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カテゴリー: ダム問題

一般質問2 最上小国川の見直しについて


4 最上小国川ダムの見直しについて

2009年の政権交代後、国からの「できるだけダムに頼らない治水の検討」の要請を受けて、県が再検討をおこない、国が8月に認めたということで、いよいよダム建設ができるかとお思いの方もいらっしゃるかと思います。
 しかし、手続きは終わっておりません、この川の漁業権をもつ漁協は、ダムに反対しているのでありますから、熊本の川辺川同様、ダム本体工事は着工できないのであります。議論の余地はまだまだある。むしろ真実の議論はこれからと考えます。

(1)自然資本の価値と流域経済に対する影響について(県土整備部長)

鮎の漁獲高だけで、年間1億3千万円ある、最上小国川。
先日、舟形町でおこなわれた若鮎まつりは、2日間で2万4千人が訪れ、大変な賑わいでありました。交流人口を育む観光資源として、全国屈指の清流であり、天皇献上品の松原鮎として珍重された天然鮎が遡上する最上小国川は、歴史的な評価・社会的評価・稀少性・固有性・本物性 という、観光に適した5つの要件をどれも備えている優秀な自然資本であるといえます。
この小国川の自然資本の価値をこの夏、近畿大学農学部水産学科 有路昌彦(ありじまさひこ)准教授らの研究チームにより調査をしていただきました。小国川釣り客が支払っている費用を試算した結果、小国川の釣り客によって発生している経済効果は直接効果だけでも年間約21.8憶円。何らかの理由で河川環境や鮎資源の劣化が生じた場合、年間10億円、10年で100億規模の経済損失が発生することが思料(しりょう)されるとのことであります。
 調査にあたった有路先生は、この全国屈指の清流と鮎は、今後の流域のまちづくりの経済を担う試金石であること。更に、経済学の見地からダム建設投資は新しい価値を生み出さず長期的にみれば流域経済にとってマイナスになる。と言及されました。
 今般の再検証の中で、県は、ダム案による環境破壊が地域経済に及ぼす悪影響について、全く試算に入れていませんでした。これを考慮すれば、ダム案と川道改修案のコスト比較が逆転するのではないでしょうか。

また、県はこれまで、穴あきダムならば環境にやさしい 鮎に影響がほとんどないと強調してきました。
は最新型の穴あきダムといわれる島根県益田川ダム、石川県金沢の辰巳ダムを視察しています。
 益田川ダムのある益田川は、工場廃液が流れ込む川であり漁業権はありません。また、辰巳ダムがある犀川は上流部に大型の犀川ダムがあり、すでに天然河川の様相はありませんでした。いずれも、ダム建設前後で鮎の遡上量の定量、定性的な調査はおこなわれておらず、益田川ダムの管理者は「穴あきダムは環境にやさしい事を目的に作ったのではなく、効果的に土砂を排出するためにつくられたダムである」と私に話されました。
また、小国川ダムと同様、鮎が豊富な川辺川に建設予定だった穴あきダム「川辺川ダム」については、蒲島熊本県知事が3年前の9月に、「人吉、球磨(くま)地域に生きる人々にとっては、球磨川そのものが、かけがえのない財産であり、守るべき宝なのではないかと思うに至った。」と工事進捗率81%にもかかわらず、ダム建設を白紙撤回しています。熊本県の担当に伺うと、「穴あきダムが鮎や環境に影響がない等」という事は議論にもならなかった。という事であります。穴あきダムでも、ダムはダムなのであります。

ダムのない、年1億3千万円もの鮎漁獲高を持つ天然河川に、穴あきダムが造られたためしはないのであり、小国川がはじめてなのであります。

穴あきダムが全国屈指の天然河川の鮎や環境にに影響をあたえないと主張されるなら、「穴あきダムをつくって10年、20年後でも鮎の環境に影響がなかった」という実証データを示してください。

又、今般お伝えしたダムによる流域の経済損失についての
県土整備部長の見解を伺います。


(2) 治水対策の見直しについて(県土整備部長)

2004年7月の新潟 7.13水害では、上流にダムが2つあり、その一つは穴あきダムある五十嵐川で堤防が決壊し、七千棟以上の床上床下浸水、死者9名の犠牲者を出しました。この9月の豪雨災害があった和歌山県では、3つのダムが満杯で治水の役目を果たしていなかったことが報道されています。和歌山県日高川に「100年に一度の雨に対応する」「つば山ダム」がありますが、氾濫し、家屋59棟が全壊、3人も死亡しています。
 それに対して新潟の五十嵐川では04年水害を教訓に、下流部200戸の移転をともなう河道拡幅をおこないました。今般7月末の豪雨ではそれが幸いし、下流域で犠牲をだすことはありませんでした。

 想定を越える超過洪水の際にはダムは機能せず、それに対して危険箇所の家屋移転と河道拡幅など、ダムに依らない治水が効果的でした。これは最近の実際の現場からの教訓であります。
 傾向として近年広範囲にわたる豪雨が発生している今、治水政策のトレンドは、「どのような洪水であっても人命が失われることを避ける。」ことであります。そのために河道内の流下能力を改善するとともに、田んぼダムのような雨水貯留(うすいちょりゅう)、また、土地利用規制や耐水化建築などの「氾濫原の減災対策」、そして「地域防災力の向上」を組み合わせた「総合治水」の取り組みであります。

 小国川ダム建設の目的は流域住民の生命と財産を守ることですが、その中でもつきだて地域と瀨見地域は、ほぼ50年確立の洪水に耐えられる治水が完了しています。つまりダムは、ほぼ赤倉温泉地域だけの治水対策であります。
 赤倉温泉地域には、河川管理者である県の責任が問われるいくつかの問題があります。まず、旅館群が河道を狭めるように立地させてしまっていること。中には建物が明らかに川に迫り出している旅館があります。更に致命的なのは、県が河道内につくった高さ1.7mの堰堤(えんてい)が、土砂を堆積させ、流下能力の乏しい危険な箇所ができている事です。
 「以前は親子で水泳ができたほど深かった場所が今膝丈ぐらいになっている」との証言が住民からあります。
 県がつくった堰堤が原因で流下能力を下げている、その河川管理の失策を棚にあげて、今度はその除去はできないと主張して上流に巨額なダムをつくる。これは大きく矛盾していないでしょうか。

 頻繁に洪水災害になっていると県は殊更に強調されていますが、いつも床上、床下浸水で騒がれる箇所約4件は河川洪水の被害ではなく、内水氾濫による内水被害であります。
 又 今 、赤倉温泉の川辺に、新しい建物の建築確認許可を県が平気でだして、建設が進んでいます。危険箇所に、また治水策の協議中になぜ新規の建物が建つんでしょうか。治水に「土地利用規制」の発想のない河川管理の問題であります。

県はこれまで、「湯脈に影響するので河床の掘削ができない」と主張し続け、河床掘削案を排除し続けてきました。
 2008年度におこなった温泉調査で県は「川と温泉は密接な関係にあることがわかった」「温泉に影響するから掘削できない」と、調査を途中で打ち切っています。しかし、この調査に実際に関わった山形大学の川辺教授は「あの調査から河床掘削工事が一切できない」という結論にはならない。」と主張しておられます。更に川辺教授は「岩風呂付近の水位を保てば、温泉に対する河川改修の影響は避けられる。」と言及されています。これは、重要な指摘ですが県は温泉調査の真実を曲解し、ダムによらない治水ができない論拠としているのであります。

 更に県は、今般の検証で「河川改修のみのプランだと安全確保に74年かかると試算しました。集落も田んぼも同様に50年確率の堤防などの整備を下流からおこない水を閉じ込めるプランになっていますが、遊水池等を活用した総合治水の観点から観れば全くナンセンスであります。
 ダムにこだわる旧来の治水論で思考停止しているようですが、このような姿勢で、今後の豪雨や洪水時に本当に県民の生命と財産を守れるか、逆に疑問であります。
 現在、熊本県では球磨川方式として、「基本高水」にこだわらず、ダムに依らない治水方策を積み上げ方式で流域に施し、治水安全度をあげる努力をおこなっています。滋賀県も同様に段階的整備をおこなっています。山形県も、熊本や滋賀県の姿勢に習うべきではないでしょうか。
 
 赤倉温泉の治水対策としては、地先の安全度の確保に基づき、段階的整備として河川整備をおこなう総合治水対策の観点で治水対策をおこなうことであります。

 現状の流域の旅館群の景観は、歴史的とはいえ、「改修の度に段々と川に迫り出し、結果的に川幅を狭めてしまった」と流域の旅館主からの証言を得ましたが、旅館が河道内に迫り出し、護岸も老朽化し汚水の垂れ流しを含め、秩序を失った状況にあります。

 次世代にも引き継げる、持続可能な流域の地域を叶えるためには、内水災害対策、固定堰の可動堰化による砂利除去、河道拡幅や遊水池確保などダムに頼らない総合治水を究極までおこないつつ、温泉街を再生させることが最善ではないでしょうか。
 県は、この機会に「日本一の清流に面した美しい温泉地域へ」、旅館街のリノベーションと組み合わせて治水を完成させる、いわば、まちづくり治水への政策転換を提案しますが、いかがでしょうか。県土整備部長の見解を伺います。
(3) ダムによらない治水対策の検討について(知事)

今般の検証は、「できるだけダムに頼らない治水への政策転換を進める」との意向の下での検証だったと思います。
しかし、県が検証の場とした会議「最上小国川流域の治水と活性化を考える懇談会」には「ダムによらない治水論」を主張できる河川工学者が一人も招聘されませんでした。
更に山形県公共事業評価監視委員会ですが、河川の再評価のはずであるのに、ここには河川工学者の姿がありません。ダムに依らない治水論を主張できる河川工学者への意見聴取もありませんでした。これが県の検証の実態で、ダムにたよらない治水の検証が全くできていないのであります。

新潟県での検証会議は、ダムによらない治水を主張できる河川工学者を座長にして、農業土木、河川工学者、経済学、観光の専門の先生方が、治水方策について徹底して議論をおこなっていました。結果、2つのダムがこの検証会議で中止になりました。これが「ダム検証の真実の姿」なのだと思います。

私は、最上小国川ダムの検討が始まった河川整備計画策定の流域委員会小委員会から傍聴しておりました。よく歴代の部長や地元の首長は「議論は尽くされた」とか「丁寧に丁寧に説明してきた」といわれています。が、私はそれは全く事実に反しているととらえています。

 致命的なのは流域小委員会の中で治水方策を検討する際、議論をリードする河川工学者が、ダム推進論者2名の参加のみで、ダムによらない治水を主張できる河川工学者は皆無のまま、議論が進んだ事であります。


 元京都大学防災研究所の所長であり淀川水系流域委員会委員長である今本博健 京大名誉教授は、これまで5回ほど現地調査をされ、治水対策は全く検討不足。流域委員会では特に環境面の影響の検討が乏しく、委員の中で特に河川の専門家の見識を問いたい」と厳しく言及されておられます。

川辺川ダム建設計画を白紙撤回した蒲島熊本県知事は、
「国土交通省は、ダム建設上、生じる問題に対しては、熱心に研究、開発を行っているが、ダムによらない治水は、問題点の指摘にとどまり、極限までの努力を行っていない。そのため、住民の理解が得られてこなかったと考える。」 と言及していますが、私は、山形県に同様の姿勢を感じています。

 原発には原子力ムラという構造があって、それが真実の議論を排除し続けてきました。それと同様、ダムの周辺にも同様の構造があり、政官業そして、御用学者のセットで、住民や世論を情報操作し、反論を排除し、論調をダム治水に有利なように推し進め、ダムを造り続けてきた構造があること、
 そして山形県の最上小国川の治水対策については、伝統的に国土交通省から出向している部長の下で常にダムによる旧来型の治水論で知事周辺を固めておられたと思うし、それが、「ダムに頼らない総合治水」の真実の議論を遠ざけてきたのだということをご指摘申し上げます。
 
 先日滋賀県嘉田知事にお会いしましたが、こうした構造のため総合治水を叶えたい滋賀県では3年かけて土木部長を国土交通省ではない方に変えたそうであります。

97年改正された改正河川法の趣旨は、環境と住民参加であります。
発想の転換が必要なのであります。

小国川の清流環境が育む流域の釣り客によって発生している経済効果は年間約21.8憶円。全国屈指の清流と鮎は、今後の流域の農商工観連携まちづくりの経済を担う試金石であります。ダム建設をおこない自然資本を失えば、損失は一生であります。この環境の価値を改めて踏まえて頂きたいと思います。

 また、今年3月の東日本大震災の津波災害、2004年の新潟水害、9月の紀伊半島豪雨から学 べることは、ダムなどのハード対策をしても想定外の洪水時には機能しない事であります。ダム放水によって人命が失われてもいます。更に穴あきダムの治水能力には疑問の声が多く寄せられています。
 住民の生命と財産を守るためにも、超過洪水対策としても有利で、更に環境に影響の少ない、ダムによらない「総合治水」を極限まで検討することが必要であります。


そこでご提案申し上げます。

まず、ダムに依らない治水方策を河川工学の新潟大学 大熊孝名誉教授、元京都大防災研 今本博健京都大学名誉教授らを招聘して究極まで検討される事。また、今般提示した自然資本の研究成果をもとに、中長期的な流域の持続可能性を検討材料に入れて再検証されることを提案します。

再検証の際、パブリックコメントでの重要な問いかけが聞き置くだけになっているもの、また、問いかけに対して「逃げ、ごまかす、はぐらかし」というつまりは説明責任が果たされていないものがあります。ダムによらない治水、ダム案双方の河川工学者の方、また温泉調査の専門家、地域の自然資本の研究者らに参画いただき、住民も交えて徹底議論する公開討論会を開催されることも提案します。

そして「地先の安全度」に基づき、段階的整備で河川改修で治水を実現する、総合的な流域治水対策を行っている滋賀県。そしてそれに連携している関西連合。

 ダムによらない治水を極限まで積み上げ方式でおこなう「球磨川」方式をおおこなっている熊本県。

2004年の水害を教訓に、隣接した危険箇所の住居を移転させ、水田を地役権設定で遊水地化し、田んぼダム等の活用によって、安全度を上げ、実際に治水に成功している新潟県 など、志の高い治水政策に学び、

ぜひとも嘉田知事、蒲島知事、泉田知事と連帯して、
環境 と 流域の経済の持続可能性を判断基準として

天然河川最上小国川の治水対策を検討し直す事を提案しますが、いかがでしょうか。
 
吉村知事のご所見をお伺いいたします。
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□吉村知事

●次はダムによらない治水の検討についてでございます。

最上小国川の治水対策につきましては、私自身、知事に就任当初、白紙の状態でありました。いろいろな方々の意見を聴くため小国川漁協や、自然保護団体の方々とも直接お会いしました。自分の目で確かめるため、地元へも足をはこび、何が最適なのか、熟慮してきました。

この間、平成22年9月に国から検証検討の要請があり、国が策定した新たな基準にしたがって、検証をおこないました。

検証過程におきましては、ダムに依る、依らないに偏らず、流域の活性化とその石杖となる治水対策について総合的に検討することを目的とした、「最上小国川流域の治水と活性化を考える懇談会を開催し、環境、観光、農林水産業 各専門的観点から意見をいただきました。

また、関係地方公共団体である、最上町、舟形町との検討の場である、「最上小国川流域治水対策検討会議を設置して、意見を伺いました。その意見を踏まえて、県の対応方針素案を作成したものです。

そのうち、パブリックコメントの実施や、流域住民への説明会を開会した上で、「山形県公共事業評価監視委員会でご審議いただき、流水型ダムが最良とする県の対応方針を決定いたしました。
国においても有識者会議の意見を踏まえ、県の対応方針を妥当とし、補助金交付を継続した国の対応方針が決定されたところであります。

ーーー
●鹿野 県土整備部長


□鹿野 県土整備部長
私には、最上小国川ダムに関連いたしまして、2点ご質問がありました。純二お応えいたします。

1点目、 自然資本の価値と流域経済に対する影響についてでございますが、
最上小国川ダムの河川環境に与える影響につきましては、平成15年度より、継続的に調査をおこなっておりまして、平成21年1月には、外部の有識者の意見を伺いながら、詳細に検証するために、魚類や環境等の学識経験者、及び地元代表をメンバーとする最上小国川流域環境保全協議会を設置いたしまして、審議いただいております。この協議会におきましては、流水型ダムが河川環境に与える水温、水質、濁り等の項目について、7回にわたって慎重な審議をいただいた結果、平成22年10月に、中間とりまとめとして「水環境においては、流水型ダムの特性上、平常時は流水や、土砂移動への影響は小さく、洪水時も水温水質等は、ダムのない場合とほぼ同様である。また、洪水時の濁りの程度や継続時間をダムのない場合と比べて若干の差は生じるが、その差異によって、鮎等の成育や生態に対して影響は小さいとの意見をいただいておりまして、県といたしましては、鮎等への影響は小さいと判断をしております。
また、様々な機会を通して、地元の方々から、地域振興に関する意見を十分にお聞きして参りました。その結果としまして、鮎が成育する最上小国川の自然環境への影響は小さく、現状の温泉の魅力を維持しながら、治水安全度を高める流水型ダム事業の推進が、この地域の振興にとって最適であると考えております。なお、ダムの工事中はもちろん、完成後につきましても、調査および協議会を継続いたしまして、環境保全に十分に配慮をしながら事業を進めて参りたいと考えております。

続きまして2点目でありますが、治水対策の見直しについてのご質問でございます。
今回の検証検討におきましては、できるだけダムに頼らない治水への政策転換にもとづいて、国が策定をいたしました、新たな基準に従って、雨水貯留施設や土地利用規制を含んだ、26のすべての方策について赤倉地区で適用可能かを検討いたしました。この際、固定堰の河道堰化も含めて、川底を掘削するといわゆる河床掘削による河道改修というものは、平成20年度の温泉影響調査におきまして、3名の学識経験者の総意により、河床を掘削することは源泉に対して著しい影響を与える可能性がある。との意見をうけたことから、適用できない方策であると判断しております。
その経過、適応可能な方策として遊水池と河道拡幅を組み合わせた案、流水型ダム案、河道改修案、放水路案の4つの案をあげまして、安全度、コスト、実現性、持続性、柔軟性、地域社会への影響、環境への影響、の7つの評価軸でこれらを総合的に評価したところ、流水型ダム案が最良の治水対策であると決定をしたものでございます。このうち、地域社会の影響の

小国川の試算をしてくださった有路先生がTV出演


先般の一般質問でとりあげた、小国川の自然資本の試算をしてくださった、近畿大の有路先生が日曜日のNHKの番組でコメンテーターで出演されておりました。

「小国川の釣り客によって発生している経済効果は直接効果だけでも年間約21.8憶円。何らかの理由で河川環境や鮎資源の劣化が生じた場合、年間10億円、10年で100億規模の経済損失が発生することが思料される。」

お忙しい中、現地調査をしてくださった事に改めて感謝申し上げます。

真摯に科学的に算出してくださった今般の試算、当局にはしっかりと認識していただいて、再々検証して頂くことを望むものです。

ダム問題 熊本の穴あきダム、川辺川ダムへの反対表明から3年。



先日視察で訪れた熊本県の川辺川ダム問題。

熊本県はダム反対表明からもう3年たつのか。川辺川ダムも最上小国川ダムと同じ穴あきダム。
とても有意義なインタビュー記事だ。熊本日日新聞 webより。

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ダム反対表明から3年 蒲島知事インタビュー
http://kumanichi.com/feature/kawabegawa/kiji/20110913001.shtml


 蒲島郁夫知事が2008年9月11日、国の川辺川ダム建設計画を
白紙撤回すべきと表明してから3年。翌年発足した民主党政権が全国
80以上のダムの検証を促すなど、熊本発の決断が日本政治に大きな
影響を与えた。一方で、川辺川とその本流球磨川はさまざまな懸案に
直面している。3年間の到達点と課題について知事に聞いた。(編集
委員 山口和也)
 ●表明の意義
 −ダム反対表明の意義を今、どう自己評価していますか。
 「3年たつと違った深みが出てくる。ダムという公共事業は、県民
の幸福量増大という目標に向けた手段に過ぎないのに、行政の目的化
していた。私の表明がそれをストップできることを示したのは、日本
政治にとって大きかった。河川工学上で正しいことと、政治上正しい
ことは同じではない。技術と政治は違うということを示すことができ
た。知事就任から半年という時間を区切り、議会や国・県などさまざ
まな関係者から精神の自由を保ち、公開の場で議論していった。それ
が私の決断を実らせた」
 ●水没予定地
 −県は6月、水没予定地を抱える五木村の生活再建事業費として5
0億円を約束し、国や村と合意しましたね。
 「当初は国と県と村が三すくみになり、なかなか前に進まなかった。
そこで『県はこれだけの額を先に出す』と表明して、国や村の理解を
得た。50億円は国がダムを造った場合でも県が負担しなければなら
なかった額だ」
 −前原誠司氏が国交相当時、五木村はじめ公共事業を中止した場合
の補償法案を約束したが、棚上げされたままです。
 「言ったことはやる、できないことは言わない。民主党にはそれが
大事だ。大臣が表明したことも個人が言ったことにしてしまい、責任
を持とうとしない。期待は失望に変わる。たとえ法律ができなくとも
県でできることからやっていく」
 ●球磨川方式
 −今月5日、1年2カ月ぶりに国、県、球磨川流域市町村による治
水協議が再開。知事は「財産より生命を優先した対策を急げ」と訴え
ましたが。
 「洪水防止は『生命・財産を守るため』とされてきた。しかし、東
日本大震災や台風12号被害を見ても分かる通り、財産は後で回復可
能だが、生命は補?[ほてん]できない。まずは生命を守るため、で
きることから着手すべきだ。たとえ100年に一度の洪水に備えると
いう大目標を掲げていても、今洪水が来たらどうするのか。ただちに
やれる対策をスピード感を持って積み上げる。それが球磨川方式だ」
 ●農業利水
 −農家には農業用水を望む声があるが、国営利水事業をめぐる地元
協議は5年以上合意に達していない。県は合意を待つだけですか。
 「川辺川ダムを造るか造らないか、地元では長年の対立があった。
農水省が提案している事業に乗るかどうか、なかなか合意形成できな
い背景にも、ダムをめぐる不信の構造が地元にあるように思う。だか
ら明確にダムに頼らない治水を進めることで、利水も理解してもらい
たい。急がば回れだ」
 ●五木ダム
 −川辺川ダム上流に予定されていた治水専用の県営五木ダムも先日、
建設中止を表明しましたね。
 「球磨川と川辺川は地域の宝というのが私の哲学。それと、五木ダ
ムがなくても洪水が防げるという技術論が一致できた。五木ダムによ
らない治水を県の責任で進める。先日、住民の方々にご説明した際、
要望があった通り、環境や景観に配慮する治水にしたい」
 ●「廃ダム」
 −全国初の「廃ダム」となる県営荒瀬ダムについて撤去の許可を国
に申請しましたが、国の財政支援策は先送りされています。
 「当初、国は老朽化したダムの撤去支援に荒瀬ダムを含むと言って
いた。これもまた、言ったことを守らない例だ。だが、撤去コスト削
減や護岸工事、国からの交付金の活用などでは、国も協力してくれて
いる。国からベストの回答が来なくとも、私の責任で撤去に踏み切る。
近くおおまかな資金計画を示す」

【写真】「川辺川ダムという公共事業をストップできることを示した
ことは、日本政治にとって大きかった」と語る蒲島郁夫知事=県庁
(小野宏明)

ダム案妥当の、山形県公共事業評価監視委員会。また、穴あきダム推進への疑問。


ダム案「妥当」の意見書提出 最上小国川の治水対策で知事に
の記事に対して。

ダム案妥当の公共事業評価監視委員会。以前もその委員会の構成などに疑問をもっていた。このダムの件については、以下のようにパブリックコメントを提出した。治水効果が発現するまでの期間について、基本的に行政側の言い分を鵜呑みにするだけで良かったのか。山形県の検証そのものが問われていると考える。

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以下、県に提出したパブリックコメント
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3学識経験を有する者 の意見を聴くこと について

今般の検証について、特に学識経験者の内河川の専門となる河川工学者として「ダムに依らない治水プラン」「総合治水」を明確に主張し、言及される研究者、委員が全く存在しないままの検証になっている。これは、これまでの流域委員会等の議論のプロセスでも欠落していた。そのため、これらの検証手法、対応方針は「ダム推進に」偏ったままで、何一つ本質的な「検証」に至っていない。

 我々がこれまで現地に招聘し、現地踏査をされている今本博健 京大防災研究所元所長、大熊孝 新潟大名誉教授らも検証作業に加えた、偏りのない検証が必要である。検討いただきたい。
 特に2006年に現地を訪れた今本先生は、「たった3案(当時)だけで議論の回数も少ない。この川の魅力を壊さないダムに依らない治水対策は他にもある。議論過程を見ていて特にこの計画に関わる河川工学者の見識を問いたい と意見を述べている。

技術上の観点からの実現性

河道改修案について、河川の水位と温泉との影響があることは解っているが、「影響がある」で思考停止していまいか。影響があるにとどまらず、その関係性のメカニズムを解明することによって、堆積土砂を取り除くことができると考えられる。とはこの温泉調査に関わった専門家の意見である。  
 温泉街の河道に先般「県が設置した」と説明会で言及された床止めがあるが、この工事の際は大胆に河床に触れる工事をしていたと考え得る。
今、河床に全く手が触れることができないような言及を繰り返していることはこうした工事を考えると全く欺瞞性がある。
又、この床止めは何のためにつくられたのか。温泉のお湯を維持するために河の水位をあげるため、この床止めがつくられたのではないかと推測する声が現地にある。この床止めを一旦取り払い、河道の土砂を払うことで相当量の水量を確保できると推測される。こうした事を盛り込んで「国土問題研究会」からダムに依らない治水プランが提案されているが、今般の検証の際、全く検討されていない。

この河川温泉調査に実際に関わった温泉の専門家である山形大学川辺教授の見解は現在完全に無視されている状況である。温泉掘削調査の結果についても偏った報告をしているままであり欺瞞性がある。
 「影響がある」にとどまって思考停止しそれを論拠としことさらに強調するのは、河川管理者の姿勢に疑問を感じる。より深く調査し、温泉と河川水のメカニズムを解明し、温泉湧出に影響を与えることなく河床の土砂除去ができないか、更に十分に検討すべきである。

4.5基本高水流量
赤倉地点での過去の洪水実績である、270m3/s よりも70m3/s多い340m3/sが設定されているが、この基本高水流量については先般国会でも
算定する際のパラメータの欺瞞性が指摘された。最上小国川の基本高水流量についてもダム建設のために過大に設定されていないか、第三者機関での検証が必要である。そのために、算定のためのパラメータ等について、電子データで情報公開していただきたい。


7.2.4効果が及ぶ範囲 の河道改修案について
「最下流から段階的に実施する必要がある」
効果の発現による評価
ダム案での発言は5年。河道改修案の74年
この2点についてだが、赤倉温泉地域の下流部は河道は民家に接しておらず、掘りこみ河道で一定の安全が保たれている。またその下流部は支流の影響が大きいことから、河道改修について必ずしも最下流から実施する必要があるとは思えない。他河川でも、例えば、川辺川などでも、危険箇所の堆積土砂を除去しただけで相当の安全が確保された実例がある。
 この「最下流から段階的に実施する必要がある」には欺瞞性がある。ないとすれば反論を求める。
ゆえに、治水効果の発現の数値には欺瞞性がある。

7.8.1 水環境への影響
7.8.2 生物の多様性の確保及び流域の自然環境全体への影響

「流水型ダムはーー水質は変わらない」また、生態系への影響は小さいとあるが、まず、ダム建設時の河川への影響は甚大と考えられる。益田川でも流域の住民から「建設中の10年は濁りが続き、魚の姿がほとんど見られない状況になっていた」と伺っている。また流水型ダムといっても、巨大構造物であり、副ダムと本体との間のプールに相当量の土砂等が堆積し、濁水の長期化などを引き起こす可能性があり、実際に鮎釣りなどでは相当の影響を生じるおそれがある。

流水型ダムとして「環境にやさしい」と県は広報を続けているが、同様の流水型ダムである川辺川ダムに対して、熊本蒲島知事は、「球磨川そのものがかけがえのない財産であり、守るべき『宝』ではないか」として、白紙撤回をした。通常のダムも流水型ダムもかわりなく、環境に大きく影響を与える巨大構造物としてとらえられている。これが常識的な考え方ではないか。これまでも多くのダム事業で「清流が維持される」と広報されたものの、実際には建設時から河川環境に著しくダメージを与え。清流環境を失ってきた。
小国川ほどの清流環境をもつ天然河川で、流水型ダムがつくられ、生態系は全く変わらないという実例は現存しない。
 慎重に考えるべきであり、ダムに依らない治水をもっと真摯に検討すべきである。
 
8.2 コストによる評価について
ダム建設のコストだが、これまで、建設途中で大幅に建設費用が増えた実例が多い。実際に月山ダムでは780億が1780億円にふくれあがっている。現在のダム事業費が48億円となっているが、これが膨らまない保証はあるのか。

又、現在このコストによる評価であるが、流域全体の長期的な経済をみたときに、現状の清流環境の生態系が生み出している流域の経済効果はいかほどで、ダム建設に依る経済損失の試算はいくらなのか、明確に提示

穴あきダムー最上小国川の検証の欺瞞


最上小国川のダムについての県公共事業評価監視委員会の意見がまとまったようだ。
「穴あきダムが最適で異論はない」とのこと。
毎日webよりピックアップ。


毎日新聞山形版 2011年1月21日 

最上小国川ダム:「穴あき案が最適」県監視委意見 県、報告書提出へ /山形

 国の検証対象となっている最上小国川ダム(最上町)について、県公共事業評価監視委員会(大川健嗣委員長)は「穴あきダムが最適で異論はない」との意見をまとめた。これを受けて県は近く国土交通省に「穴あきダム案」を盛り込んだ報告書を提出する見通し。

 現地調査や聞き取り調査などを実施し、コスト、安全性、環境影響などから総合的に判断した。委員からは「環境面からも一番影響が少ない」「一度に大量の雨が降る場所で安心・安全の面からも良い」「赤倉温泉のお湯にも一番影響が少ない」など、ダム案賛成の意見が相次いだ。

 県河川課は、国が示した方策の中から(1)穴あきダムと河道改修の組み合わせ(現行案)(2)遊水地と河道改修(3)放水路と河道改修(4)河道改修のみ−−の4案を検討。コスト、安全性、実現性、持続性など7項目の評価軸から、昨年11月に「穴あきダム案が最も有利な治水対策」とする素案を作成した。さらに最上町と舟形町の住民説明会などで意見聴取し、素案へのパブリックコメントも県民に募った。【浅妻博之】

ーーーーーーーーーーーーー引用ここまで

改めて県公共事業評価監視委員会のメンバー構成を見てみる。
この中に河川工学者がいるか、、、いない。それもダムに依らない治水を唱える能力のある方がいるかーーいない。
  これは、これまでこの最上小国川の流域委員会、小委員会、そして最近の検証委員会、又、国の検討委員会を含め、構成メンバーに「ダムに依らない治水」を理論的に組み立て、国土交通省の官僚に反論し、主張できる能力のある人がいないのだ。
   結局、何の評価にも検証にも、監視にもなっていないのが実情ではないのか。

先日提出したパブリックコメントにも書いているが、河川の治水プランについての検証であれば、とにかく河川工学者が議論のイニシアティブをとる。その河川工学者が、ダム推進の人しかメンバーの構成にはいっていなければ、自ずと結論はダムになってしまう。これはあたり前の事だ。
  こうした事は県や行政がおこなう審議会、委員会などでこれまで慣例としてずっと長年続いてきた事だ。
ダムに依らない治水論を堂々と主張できる河川工学者といえば、私が知る限り、京都大学名誉教授の今本博健先生、新潟大学 大熊孝先生 元国土交通省 宮本博 さん、嶋津輝之先生 この4人しかいない。
だから全国 こうした検証がおこなわれていてもこの4人がはいっていない会議はほぼ全滅といっていいだろう。
僕らは、昨年国の検証委員会がはじまるときに、この4人がはいっていない検証委員会であれば、意味がない。必ずいれるべきと主張し要求をしていた。そして会議はすべからく公開して傍聴者もいれてほしいと要求した。しかし、政権交代後の前原大臣らはこれを拒んだ。そして1年の検証、県レベルでの再検証がおこなわれているが、案の定、僕らが予測したとおり、検証したけれどもダム論が有力のようなかたちに終わろうとしている。 結局、現場にある真実がテーブルの上にのらず、真実が議論されていないままなのだ。

行政・官僚お手盛りの審議会、流域委員会、根拠もない「日本一環境にやさしい穴あきダム」論で住民をごまかし民意をでっちあげる姿勢、おまけに「民意」を封じ込めて強制終了する「説明会」「公聴会」など、2003年から関わり続けてきた最上小国川のダム関連だけでも、県の土木関係官僚たちのおかしな姿勢 を相当目にしてきた。

このまんま真実がテーブルの上にのらないまま、また、かけがえのない山形の清流が破壊されると思うと僕は我慢できない。熊本の川辺川だって途中から穴あきダムになったのに知事は白紙撤回をした。「穴あきダムだったら鮎に影響しない。環境にやさしい」などといっているのは、まさに山形県だけなのだ。
 「温泉に影響するから川底をいじれない」も、実際に調査に関わった先生からは「温泉のメカニズムを解明した上で、温泉に影響なく土砂を取り除くことは十分可能」とのこと。「山形県はよほど技術がとぼしいのか。」と思うのだ。

  この一本の川を守れるかどうかは、山形県政が、20世紀型の、大型公共事業で地域経済を活性化すると続いてきた利権官僚政治の発想のままか、それとも、地域資源を十分に守り活かして地域密着型の公共投資、公共事業でたしかな仕事をつくり、次世代に環境破壊や大借金などのツケをまわさない政治にするかの大きな山場といえる。 
     脱ダムして、環境・福祉・経済がバランスする、持続可能な地域づくりへ投資しようよ! そろそろ。

   
   







最上小国川の治水対策についてのパブリックコメント 締め切り近づく


以前にこのブログでも伝えた最上小国川の治水対策についてのパブリックコメント、明日が締め切りです。
みなさん、一言でも、ぜひホンネを伝えましょう。私も本日中には書き上げる予定。
基本的には「これまでの議論、検証の過程で、特に意見が重要視される、河川工学者などに、明確にダムに依らない治水論について発言されている方がいらっしゃらない。要するに「ダムによる治水論者」のみの議論、検証が続けられている。今回の結果を見てもそれがあきらかだ。以前、現場を踏査された今本博健 京都大学防災研究所 元 所長 河川工学 元 淀川水系流域委員会 委員長は、「たった3案だけで比較しているだけにすぎず、検討が甘すぎる。これはこの事業の議論に関わる河川工学者の見識を疑う。治水対策はまだまだ別の方法がある。」と現地でのべています 。要するに真実がまだテーブルの上にのっていない。今回の検証に至っても、検討不足」ということです。
 みなさんもぜひ、山形随一の清流、一本の川をどうするか。最上小国川 パブリックコメントに参加しましょう。

関連ページは
http://www.pref.yamagata.jp/ou/kendoseibi/180006/damseibi/pubcom_10.html

最上小国川ダム関連の取材記事


最上小国川ダム関連。国の検証の方針を受けて、地元最上町、舟形町の町長、議員などが集まり、協議を進めているというニュース。

川辺川の多様な市民活動


東北自然保護の集いが10月30、31日と羽黒でおこなわれた。空港に熊本、川辺川の運動を展開しているゲストのつる詳子さんを迎えに行く。いでは記念館での講演。つるさんは自然観察指導員から川辺川の運動に参画した女性で、川辺川の運動の柱といっていい。一時間の講演の中で、球磨川の荒瀬ダムをはじめとするダムができる前、それこそ、アユで川が黒くなるほどアユが遡り、三千名もアユで生計を立てる漁師さんがいた。そして、洪水を水害とせずに大水として、住民は受け入れていた。というのも、大水がくると水で家が浸かる心配もあるにはあったが、それをしのげば、大量のアユの恵みに預かれる。つまり、大水によって大量のアユを網でかけることができたそうなのだ。思わず、新潟でおきた2004年の水害の際に、一階部分が完全に水没して大損害をうけた「コロナ」の工場のとなりに「水屋」という家屋があり、そこにいる子供に聞くと「水が玄関までしかこなかった」といっていた。これも洪水を受け入れる知恵だと思って感動したのだが、そのことを思い出した。
  球磨川では、特に豊穣の川とともに暮らす川の民が多くいたのだろう。でも荒瀬ダム、市房ダムとつくったおかげで、かえって急激に水がくるようになり、危険になった。そして大水として受け止めれなくなった。
  流域の人たちのほとんどは、ダムは百害あって一利なしだということをひしひしと感じている。 だから、川辺川ダムの問題には大きな反発があった。ということ。
   それから。川辺川ダムについては、今の熊本知事、樺島知事の白紙撤回表明で建設が白紙状態になっているのだが、実は、前の潮谷知事が、賛成、反対の側の双方の主張を公開の場で議論させ合う、公開討論会をおこなったことがとても幸いしているとの事だ。それによって、真実があぶりだされ、推進側の説明の中でおかしなことが次々とでてきたのだそうだ。知事は、中立の立場を貫き、県民、住民の推進側と反対側で九回もの公開討論会をおこなった。このことは山形でも学ぶべきことだろう。
  つるさんはダム反対運動にかかわったきっかけをこう話した。「私は薬剤師をやっていて、人間の健康を考えた時、血液の循環がきちんといっているかどうかが鍵と学んできました。その循環がスムーズにおこなわれなくなると病気だったらりガンだったりということは、川だっておなじ。循環を妨げるものをつくってしまう事の気持ち悪さということをなんだか皮膚感覚で感じてしまって、これは止めなければならないと思った。」と。会場、うむと頷く方々が数多くいらっしゃった。

  前半はCOP10から今朝もどってきたばかりの自然保護協会の横山さんからの報告。
「いでは」から宿坊「宮田坊」に移って精進料理を囲んで情報交換。つるさんからも表だけではない運動の裏面のこともいろいろと伺い実にいい示唆をいただいた。

このところご無沙汰しており、以前近藤等則氏のライブの際などに大変お世話になった宮田さんの訃報をはじめて伺う。羽黒の議員としてもご活躍なさっていた。宮田さん 改めてご冥福をお祈り申し上げます。

僕はその後深夜バスで東京へ。

姫野さんと住民投票運動


姫野さんのブログに住民投票運動の本質が描かれていた。ここに記す。

ふるさとの将来に対する住民の直接の意思表示は根元的でおもいものだ。理屈抜きに誰からも一目おかれる。それ は相手が国であろうが変わりはない。ふるさとには千年二千年のひとと自然の営みが、愛憎の記憶とともに詰まっているので,国とはいえ無視することはできな いのだ。かといって下手にさわれば祟られる。中央集権思考にとってはまことに始末が悪いのである。
 「住民」という存在の重さと強さはこの一点に あるといってよく,住民投票の本質もまたここに凝縮されている。それはテーマに賛成か反対かという枠組みとは違う新たな枠組み,住民自身で町の将来を考え るべきか否かという新たな枠組みが生まれる,ということである。それは強い共感を呼ぶ。住民たちがふるさとの未来を真剣に考えて一票を投ずるのをみて,だ れが軽々しく批判できるだろうか。
 ボイコット運動はそれを否定しようという運動である。やるならやってもらえばいい。徳島がそうだったように, 住民投票運動が純粋でありさえすれば,ボイコット運動はやればやるほどその卑劣さが市民に伝わっていくものである。卑劣であればあるほど市民のプライドは 目覚める。目先でなく将来を考える。住民は学習し民度は確実に一段上がる。それは必ず投票率に跳ね返ってくるものだ。

住民投票運動の恩師 姫野さんへ。


川仲間のみんなが今週日曜日の行方不明の翌日からずっと捜索を続けていた姫野雅義さんが昨日遺体で発見された。

以下、毎日新聞より
動堰反対リーダー死亡:「大黒柱が…」「信念継ぐ」 仲間ら、悲報に衝撃 /徳島
 ◇懸命の捜索実らず

 吉野川・第十堰(ぜき)の可動堰化計画を巡る市民運動で長年、リーダー格として活動し、3日に釣りに行ったまま行方不明となっていた姫野雅義さん(63)=石井町藍畑=が7日、海陽町の海部川で遺体で発見され、関係者に大きな衝撃が走った。住民運動の仲間や親交のあった人たちからは、運動をリードした人柄の良さをしのんだり、早過ぎる死を惜しむ声が相次いだ。【深尾昭寛、井上卓也、山本健太】

 捜索は4日以降、警察や消防のほか、姫野さんが設立にかかわった「川の学校」のメンバーらも加わって続けられ、7日も早朝から開始されていた。

 釣りが趣味だった姫野さんは、運動にかかわったこの20年弱、釣りをしておらず、最近になって再開したばかり。不明になる前日の2日夜も、仲間に「昨日はアユ釣りに」と笑顔で話したという。

 今年5月に解散したNPO「吉野川みんなの会」の代表理事で、同町での捜索活動に加わった豊岡和美さん(48)は「再開した矢先にこんなことになるなんて……」と肩を落とした。同じく捜索に加わった徳島市北田宮2、会社員、石川富代さん(63)は悲しみの一方、「海まで行っているかもしれないと話していたので、ほっとした」とも話した。

 悲報は、各方面に衝撃を与えた。木頭村(現那賀町)で同じように国のダム建設の計画に反対した元村長の藤田恵さん(71)は「全国の住民運動の大黒柱が倒れた気がする。まれな人をなくした」と悔しがった。

 長く行動を共にし、活動をきっかけに99年に徳島市議になった村上稔さん(44)は「すべてがまだ信じられない。姫野さんの信念だった川に住民の声を反映させるという思いを引き継ぎたい」。住民投票条例の直接請求で姫野さんと一緒に請求代表者を務めたプランナーの住友達也さん(53)は「意志の強い人だった。やめようとか違う方向を考えようとした時も、引っ張ってくれた」と惜しんだ。

 姫野さんは9、10両日に滋賀県栗東市などで開催される「水郷水都全国会議」の大会にも参加予定だった。大会の実行委員の小坂育子さん(62)=大津市=は「青天のへきれき。川の神さまが連れて行ったのでしょうか……」と悲しんだ。
 ◇吉野川愛し、運動の先頭に 住民投票実現に尽力

 亡くなった姫野さんは石井町出身。約260年前に吉野川に造られた人工の堰・第十堰の近くで育った。90年代初め、可動堰が造られる計画を知り、「これ以上、川をいじられるのは耐えられない」と、仲間と計画を疑問視する勉強会を始めた。穏やかな人柄ながら、川に対する人一倍強い思い入れで、当時、計画に関する情報公開をしぶった旧建設省の追及の先頭に立った。

 98年6月に同省の審議委員会(第三者委)が第十堰の可動堰化にゴーサインを出すと、反発する市民らとともに「川をどうするかは川にかかわる住民が決めるべきだ」と計画の賛否を徳島市民に問う住民投票の実現を模索。同年9月に発足した「第十堰住民投票の会」の代表世話人に就き、投票条例を直接請求するのに必要な10万人分の署名を集めた。

 国の公共事業の是非を問う全国初の住民投票は00年1月23日に実施され、計画反対票が9割超を占めた投票結果は、その後の計画白紙化に大きく影響。運動の中心人物としてメディアに取り上げられることも多かった。

 住民投票後も、可動堰によらない第十堰保存を目指すNPO「吉野川みんなの会」の代表理事などとして活動。04年4月の徳島市長選に立候補した(結果は落選)。今年3月に、前原誠司国交相(当時)が可動堰の中止を明言して以後、川の環境や文化の保護などを支援するための活動に軸足を移そうとしていた。【井上直樹】

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姫野さんは、吉野川の可動堰を住民投票運動でストップさせた方だ。2000年1月23日におこなわれた吉野川の住民投票の際 には数日だったが、僕自身、現場にはいり、「投票に行こう 」ボードをもってつじ立ちをしたり、一軒一軒住民をまわり、投票行動を促したりなど、微力ながら参画させていただいた。姫野さんは連日街宣カーで演説をしながら、毎日事務所にファックスを送り、みんなを励ましていた。多くの人が姫野さんを慕って事務所に集まり、フルコミットメントしていた。まさにその運動は、可動堰に住民が投票でNOをつきつけることとなり、この国を政治の根本を揺り動かした。
  姫野さんに初めてお会いしたのは長良川河口堰での集会だっただろうか。吉野川の運動は、情報の徹底的な公開と住民投票が特徴だった。まずは住民の多くに考えてもらうこと、そして「大事な事はみんなで決める」 ということを実践すること。そうすることで、官僚の手から市民の手に川をとりもどす。そうした信念が貫かれていた。「川の問題は、まず、情報が不透明でまず住民に本当の事が知らされていないこと。それが一番の問題だ。まずは徹底的に情報を開示させて、みんなでそれを考えるしくみをつくること。役所まかせでなく、住民投票で自分が判断しなければならないと感じてはじめて住民が当事者意識をもって物事をきちんと考え始める。署名ではなく住民投票によってはじめて流域住民の意思が確認できる。「大事なことはみんなで決めよう」という運動が、結果的に川を救う事になる」と姫野さんは力説されていた。

 僕はこの吉野川の住民投票の活動に参加をし、鶴岡の水の問題こそ、この吉野川の問題同様、市民がその実際をよく知り、今後の行方をみんなで判断することがまさに必要だと考え、まさに、この吉野川の住民投票運動の詳細を大いに参考にして、鶴岡の広域水道の受水の是非を問う住民投票運動の骨格を組み立てていった。だから姫野さんは、鶴岡の住民投票運動の恩師といっていい。全国集会などでお会いする度にいろんな事を教えて頂いた。
  とにかく情報を開き、住民が参加できる仕組みをつくることの重要性を説いていた。そしてそれを河川行政にもとめるのと同様、運動自体も信念を貫きつつもみんなの多様なアイデアを大事にしながら、進められていた。あるとき訪れた際には、新しい集いの場ができ、そこで鰹のたたきを囲んでわいわいやりながら、川の事を話していたが、 どんどん新しい仲間達が増え、常に進化し広がりをみせていく活動に、いつも「凄いなー」と思ったものだ。
   住民投票運動により吉野川可動堰建設計画は白紙となり今年にはいって前原大臣の下で中止が決定してまもなく、こんな訃報を聞くことになるとは。まだまだ姫野さんには教えて頂きたいことがたくさんあったのに、非常に残念だ。
  親友の村上市議とともに、姫野さんの遺志を引きつぎ、日本の河に本当に住民の声を反映させ、これ以上の川の破壊を止める。一握りの人たちのためにしかならなかった公共事業を、本当に住民の為の持続可能な社会をつくるための事業に転換する。それを貫いていきたいと思う。
  
   姫野さんは、吉野川の住民投票運動を通じ、結果、吉野川を河口堰(ダム)から守り、日本の川の民主主義を、いや、日本の民主主義を大きく進化させた市民活動家。その偉業とこれまでのご指導に深く感謝するとともに、心からご冥福をお祈り申し上げます。
   姫野さん、天国から僕らのこれからの運動を見守っていて下さい。