けた4名が当該資料を検討し、それに対する意見を整理したものである。
2. 第12回 最上小国川流域環境保全協議会資料の内容に関して
2-1) 付着藻類調査(資料47-52p)に関して
この調査の「目的」がそもそも何なのかが、これでは判然としない。また「調査方法」においても、「早瀬」・「平瀬」とのみあるだけで、その具体的場所も状況も記載されていない。しかしながら、「付着藻類」の質や量がごく狭い場所でも互いに異なることは、広く知られている事実である。また、1箇所において何個の標本を採取したかも記載されていない。疑って言えば、各1標本であった可能性が高く、それでは生態的調査としては、ほとんど意味のないことも周知の事実である。また、2013年は僅かに1回の調査であり、他の年についても調査日は各年2~5回程度で、しかもその日は「任意」に選ばれているように見える。アユの棲息環境の状態を、後に書かれているようにダムなどとの関係において把握したいのであれば、少なくとも増水・洪水・渇水とその継続時間などを考慮して、その都度連続して調査を行い、その結果を明らかにする必要がある。
さらに細かいことに言及すれば、例えば52pの表において、その時期の各最多優占種の比率のみを示す意味は明らかではない。また「全細胞数に対する優占種の割合」との文言からすれば、これは細胞数における百分率と想像されるが、生物量などでの検討も必要であろう。さらに、「6月~9月頃は、藍藻類のHomoeothrix属藻類が優占し、それ以降は珪藻が優占する傾向がある」と結論づけているが、これは表からは素直には導きがたい。アユの摂食によって珪藻類の比率が減少し、藍細菌類の比率が増加することは、近年知られるようになっているから、そのようなことを何らかの意味で導きたいのであれば、藍細菌と珪藻との比率をむしろ示すべきであったろう。また「はみあと率」なるものも、当該石の表面のはみあとの数なども記されておらず、この場合においても、科学的調査における方法記載にはなっていない。
この調査が、最終的にはアユへの影響を判断するために行われたものであれば、アユの多さの目安となる「はみあと率」とアユの主餌料である付着藻類の各分析項目との関連性がまったく検討されていないのはなぜか。そのような基本的な分析さえ行わず、最終的な結論を「アユの採餌環境に対するダムの影響はほとんどないものと考えられる(92p)」とすることは、危険このうえもないことである。
2−2) 河床状態調査(資料53-57p)に関して
調査は2013年11月の1回だけのようで、また場所の詳しい記載もなく、それらの問題点は先に記したものと同様である。ついでに記せば、この場所は先の藻類調査の場所とも異なっていて、互いに「独立」に選ばれたものと受け取れる。方法も明白には書かれていないが、文章と図から判読してみると、底に重なっている石のうちいちばん表面のものだけについて、はまり石・浮き石を判別し、その下にあるものについては考慮していないように受け取れる。しかし、出水・洪水の折りはもちろんのこと平水時においても、底の石や砂礫が動くのは周知の事実であり、それは石の重なり状態を含め底質の状態によって大いに異なるものだ。アユの棲息環境として、「付着藻類」の状況を把握したいのであれば、このような配慮のもとでの調査が必須である。なお、「上流域2地点では、(中略)下流域(3地点か?)と比較して石の大きさは小さい傾向が見られた」とあるのは、資料53pの地図を瞥見する限り、その両地域の流程地形からみて当然と推測される。ここでも先に指摘したように、「地点」の中の個々の調査点の詳しい記載がなければ意味のないことは、ここからも明らかである。
「各調査地点の河床状態はアユ漁場として良好な状態にあると推察される」とまとめられているが(資料p57)、アユの多さを表現する「はみあと率」は地点によってかなりの差が生じており、アユの実際の分布からは「アユ漁場として良好な状態にある」というような単純な結論は導けない。基本的なことであるが、アユの漁場として評価するのであれば、河床状態調査とはみあと率や付着藻類関連の調査は時期や地点を合わせておくべきで、そうすれば、アユの生息環境をもう少し体系的に評価できたと考えられる。このように、本調査はきわめて断片的で、これが意図的でないとすれば、最上小国川流域環境保全協議会においては調査計画そのものが十分に審議されてこなかったと判断されてもしかたがないと考えられる。
2−3) 「付着藻類の影響検討について(資料58-92p)」に関して
2-3−1) 剥離(資料60-63p)に関して
資料では、ダムサイト地点での流量が55・54・24・20・18・8m3/ secであった6洪水の後に総細胞数などを調査し、洪水以前のそれと比較した結果が示され、「50m3/s程度で、末沢川合流点から下白川橋まで、付着藻類層細胞数が3%以下となっていた」としている。そして、「ダム地点で50m3/s程度の流量が発生すると、ほとんどの付着藻類が剥離する」とまとめられている(資料61p)。さらに、「影響評価」に関する結論は、「3年に1回程度以上の洪水ではダムあり・なしに係わらず、付着藻類はほとんど剥離すると考えられる。2年に1回程度以下の洪水では、ダムあり・なしで流量変化が小さいため、付着藻類はダムなしの場合と同様の状況を維持すると考えられる。 → 付着藻類の剥離は、ダムあり・なしとも同様に生じると考えられる」となっている。
洪水前後の総細胞数の表(資料60p)では、確かに50m3/ sec以上の流量を示した2回の洪水においては、4地点ともに0-3%の残存率になっている。それに対して例えば下白川橋での残存率は、20-25m3/ secの流量の場合でも3-9%に過ぎず、8m3/ secの流量の場合でも29-57%の残存率となっている。さらに言えば、残存率「51%~」としてまとめられている「総細胞数残存率」の実際の数字を表から拾ってみると、871%,337%,257%,215%,219%,59%,57%と非常に幅広く、これが意味するところを考えれば、ここで言う「残存率」なるものはほとんど、いや全く意味が無いものである。とにかく、「付着藻類の剥離は、ダムあり・なしとも同様に生じると考えられる(資料63p)」という結論は、これらの調査結果からは全く出てこないと判定できる。
付着藻類の採取は、調査初期から一貫して「拳大の石礫にコドラートを当てて、ブラシではぎ取る」というやり方で行われている(調査状況写真を見ると実際には採取した石礫は拳大~径20cm程度であり、実のところはあまり一貫性もない)。藻類の剥離は礫の大きさ(洪水による動き易さ)に大きく影響を受け、一般的にいえば、小さい礫ほど藻類が剥離しやすい傾向にある。小国川の河床材料のほぼすべてが「拳大の石礫」構成されているわけではもちろんなく、他の調査状況写真を見ると小国川の河床には採取した石礫よりも大きな石はごく普通に観察されるし、河床材料調査(資料53-57p)においても、「径25cm以上が多く、アユの生息に好適」と結論づけられている。したがって、付着藻類調査は「藻類が剥離しやすい状況にあった小さめの石礫を選択的に採取して、その剥離状況を調べた」と受け取られても、弁明することの困難な状態になっている。したがって、このような方法に基づいて行われた付着藻類調査から言えることはほとんどなく、この分析結果から、「50m3/s 程度の流量が発生すると、ほとんどの付着藻類が剥離する」という考察(資料61p)は、完全に非科学的である。さらに、それを根拠とした「付着藻類の剥離は、ダムあり・なしとも同様に生じると考えられる(資料63p)」という結論も導き出すことはできない。
2-3−2) 生育基盤(資料64-87p)」に関して
①洪水時の河床材料の変化
資料では、洪水時の河床材料の変化を洪水の大きさ別に予測し、「付着藻類の生育に対する影響は小さい(資料87p)」ことの根拠としているが、検討に用いられたデータはシミュレーション等により得られたもので、他の流水型ダムにおける調査結果に基づくものではない。もしシミュレーションや実験結果を用いるならば、その条件設定が妥当なものであることを科学的に証明しなければならない。さらに「影響が少ない」とするなら、その程度がどれくらいなのかを予想される魚類資源の減少率等の具体的数値で示す必要がある。
資料では、洪水時の河床材料の変化を洪水の大きさ別に予測し、いずれのケースでも短期間で洪水前の状態に戻る、または変化がないとされている。しかし、同じ流水型ダムである益田川ダム(2005年竣工)では径100mm以上の礫がダム上流(貯水池内)にすでに堆積しており、定期的に礫をダム下流へ人為的に移動することが検討されている(2014年5月26日 京都大学防災研究所角哲也教授 最上町での講演*3)。このような既設の流水型ダムにおける土砂の堆積状況から考えると、このシミュレーションの妥当性には大きな疑問がある。
②平水時における堆積砂の挙動調査に関して
平水時の砂の挙動に関する現地実験の場所として選択された「平瀬」とは通常、「浮き石」が少なく、表面の比較的平らな「はまり石」が主になっている場所を言う。そのような場所を「堰き止め」、一様な「4号珪砂」だけを沈下させての測定は、著しく流下し易い条件での実験結果に過ぎず、この川の通常状態を再現したものとは言えない。野外での充分な観察に基づいて実験を行わなければならないことは、生態学のごく初歩の常識であるが、それは全く満足されていない。
砂の挙動に関する現地実験では、平瀬が「アユの主な採餌場」とされ、そこでの野外実験の結果から、「仮に砂が過剰に供給されたとしても、アユが採餌する面はほとんど被覆されず、日常的な流量で流下することから、付着藻類の生育に対する影響は小さい」としている(資料87p)。しかし、小国川において平瀬がアユの主な採餌場となっているということの根拠は示されていない。一般的にアユの生息場所は瀬だけでなくトロ、淵まで様々な河床型に及び、それぞれの生息場で摂餌(採餌)行動が行われている。小国川でも実際にそれぞれの河床型がなわばりアユ(一定の場所に定着した個体)を釣る友釣りの漁場となっている。環境影響調査委員会が行った実験は比較的流速の速い(影響の出にくい)平瀬のみで行われており(資料70-83p)、なぜ、より影響が強く出ると予想される淵やトロでの実験も行なったうえで影響を判定しなかったのか理由が分からない(平瀬を選んだ根拠はアユの主な採餌場ということらしいが、それは事実と反する)し、現在の検討結果は正しいものかどうかさえ疑わしい。また、この実験の組み方では「影響が出ないようにセットされた」と言われても致し方ないのではないだろうか。
③「河床形状」について
方法も結果も、少なくともこの「資料」内ではほとんど示されておらず、論評することもできない。しかしながら、87pの影響評価では「ダムあり・なしでの河床形状の差異は小さいと考えられる ⇒ 「瀬や淵の減少・拡大等の河床形状の変化による影響は小さい」と考えられる」となっている。しかし、これを導いた「根拠」を見つけることは、まことに残念ながらできなかった。
そもそもダム堤体建設予定地から下流の流程は、河床材料変化の数値計算で条件としたような一様の河床ではなく、各所に岩盤が露出した河床であることから、環境変化の実態を把握するにはほとんど役に立たないと考えられる。さらに、小国川で計画されているダムは、既存の流水型ダムに比べてピークカット率(洪水調節率)が高いことから、洪水時の堪水域の上流部に堆積する礫経の大きな土砂が下流へ供給されにくくなり、洪水の減水時や小出水時には堤体近くに堆積する砂泥だけが流出することが予測される。したがって、ダム下流の河床形状への影響を評価するためには、このような仮説に基づいて、現場の河床地形の境界条件を加味した予測をやり直す必要がある。
2-3−3) 結論(資料92p)」に関して
ダムの影響は、「①付着藻類へのダムの影響はほとんどないものと考えられる。②「特に、アユが主に採餌する平瀬の巨礫上面の付着藻類に対する影響は小さく、アユの採餌環境に対するダムの影響はほとんどないものと考えられる。」と結論づけられた
繰り返しになるがこの結論は、それまでに提示された結果の分析からは、全く導き出せないものと考えられ、これへ導く「理屈」もまた、ほとんど示されていない。
2-3−4) 資料に書かれている内容に対する一般的意見
「付着藻類調査」や「河床状態調査」は、その場所や方法が明白に記載されておらず、また調査結果もその信頼性が確認できない状況にあり、いや、個々の調査に関する具体的な目的がどこにあるのかも明白でなく、またその目的を調査するに相応しいかどうかすら、ほとんど吟味されていないと、残念ながら判断せざるを得ない。すなわち、30年以上前にコンサルタント会社が、全くの<ルーティン=ワーク>としてやり、全面的な批判にさらされて撤回した「調査」を、彷彿とさせるものと言って良いのではあるまいか。
他の「重要な生きもの」の扱いについてはここでは言及しないが、少なくとも「水産的重要種」であるとして取り扱ったかに思われるアユについても、その餌であるとする付着藻類や細菌についての、種組成・細胞数・乾燥重量・クロロフィルa量・強熱減量などだけで、しかも後の3項目は考察材料としては一切使われていない。
また、「河床状態調査」なるものは、「アユの漁場として良好であるかを河川環境の面から評価するための基礎資料」とされているが、アユが棲息・利用する「河床型」をすべて調べているわけでもない。さらに、洪水による「剥離」や「堆積砂の挙動調査」においても、「河床型」により相違する可能性すら考慮されておらず、また先に記したように、いかなる目的に対しての実験なのか、少なくとも「明白」ではない。
ダムの設置によって、それより下流の河床形態が大きく変化することは、すでに良く知られている。「流水型ダム」であっても、大きい岩や石はダムで一旦貯留されるものであり、もしもそれすらがダムを「通過」するとすれば、治水のためのダムを作る「意義」や「理由」はないことになる。果たしてしからば、砂礫の一部は通過してその下流部に堆積するにしても、大型の岩や石は上流からは補給されず、ダムの下流部においては、流出だけが生じることは、ほとんどすべてのダムで現実に見られている現象である。それが、アユの餌となる「付着藻類」に大きい影響を及ぼさないものかどうか、少し想像するだけでも明白である。
ついでに付け加えれば、例えば、出水・洪水前後の「付着藻類」の調査、「河床状態」の調査、さらには「剥離」・「生育基盤」・「濁り」の解析などは、他の地域にある既存の「流水型ダム」の上・下流において行うことによってこそ、ある程度意味のあるものとなる。そのような河川における調査が今回の「資料」において皆無であることは、極めて不思議であり、かつ異例のことと考えられる。このような既存の河川における様態は、もちろんそのままでこの小国川に当てはめられるものではないが、それを参考にした考察の無いのは、極めて不自然なことである。
2-3−5) この「資料」のさらに致命的な欠陥
この調査は、すでに各個所で指摘してきたように、ほとんどすべての内容において大きい問題があり、またその「結論」なるものは、これらの「調査結果」から「科学的に導かれた」ものとは到底言えない。
しかし、それにも増してこれが致命的と判断できる理由は、調査がそれぞれ「ばらばら」に行われているうえに、それらを複合的・総体的に結びつけようとせず、言わば「単純な足し算」によって作られているところにある。いわゆる「環境問題」が、個々の科学分野から科学哲学に至るまでの広い範囲に深刻な反省をもたらしてきたことは、すでに周知の事実であるが、この「資料」の中にこのような視点を見つけることは出来なかった。
さらに不思議極まりないのは、アユの棲息に及ぼす影響調査として、アユの通常時の餌である石面付着生藻類・細菌の問題だけが採り上げられ、アユそのものに関する調査・検討が全く行われていないことである。仮に、アユの餌に関して「影響が少ない」としても、それだけで「アユに関して問題がない」、あるいは「軽微である」と判断することは、単純な理屈のうえから言っても、あり得ないことである。
また当面の「環境改変」のことで考えるならば、その結果として、どのような影響がいわゆる「生態系」に生じるかについては、考えられるあらゆることを考察し、しかも「影響がある」と想定してみることが大切である。これは周知の通り、近代統計学に言う「帰無仮説」の原理でもある。
極めて単純な事例を挙げれば、ダムにおける「魚道」の問題がある。ほぼ40年ぐらい前まで、いや、あるいは30年前であってもまだ、「魚道の遡上率」とは、魚道のもっとも下の「ます」に入った魚が、いちばん上の「ます」に入る比率を示すものと、誤って理解されていた。しかしながら、その値が仮に100%に近いものであっても、下流から遡上してきた魚が、その魚道のいちばん下の「ます」を発見する比率とそれを捜すのに要する時間の問題、魚道を通過した後にそのダムの湛水域を通過するあいだに起きる障害、例えばどれほどの長時間を要するかの問題、などなどを考慮する必要があり、魚道遡上の「達成率」とは、魚道の無い状態の場合と比較しなければ正しいものにはならない。また、魚道の周辺には魚食性の鳥類などが集って来るのが通常で、魚道の遡上に「辛苦している」魚を捕食する量がかなり大きいことは周知の事実であり、また湛水域における摂食あるいは捕食の増減の問題も、計算に入れなければならない。こうなると、魚道の達成率は、かなりの程度に低いものにならざるを得ないのであり、そのことは今ではかなり広く知られているところである。
今回の小国川「ダム問題」に関係して一つだけ触れるならば、その「流水型ダム」の「穴」の部分は、何回かの出水ないし洪水によって、どのような状態になると、この「資料」の作成者は予測したのであろうか。大型の岩・石のほか材などの蓄積は、少なくとも「ある程度」は起こるに相違ない。それをもし「人為的に取り除く」とするならば、その方法等についての「具体的提案」が少なくともなされ、またそれによる効果が慎重に検討されなければならない。また、それらの物体の蓄積状態において、アユなどの魚はその場所を自由に、すなわちこのダムの存在しない状態と同様に、遡上・降下できるかどうか、これらは考察の対象にしなければならない筈である。両側回遊魚以外の「純淡水魚」もまた、それぞれの生活史に応じて、川を遡上・降下することは、これまた今や周知の事実であるから、アユなどだけでなくそれらの魚に対する影響も、同じく考察の対象にする必要がある。
そもそも、まだ人智には限りがあり、あらゆる可能性を考えようとしても、多くの場合考慮の対象に拾い上げることの出来ない影響は、質量ともに極めて大きいものである。とくに「環境改変」問題においては、従来のほとんど全ての事例において、事前予測を越えた問題が結果として生じてしまっていることを、充分に認識しなければならない。
その点では、「影響は小さいものと考えられる」とか、「影響はほとんどないものと考えられる」などと記すことは、重大な誤りになる可能性がたいへん大きく、いや、それ自体が重大な誤りであり、また事後になって、「この程度の影響は<小さいと>と言った範囲である」とか「<ほとんどない>の範囲である」とかと、「責任回避」の重大な要因になってしまったのが、現在までの一般的な「姿」であり、また今後もその可能性が極めて高い。
したがって「生態系」ないし環境への影響評価は、ありとあらゆる「想定される事象」を複合的・総体的に考えたうえで、せめて「いくら大きく見積もっても、xx程度である」というように、結論づけなければならない。「想定外」などとの「ことば」を今後は使うことのないよう、特に気をつける必要がある。
3. 最上小国川流域環境保全協議会への提言(今後の調査に向けて)
最上小国川流域環境保全協議会第2回中間とりまとめ 平成26年5月」において「④動植物重要種および魚類(アユ等)の採餌環境については、(中略)環境保全協議会で審議した方針に基づき、継続して調査を行っていくことが必要である」と書かれている。この文章の意味するところは「明晰判明」とはとても言えるものではないが、アユに関してだけ言っても、アユそのものに対する影響の研究を含め、少なくとも「資料」で見られたような「環境保全協議会で審議した方針」を全面的に越えて、優れた調査とそれに基づく科学的な考察・論議がぜひとも必要である。
小国川で計画されている流水型ダムはピークカット率が高いため、洪水時の堪水域の上流部に堆積する礫経の大きな土砂が下流へ供給されにくくなり、洪水の減水時や小出水時には堤体近くに堆積する砂泥のみが流出すると予測される。このため、①ダム下流域の河床更新度の低下と糸状藻類等の繁茂、②ダム下流へのシルトの流出による濁水発生と河床環境の悪化、③ダム下流へ供給される有機物組成の変化などを通じて,アユの餌環境やサクラマスの産卵環境の悪化が懸念される(サクラマスの産卵場が、ダム建設予定地〜下流1.5kmの範囲で発見されている)。これらは、岩手県のレン滝ダム、外枡沢ダム、島根県の益田川ダムなどの調査で得られている知見から明白と考えられる。また、わずかな濁水でも大きな影響を与えることは、岩手県の早池峰ダムの調査結果などから明らかとなっており(流水型ダムとは条件が異なるものの、2-6 mg/Lでも大きく影響し、アユやウグイの漁獲量が1/5以下に激減)、最上小国川で施工中の仮設備(トンネル)工事で行っている濁水処理レベル(3 mg/L)でも影響が出る可能性がある。また、いくつかの砂防堰堤(岩手県中井砂防堰堤、神楽砂防堰堤等)で報告されているような、堆積物の大量流出による下流域の魚類生息環境悪化も懸念される。
流水型ダムが建設された場合の付着藻類への影響に関して、最上小国川環境影響調査委員会において「アユの採餌環境に影響なし」と結論づけた。しかし、長期的にみると、ダムによるピークカットのために河床の攪拌頻度・強度が低下し、大型糸状緑藻や蘚苔類が河床を覆うようになる可能性が高く、その場合にはアユの餌場そのものが失われ、「アユの採餌環境に悪影響が出る」可能性は極めて高い。また、大型糸状緑藻や蘚苔類が河床に繁茂しやすくなると、アユの生息場そのものの消失につながる。実際、大型糸状緑藻の繁茂は全国各地のダムのある(つまり河床の攪拌頻度・強度が低下した)河川で普通に見られ、漁業に大きな悪影響が出ている。このようなピークカットによる河床の攪拌頻度・強度が低下することで起こりうるアユおよびアユ漁への影響に関しては、まったく検討されておらず、今後の調査に組み込むとともに、アユおよびアユ漁への影響について慎重に検討することが必要である。
ヤマメ・サクラマスの集結する大きな産卵場がダム建設予定地〜下流1.5kmの範囲でも発見された。小国川全域が国の準絶滅危惧種に指定されたサクラマスの産卵床である。しかし、それらの産卵床は、河床に卓越する岩盤の上に堆積した石礫や砂利によって形成されているのが現状である。したがって、小国川ダムによる土砂供給様式の変化は、とおり一辺の一次元河床変動計算ではなく、現場の境界条件に基づいたきめ細かい予測計算によって影響の評価をし直す必要がある。
以上のように、ピークカット率が高い小国川ダムでは、洪水攪乱規模の減少を通じて、下流河川の生態環境は確実に変化すると考えられる。その結果、ヤマメ・サクラマスの産卵床やアユの生息環境への影響や、鮎の品質を低下させる可能性は否定できない。長期的な観点から経済損失を検討し、事業計画の経済効果の計算に組み入れることが必要である。
一般に、「ある事業等が環境にいかなる影響を及ぼすか、またその程度はどれほどか」を考えることは、それに疑問を持ちあるいは反対する人びとに対して、科学的な資料とそれに基づく具体的な判断とを提示し、その論議に供するための第一歩である。今回の「調査」と「結論」は、残念ながらそれに全く値しない。今後、最上小国川流域環境保全協議会の「資料」とそれに基づく「結論」がそれに堪えうるものとなることを希望し、そのことを強く要請する。
以上
漁業権とダムについての公開質問状 提出6月20日
2014年6月20日
山形県知事 吉村美栄子殿
山形県議会議員 草島進一
最上小国川ダムについての公開質問状
- 6月8日おこなわれた小国川漁協の総代会では「ダム建設やむなし」とする決議案に対して、賛成57、反対46という結果でありました。
しかしながら、この議決によってダム着工できる等の法的根拠はありません。ダムを認める権限など、漁協にはありませんし、ダムの是非を水産業協同組合法に基づいて決めることはできません。又、ダムをつくることによって、漁業権を喪失するなど損害を受ける組合員の同意がなければ、水面上の工事の着工はできません。
漁業権や財産権をもつ権利者全員の同意かつ補償が満たせなければダムの着工は法的に不可能であります。よって、漁協の組合員をはじめ、権利者への補償交渉が成立してもいないのにもかかわらず「組合員の意向調査」にすぎない今般の漁協の決議を根拠に「漁協がダム容認である」等と扱い、「ダムを前提とした漁業振興」の協定を結ぶ等という6月16日の言動は、違法行為ではないでしょうか。
見解を求めます。
2)そもそも漁業振興策は、ダム建設など開発行為とは切り離しておこなわれるべきものであります。
昨日担当に伺えば、喫緊の課題である漁協のアユの中間育成施設等の井戸の整備は、ダム建設の有無に関係なくおこなわれるとのことと伺いました。しかしながら漁協の総代会以前は、多くの組合員や総代がダムとセットではじめてそれが行われる旨の説明を受けていたようですが、県がそうした説明や誘導をしていたのではないですか。総代会前の県の姿勢、又、現時点のダムと特に中間育成施設の井戸整備などの漁業振興策の関連性について改めて確認いたします。
又、県が掲げる「ダムのない川以上の清流」などどこに先例があるのでしょうか?昨日担当に尋ねれば「ダムをつくるけれどもダムのない小国川と同等かそれ以上の清流を目指すのだ」ということであります。その前例はどこにあるのでしょうか。見解を求めます。
3)5月17、18日に最上小国川の清流を守る会が開催したシンポジウムの結論として、今後の観光振興策や地域の持続可能な発展を考慮した際、「ダムなしの治水対策と本来の川のポテンシャルを活かした漁業振興策」こそ、科学的に可能であり、赤倉温泉をはじめ小国川の流域の未来の発展につながるという結論が得られ、先日要旨をカラー刷りの資料でお渡ししました。全国から錚錚たる科学者が集い、最新の知見で話し合われた結論であります。これまで50人の有識者、50回の協議などとされていましたが、回数や人数の問題ではないことは自明であります。
この結果や最新の科学的な結論こそ、県政発展の試金石であります。こうした科学的な結論を貴殿は無視し、排除し続けるのでしょうか。見解を伺います。
また、今週末の6月21日の土曜日には、50年に渡りアユの研究に携わっておられる生態学の世界的権威である川那部浩哉先生が小国川を視察し講演をされます。(舟形町 午後7時 別紙)関係者の出席を求めますし、こうした研究者の見解を今後の漁業振興策に活かしていただきますよう、心よりお願い申し上げます。
以上、質問については、重要案件であり、基本的な知事の姿勢についての質問につき、来週冒頭に、可及的すみやかにご回答を公開の場で直接伺いたく存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。
以上。
小国川漁協はダムを容認したのではありません。
6月8日、小国川漁協の総代会がありました。その際、ダム容認57対ダム容認反対46という結果でした。そもそもダムを容認するかどうかということは、漁業権に関わる案件ということで水協法で、総代会で特別決議2/3を以て決議できるということになっています。 6月8日、最上小国川の清流を守る会としては、以下の声明を発表しました。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 2014年6月8日 小国川漁協の総代会の結果を受けた声明 報道機関各位 最上小国川の清流を守る会 本日、小国川漁協の総代会において、「ダム建設やむなし」という理事会の提案への決議について採決がおこなわれ、賛成57 反対46という結果になりました。 しかしながら、この議決によってダム着工できる等の法的根拠はありません。ダムを認める権限など、漁協にはありませんし、ダムの是非を水産業協同組合法に基づいて決めることはできません。又、ダムをつくることによって、漁業権を喪失するなど損害を受ける組合員の同意がなければ、水面上の工事の着工はできません。 今般46人もの総代の方々が、ダムによらない治水を求めました。 この数は組合員の中にも数多くの方がダム反対であることを示しています。 漁業権や財産権をもつ権利者全員の同意かつ補償が満たせなければ、ダムの着工は法的に不可能であります。 仮に漁協が水協法に基づいてダムに同意できるという説に基づいた場合でも、 2/3以上の賛成が必要とされる特別決議が必要です。今般は普通決議で、かつ賛同者が2/3に達しておらず、ダムに着工できることにはなりません。 今後、補償交渉入りを県が提案してくると予想されますが、その際、権利者全員からの委任状を取得した上で補償契約を締結しなければ、ダムの着工はできません。 よって、ダム本体着工までは数多くの手続きが必要であります。 我々は、今後も故沼沢組合長の遺志を継ぐ組合員の皆様とともに、ダムに拠らない「真の治水」を求め続けて参ります。 以上。
本日2月27日、小国川ダム問題。朝日新聞全国版に掲載
本日の朝日新聞全国版に小国川ダム問題が掲載されました。「ダム反対派の漁協組合長 自殺なぜ」
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11001118.html?_requesturl=articles/DA3S11001118.html&iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11001118
私達は、2月18日に清流を守る会と水源連 連名で抗議と要請を県に提出しています
● 要求項目
1)小国川漁協からの推薦者を半数含めて第3者機関として調査委員会を設置し、山形県と小国川漁協との折衝の経過に問題がなかったのか、実態調査と報告を求めます。
2)その実態調査が修了するまでは、協議会の凍結を求めます
3)今後の県と漁協との協議については、現行の協議手法は、真の治水を議論する場になっていません。故沼沢組合長や小国川漁協が求め続ける「ダムに依らない治水」の本質的な議論ができるよう、ダムに依らない治水論者等を、推進論者と同等同質数参加させ、小国川流域の河川整備計画を見直すことも視野にいれた、河川法上の正式な治水対策を徹底議論する県民討論集会を要請します。
4)ダム事業の26年度の予算の凍結を求めます。
以上、本文に記載している要請も含め、可及的速やかなる回答と予算への行動をお願いいたします
としています。2月21日回答を催促し、改めて文書での回答を求めています。しかしながら、2月27日現在、未だ県から正式な回答が寄せられていません。
この問題について、詳しくはホームページ http://www.ogunigawa.org 等をご覧下さい。
緊急WEB署名もおこなっております。
どうぞご協力ください。
沼沢組合長への弔辞
本日1時から3時半ぐらいまで、新庄市の葬儀会場で故 小国川漁協 沼沢勝善 組合長の告別式が執り行われました。会場300名を超える人が集いました。佐高信さんの花、釣り人社社長鈴木康友さんの姿もありました。
弔辞を捧げました。 ここに記載します。
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弔辞
沼沢組合長、沼沢さん。
今日も小国川は、流れています。清らかな、川が流れています。
アユ、サクラマス、イワナ、ヤマメ、ハナカジカ、 が数多く泳ぎ、
そして夏は、子ども達がザッコしめする。釣り人が全国から訪れる
豊かな川が、今日も流れています。
それは
貴方が信念と行動をもって守り続けてきた小国川です。
夏、川岸にたち、偏光グラスをかけて、その豊かな小国川のアユ踊る水面をうれしそうに眺め、そしてその豊かさを伝える貴方の生き生きとしたその姿は、私の、私達の脳裏に焼き付いています。
私が沼沢さんにお会いしたのは、平成13年最上小国川ダムを考える懇談会の時からです。その懇談会は当時、ダム推進を述べる人30人。ダム反対を述べていたのは沼沢さんを中心に3名。
その後の流域小委員会は10人の委員会、9名のダム推進論者に囲まれた中で一人、沼沢さんだけが、小国川や赤倉温泉で起きている真実を語り、ダムによらない治水を訴えておられました。
多勢に無勢の説明会、公聴会でも、どんなヤジが飛んでも、誹謗中傷がいわれても、ダムによって、小国川そのものの力を失うことは、ここを訪れる人、ここに住み続けたいという人の幸せを奪うことにつながるのだ、と、未来に、手渡すべきものを見据え、情熱と、そして微動だに、ぶれない信念をもって、そして理路整然と、堂々と意見する姿がそこにありました。
随分ご一緒に勉強しましたよね。今本先生、大熊先生、桑原先生、熊本先生、紹介した先生方から科学的な論拠を求め続け、それを次々と自分の言葉にしていっておられました。
ダムが二つもあっても水害で死者を発生した新潟水害の現場も大熊先生と一緒に見にいきましたね。
前田国土交通大臣にもお会いし、堂々と川の真実を述べ、大臣も小国川の美しさ、豊かさに感動しておられました。
そもそも、小国川のアユを冷水病にしてはならない、川の力を失ってはならない。と、放流アユとしての琵琶湖のアユを、断り、小国川産、山形県産のアユを三瀬で育苗して放流する、自然の営みを大事にしたアユの放流事業を全国に先駆けて率先しておこなったのは、沼沢組合長、貴方でした。
毎年毎年、7月1日を過ぎると毎週のように有名釣り具メーカー釣り大会が行われ、その度に数百人が一関にずらりと並び。そして3万人の釣り客が小国川を訪れる風景は、貴方がつくってきたものです。
森と川と海をつなぎ、本来の「川の力」を失わせない漁業振興。
山形県内の内水面漁業で、全国的にも評価を受ける、最も優れた漁業振興の方策を先駆け、実践してきたのは、紛れもない小国川漁協であり、その一番の貢献者が、日々川や漁協の仲間の事を思い、漁協を導いてこられた貴方です。
あなたの信念と行動は全く淀むことなく、本物の漁業・観光振興と、真実の治水対策について、常に真実を求め、本質を堂々と発言し、行動をしておられました。その度に私達は心を打たれ、そして意見を交わし行動を共にし、これまでを歩んで参りました。
旅立たれる前々日 にも嶋津先生と打ち合わせし、そして前日にもお電話いただき、1時間以上にわたって話合いましたね。それが最後になるとは夢にもおもっておりませんでした。
傍にいながら支えきれず、誠に申し訳ありません。
昨年末、本来であれば、あなたの活動を賞賛し、応援し、川を守る側につくべき 山形県と水産行政が、漁業権の剥奪を楯にし、ダム建設を強要するという法的にも不当といえる脅しをかけてきました。
その恐怖と不安が貴方を精神的にも肉体的にも縛り付けていたことを知っています。
権力の巨大な圧力からどうしたら小国川を守り、全国から来る 釣り人の、楽しむ顔をみるのをこそ生き甲斐としている、漁協の組合員の方々を守れるのか。
毎日毎日ずっと、懸命に全身全霊で考え続けておられました。
そして、ついに貴方を死に追いこんでいった。
この政治や行政の病理、理不尽に、私達は、憤りをもたずにはいられません。貴方を死においつめていった、この責任をどうとり、償うのかと。
この清らかな小国川の清流を守り、未来の赤倉温泉や流域のために、貴方や、100名を超える多くの科学者が語り続けてきた真実の治水の方策を完全に無視したまま、それをねじ曲げ、ダムで川や流域の幸せを淀ませようとする不当な行為を、私達は決して許しません。
貴方は出席した「協議会」の中で、漁協の代表としてこう述べています。改めて噛みしめたいと思います
「最上小国川は、ダムのない川であるが故に、ことさら「清流小国川」として広く知れ渡り、最上町と舟形町のかけがえのない観光資源であり、流域の人々に計り知れない多くの恵みをもたらしていることは誰もが認めることであります。
小国川漁業協同組合は、川に生息している魚族の生態系を守る事及び繁殖保護に努めることを使命として、永年努力しております。ダムが造られれば、これまでの自然環境に変化を及ぼし、特に河川の生態系に悪影響が及ぶことを回避することはできません。
生息している魚族の生態系を守り、これらの増殖保護を行いながら良好な漁場を維持していくことを使命とし、豊かな自然環境を後世に引き継ぐため努力している私共小国川漁業協同組合は、ダム建設を看過することはできないのです。
小国川に育っている魚種は、質、量とも一級品として多くの人々から認められ、自然豊かな素晴らしい川として羨望され、たくさんの釣り人が訪れるのです。恵まれた自然環境は、人の手によって造られたものではありません。多くの豊かな漁場があり「清流小国川」として広く世間に認められている大きな観光資源を未来に引き継ぐためにも、最上小国川の治水対策はダムに依らない対策を要望します。
全身全霊で語られた、その言葉を私達は絶対に忘れません。
あなたというかけがえのない、同士を失った私達は、とても悲しさとさびしさとそして怒りと無念で一杯になります。
私達は、命をかけて、次 世代のためにも、小国川を守ろうとがんばり続けてきた、貴方の信念と行動を胸に刻み、その遺志をしっかりと継いで参ります。私達はあなたの無念の死を決して無にしません。
本当にこれまでの精一杯の人生、ありがとうございました。
あとは、ゆっくりとあの川面を見つめる笑顔で、先立たれた同じ信念をもつお仲間と共に、天国から、私達の行動を、そして奥様やご家族の人生をどうか見守っていてください。
今も、貴方の真心と同様の、ダムのない、よどみなき、濁り無き豊かな清流、小国川は、ゆるやかに流れ続けています。
そしてなお、小国川は未来に向けて、清らかに、流れ続けます。
心からご冥福をお祈りし、貴方への誓を込めて。
平成26年2月12日。最上小国川の清流を守る会 共同代表
県議会議員、 草島進一