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月別ア―カイブ: 12月 2015

第7回地域共生ホーム全国セミナー 2015に参加して


 

去る11月28日29日、富山県富山市でおこなわれた地域共生ホーム全国セミナーに参加してきました。

2年ぶりの富山。前回は山形県議会議員 として、そして今般は介護職(といっても全くのビギナーですが)の当事者として、更に深く現場を共有し合い、また多くを学ぶことができたように思えます。以下レポートを書いてみました。とりいそぎ、どんなフォーラムだったか概要を記録してみたものであり、それぞれのテーマは深く、突っ込んでの考察は次回以降にまわします。全編を通じて、現場と行政施策・制度づくりのホンネがフランクに語られていて、前回同様実に心動かされる内容でした。どうぞご覧下さい。

「地域共生ホーム全国セミナー2015」に参加して ←PDFバージョン

 

「地域共生ホーム全国セミナー2015」に参加して


デイサービス ハビビ伊勢原 草島進一

 

11月28日29日、富山市国際会議場で開催された地域共生ホーム全国セミナーに参加した。

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会場は富山市国際会議場。12時半の開会の際には、800人定員の会場がほぼ満席で埋まっていた。聞けば長崎県を除く46都道府県から来られていた。2年前の前回は「このゆびとーまれ」が開所して20年記念で、富山型デイの20年を振り返り今後を展望するといった内容。今回は、このフォーラムの実行委員長であり、このゆびとーまれの代表である惣万佳世子さんが、国際的な賞である第45回フローレンスナイチンゲール記章を受与された事を記念するフォーラムだった。

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お年寄りも、障がいのある人も、子どもも、みんな一緒。1993年に富山県富山市で、富山赤十字病院で働く3人の看護師が病院を退職して開設したのが民間デイケアハウス「このゆびとーまれ」だ。「いつでも、だれも受け入れ可能。家族のように過ごせる第二の我が家。近所に遊びに行く感覚で、小規模、多機能、地域密着 にこだわったデイサービス。この動きは今や富山県を超えて全国に広がっている。その現場の実態と課題を、当事者、国、県、市の行政、障害、高齢者支援、更には生活困窮、薬物依存、学習障害までの垣根を超えて、語り合い、次の展望を導きだすといった内容だった。

 

フォーラムは冒頭、実行委員長惣万さんのあいさつにはじまり、富山県の石井隆一知事(3期目)があいさつとして登壇。その後、知事が再度登壇して20分、富山県の富山型共生デイと県の支援内容、現状の課題、これからの展望についてのプレゼンテーションをおこなった。富山県はこの民間デイサービスを共生型福祉のモデルととらえ、県内に200カ所の普及をめざし支援している。

注目したのは、後半、現状の富山型デイサービスの報酬の低さについて「障害支援区分に関わらず基本報酬は一定」「障害福祉サービスの各種加算が算定できない」と理由を現場から受け止め、塩崎厚生労働大臣に要望した(H27.10.15)事が発表された事。現場の声を受け止めて富山県から制度を改善する進化が知事のプレゼンから現れていて、富山県の本気度を知ることができた。DSC_4250

 

基調講演は、NPO抱僕 理事長 生活困窮者自立支援全国ネットワーク共同代表の奥田知志さん。北九州でホームレス支援を1988年から27年にわたり命がけでおこなってきた方である。聞き覚えのある名前だなと思ったら、戦争法案運動で頑張っているSEALsの奥田愛基さんのお父さんだった。DSC00885

 プレゼンで語られたホームレス支援の話で興味深かったのは、ホームレス問題の現状、今の生活困窮者が抱える困窮には二つの困窮があり、経済的困窮(ハウスレス)と社会的孤立(ホームレス)。特に昨今は社会的な孤立が問題であるということ。人との出会いが物語を生む伴走型支援が実に大切であるということ。地域拠点施設のもう一つの役割としての生活困窮者支援が提起されていた。

 

1日目の午後は、富山型デイサービスの22年 「フローレンスナイチンゲール記章」を受賞して」惣万さんと内閣官房まちひとしごと創生本部 地方創生総括官 山崎史郎さんの対談。

DSC00890 この中で山崎さんは現場と制度の8の字の関係というプレゼンをされ、又、水平と垂直の関係として外山義さんの著書「自宅でない在宅」の一節が紹介された。「職員と高齢者の関係を見ればわかる。高齢者が一方的にケアを受けるような「垂直の関係」か、ひとりの市民として住んでいる「水平の関係」か、である。」というくだりである。これは最近注目されている「介護民俗学」にも通じる事だなと感じつつ聞き入った。

 

●「進化する富山型デイサービスの本音を語る 当事者が語る」にぎやかの 阪井由佳子さんがコーディネーターとして、富山型デイサービスを利用している高齢者、障がい者、精神障がいの方々、また看取りまで富山型を利用した利用者のご家族、そしてゆびとーまれや他施設で「はたらくわ」としてA型、B型就労をしているスタッフなど、総勢14名がステージに登壇して、阪井さんに導かれながら、一人一人、利用しはじめたきっかけ、利用の実態、これからの展望など一人一人、本音で語り、会場に笑いと感動が広がった。DSC00892 DSC0089450年間精神病院に入院していた方をひきとって在宅介護してい92歳、84歳、3人で暮らし、デイサービスに通っているご家族。精神障がいで12年デイサービスを利用し現在A型就労し、結婚が夢と語るスタッフ、そして 最後に、障がいをもちながら21年間「このゆびとーまれ」で働いているスタッフの誕生日のお祝いを会場全員でおこなった。利用者もスタッフもドラマに富んだ富山型デイサービスの実態がステージの上で本音で披露された。利用者さんあっての施設。人からはじまる福祉を実践してください。と阪井さんがまとめておられた。

 

●  日本ダルク 代表 近藤恒夫さんの講演では薬物依存症の実際について、経験談も含めて27年間受けた伴奏型支援の話、ダルクの活動の実際について語られた。「依存症の人たちは地域社会の中にいるから再生できる。刑務所にいれるから依存症は再発する。」「社会の中でやれることは社会で。刑務所にいって孤立化したら再生はできない」という話はとても印象的だった。

 

●   富山ダルクの和太鼓演奏で一日目が終了。

 

●懇親会は北海道から沖縄まで、全国で富山型デイに取り組む参加者が近況報告し、仮装した富山型デイネットワークの皆さんとともに惣万さんのフローレンスナイチンゲール記章授与を全国からの参加者がお祝いする祝賀会となり、惣万さん自らが歌う歌とともに大変盛り上がった。私自身、山形県から唯一の懇親会参加者として近況報告を行い、惣万さん、山崎史郎さん、大熊由紀子さんらと2年ぶりに再会し交友を深めることができた。

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2日目 は9時半からはじまり
●富山型デイの井戸端会議「私たちもんもんとしています」

として富山県内の他、福井、山梨の富山型デイを経営する代表者7名が登壇して現状の課題を語りあった。報酬の課題。制度の課題など本音がどんどんでてくるまさに井戸端会議で、共感する場面では会場から拍手が湧いていた。

共生ホームPHOTO

●「あなたの周りにちょっと変わった人いませんか 発達障害をうまくいかす」では新潟県の高等学校で共育コーディネーターをされている南雲明彦さん、 富山県ひきこもり地域支援センター 支援相談員 森田頼子さん、

ふらっと代表 宮袋さん

共生型デイ2日目

 

発達障害の当事者である南雲さんに自らの体験を語っていただきながら、県のひきこもり相談窓口の担当者とともに、共生型デイでのひきこもり、発達障がいの取り組みを浮き彫りにするものだった。うつ病やひきこもり、発達障害について、ひきこもり支援の森田さんが富山型のミーティングで飛び込みで参加されたりしたところから交流が生まれ、現在富山型と引きこもり相談窓口との共同の取り組みが始まっている事が紹介された。発達障がいを抱え、ひきこもり状態になっていた若者が、富山型でボランティアをしたり就労しているケースも生まれている。なぜそうなのかといえば、「富山型デイは気持ちが安全安心な場だからではないか」また「うそをつかない」のがいいのではないか。など言葉が続いていた。

 

その後、ランチョンセミナーとして富山型デイを紹介するビデオを見つつ昼食。

 

●  まとめセッション 
「誰もが安心して暮らせるまちづくりを」日本福祉大学 副学長 平野隆之氏、 宅老所・グループホーム全国ネットワーク代表世話人 惣万佳代子氏 富山市市長 森 雅志氏 厚生労働省 年金局 局長 鈴木俊彦氏 コーディネーターとして大熊ゆき子氏が登壇してまとめのセッション。

 

 冒頭、惣万さんが2日間の講演内容になぜ、生活困窮者、ダルクの動き、発達障害の動きをいれたのか。ということについて、これまでは、一つ屋根の下で赤ちゃんからお年寄りまで障がい者、障がい児もいれて過ごす事が富山型の動きだったけれど、地域にはいろんな生きづらい方がいる。そうした動きに対して富山型が如何に取り組むかを提起したかった。と発言された。平野 mori okuma

 共生社会とは、「赤ちゃんからお年よりまで、障害があっても、誰も排除せず、ひとりひとりが輝き、安心して暮らせる社会」「みんなが一つ屋根の下で過ごすことは、私は日本の文化である」と考えている。そして、今般のフローレンスナイチンゲール記章受賞について、「世界が共生デイサービスを認めたということだと思っている」と発言し会場から拍手が湧いた
 その後、現状の富山型デイの課題として、●基準該当の報酬が指定の報酬の7割程度であるということや、送迎加算がつかない事を指摘。又、自治体の基準該当の捉え方に差があり、なかなか認められない実例が紹介された(佐賀県、大阪府など)そうした中、「山形県鶴岡市 では高次脳機能障害で3年間自費利用していた24歳の方が鶴岡市にはたらきかけて3ヶ月で基準該当が認められた。頑張れば3ヶ月で基準該当がとれる。これはとてもいい実例です」と私達の事例が紹介された。IMG_5445IMG_5441

 

大変光栄なことである。又、障がい者の支援実態について、障害者支援法から介護保険に切り替わると年間8万円もの負担増になることについてもテーマになり介護保険や予算見通しの今後などについて議論が続いた。

 さらに惣万さんは、「一億総活躍社会」の中で「介護施設50万人分増床する」としながら、「1介護職員の確保の具体策が出されていない 2、職員の賃金の対策が出されていない」ことを問題提起した。

 そして今後の日本丸はどう向かうべきかとして、惣万さんは、「1.ハード(箱物)からハート(心)へ。2.人づくり、人員確保に力をいれる、3.国家戦略として「共生デイサービス」を進める。1万人に対し1カ所。町の拠点とする。4.全国の県や市町村に共生型の窓口を設置し、担当課を明示する 5.共生型デイサービスの単独の介護報酬をつくる。としてa.基準該当の報酬のアップ b.送迎等の加算をつける C.基準該当の定義の検討 柔軟に取りくみやすくする が提起され、それを受けて国の今後のプランなどが提示された。

 そして結びに「風穴を開けていく」ことが生涯をかけてする私の仕事」と惣万さんが締めくくった。

 

 こうした惣万さんのプレゼンを中心として、平野先生からは、基準該当などの制度の解説や、第二ステージにはいった富山型デイの課題や期待が大いに語られた。
 また、厚生労働省年金局長(元社会援護局) 鈴木氏からは、こうし富山型について「これからの福祉の動きを先取りした先進的な取り組み。」「困ったことがあって制度があるという本来の流れを汲む貴重な動き」と評価しつつ、今後の厚労省の政策を発表された。その内容は以下のものである。地域において、誰もが支え合う共生型社会を実現し、人口減少下における効率的で柔軟な事業運営を確保するため、 まちづくりの一つのかたちとして、高齢、障害、児童等の福祉サービスを総合的に提供できる仕組みを推進する。
○ このため、モデル的な事業を実施する中で、そのような手法によるサービス提供のあり方やこれを阻害する規制の 緩和等を検討するとともに、ノウハウの情報提供を行う。と提起されていた。

 森富山市長は県議時代に富山デイへの支援を県にはたらきかけていた方であり、「制度はどうであれ、感動する仕事をせい」と新人職員に語りかけていたと惣万さんが賞賛し、「制度を超えたところにある正義の実現が大事なんだ。」と語っていた。又、富山市独自に、生活保護世帯の子供や児童養護施設に入所している中学生たちの支援をおこない、今年大学生や専門学校生になった事を紹介し、満場の拍手が起きた。この制度については以下(市長のエッセイより)

*「富山市学習支援事業」生活保護世帯の子供や児童養護施設に入所している中学生などを支援するため、家庭相談員が家庭などを訪問し相談・アドバイスをするとともに、学習支援員(教員OB、大学生)が学力や実態に応じた個別指導を継続的に行っているのだ。(なお、全国的に、生活困窮者自立支援法により平成27年4月から同様の事業が展開されることとなった)そしてもう一つが、「富山市福祉奨学資金給付事業」というものである。これは、先に述べたような環境にある子供たちが高校卒業後に介護・福祉・医療などを志して資格取得のための学校に進もうとする際に、入学準備奨学資金として30万円以内を、学費奨学資金として年間50万円以内を、生活奨学資金として月額4万円以内をそれぞれ支給するという内容である。進学する学校は県内の大学・短大・専門学校としており、保育士・看護師・准看護師・社会福祉士・介護福祉士・理学療法士・作業療法士などの資格を取得後に県内の福祉事業所で働く意思のある者を対象としている。学費などは市から学校に直接支給し、生活費は本人に支給する仕組みとなっている。なお、この奨学金は将来の返済を不要としている。また保証人も求めないこととした。財源はこの事業に賛同いただいた方からの寄附金を充てることとしている。

 

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●プログラムの最後には壇上に共生デイ実行委員が壇上にあがり、富山県民歌を合唱。惣万さんの「いい介護をしよう。いい仲間をつくろう。みなさんも仲間になってください」の一言、満場の拍手で終了となった。

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(考察・感想)フローレンスナイチンゲール受賞も契機として共生型デイサービスは国際的にも認められ、富山県はこの民間モデルを積極的に支援し続け、制度を次々と進化させている。共生型の地域づくりは国も掲げ、それを目指す上での富山県をモデルとして国の制度に取り入れ、されに今後の人口減少、超高齢化社会の福祉拠点施設として支援内容が検討されはじめている。それを実感したフォーラムだった。共生型デイをなんとか自分の地域で実現させようとしている全国から800名集まった方々と問題を共有でき、交流でき、大変多くを学ばせていただいたと思う。

「制度はどうであれ、感動する仕事をせい」と新人職員に語りかけ、「制度を超えたところにある正義の実現が大事なんだ。」と語る富山市長。又、「風穴を開けていく」ことが生涯をかけてする私の仕事という惣万さんの姿勢に感銘を受けたし日常の現場をもちつつ制度を変えていく事の重要性を改めて感じさせられた。富山に限らず心ある行政マン、また全国の心ある事業者と更に交流を深め、自らの現場を進化させ、共生型デイや地域の福祉拠点として充実できたらいいのではないかと考えている。

今般改めて研修派遣頂いた事に感謝申し上げます。ありがとうございました。

実行委員長 惣万佳代子さんと

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ホームレス支援 抱僕 奥田知志さん 山崎史郎 まち 人 しごと 創世本部 総括官 山崎史郎さんと。

 

富山県の担当木下さんIMG_5428 DSC_4349鶴岡で以前講演いただいた阪井さん 

富山の皆さん、ありがとうございました。今後ともどうぞよろしく。